シトロエン C3エアクロスSUV & C5エアクロスSUV 試乗レポート|シトロエンらしさがたっぷり詰まった新感覚SUV

シトロエン C3エアクロスSUV

シトロエン初のSUVが2車種日本上陸

フランス車の中でも、シトロエンは個人的に好きなブランドだ。おしゃれで愛らしいデザインと滑らかな乗り心地。一度触れたら好きになる人は多いと思うのだが、輸入車の中ではまだまだ知名度が高くないためか、シトロエンを知らない人も多いのは残念なところだ。

私は普段2人乗りのスポーツカーに乗っているので、たまに実用的なクルマも欲しくなる。もしお金と場所があって、2台目が買えるとするなら、セカンドカーの第一候補として考えているのはシトロエンC3だ。今回はそのC3がひとまわりサイズアップして力強いSUVルックになったC3エアクロスと、さらにボディサイズが大きく室内に余裕のあるC5エアクロスが登場したということで、喜び勇んで試乗会に参加してきた。

シトロエン C3エアクロスSUV

サイズの拡大でよくなったC3エアクロスSUV

C3エアクロスSUVは、C3をベースとしながら、全長+165mm、全高+135mm、ホイールベース+70mmと、それぞれサイズを拡大して室内空間はより広くなっている。

シトロエンといえば、サスペンションをたっぷりストロークさせて滑らかに走る印象があると思うが、ノーマルのC3は段差などでポンポン跳ねるようなところがあり、乗り心地は少々硬めだった。

ところが、今回C3エアクロスSUVは、ホイールベースが伸びたおかげもあるのか、少し余裕のあるゆったりした乗り心地に改善されているように感じた。それでいて、軽いフットワークとサクサクと小気味いいハンドリングはそのまま。サイズアップした分、たくさん荷物を詰めたり、後席の人もゆったり座れるから、C3よりもさらにどこまでも出かけて行きたくなるような雰囲気がある。

シトロエン C3エアクロスSUV
シトロエン C3エアクロスSUV
シトロエン C3エアクロスSUV

C3エアクロスSUVには、ルーフレールやアンダーガードも付いていて、エクステリアはたくましい印象になっている。それでいて、シックなボディカラーにオレンジのアクセントカラーが選べるなど、単にSUVルックが強くなっただけではなく、おしゃれな遊び心がきちんと残っているのが嬉しい。ひとつだけ個人的に残念だったのは、C3ボディサイドにあった板チョコのような『エアバンプ』がなくなっていたこと。今となってはシトロエンの新しいチャームポイントだと思うので、C3エアクロスSUVにも是非欲しかったところだ。

シトロエン C5エアクロスSUV

まるで魔法のじゅうたんのようなC5エアクロスSUV

シトロエン C5エアクロスSUV

そして、驚いたのは今回初めて乗ったC5エアクロスSUV。C3兄弟の流れがあるので、C5エアクロスSUVもすこしコシのある乗り心地なのかなと思っていた。試乗車のC5エアクロスは舗装されていない砂利の道に置かれていたのだが、そこから走り出してみると、足元にたくさんあるはずの小石が、まるでつるつるに磨かれて角が取れたような感触がする。

ふわりふわりと、それでいてタイヤはしっかり地面を捕らえている感覚。シトロエンは昔から“マジックカーペットライド”と言われる乗り心地が特徴だが、まさにC5エアクロスSUVは魔法のじゅうたんのように夢のような乗り心地だ。ダンパーの中に、もうひとつのダンパーを組み込んでいるセカンダリーダンパーを採用していて、より路面からの入力を吸収できることが大きいのだろう。個人的にはもっちりと弾力のあるシートも好印象で、「家のソファにしたい……」と思ってしまうほど。

シトロエン C5エアクロスSUV
シトロエン C5エアクロスSUV

この大きいボディにはやはり低速からトルクの大きいディーゼルエンジンがぴったりだった。搭載されていたのは2リッター直4ディーゼルターボエンジン(177ps/400Nm)で、以前からプジョー・シトロエングループのディーゼルエンジンは滑らかに力強く回るところが良いなと感じていたが、このエンジンもクルマ全体の心地よさに一役買っているように思えた。

シトロエン C5エアクロスSUV
シトロエン C5エアクロスSUV

個人的に感じるシトロエンの良さは、そのクルマの中にひとつの世界観ができあがっているところだ。乗り込む前からクルマを運転している間も、ひとつひとつがつながっていてシトロエンというクルマの空間に浸ることができる。キュートでポップでセンスの良いデザイン、ペダルの踏み応えやステアリングを切る感触、そして魔法のような乗り心地。そのクルマに包まれているだけで心地よく、どこまでも走って行きたくなる。その世界観が、C3エアクロスSUV、特にC5エアクロスSUVではさらに一段上のステージに上がったような気がした。

[筆者:伊藤 梓/撮影:佐藤 正巳]

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