くんちも新時代へ

 小さい頃から「かっこいい」と思っていたが、あんなすごいこと、自分にできるわけはないと分かっていた。勇壮で凜(りん)とした長崎くんちの演(だ)し物の根曳(ねびき)衆たちは、誰がやってもさまになるわけではない▲そもそも踊町の人しか出演できないのが、昔は“常識”だったろう。380余年の歴史のある長崎くんちが今年も幕を開けた。力強く、美しく、それぞれの演し物に歴史が詰まっていて、毎年のことながら見とれている▲思えば、踊町の人しか演し物を担えないという“厳格さ”もくんちの高貴なイメージとどこか結び付く感じがあった。その踊町も近年は苦慮していると、きのうの紙面にある▲高齢化や人口流出の波が踊町にも押し寄せている。かねていわれてきたが、町内だけでは人手が足りないらしい▲今年の踊町の一つで、龍踊(じゃおどり)を披露する籠町は「龍衆」を今回初めて公募した。ほかの踊町でも、町外からの人は町内の行事にも参加したりと、溶け込む努力や工夫がさまざまなされているという▲昨年までの3年間、土日や祝日と重なったくんちだが、今年は3日間とも平日に当たる。捉えようによっては、見て楽しむだけでなく、出演する側も「市民一体」となりつつある今のくんちは「令和初」というだけでなく、新時代を迎えているのかもしれない。(徹)

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