全長5.3mのミニバン「グランエース」2019年中の国内導入決定|併せて室内コンセプトモデルも出展【東京モーターショー2019】

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

噂の“新ハイエース”、「上質かつ快適な移動空間を提供するフルサイズワゴン」として日本に導入決定

いよいよ10月24日(木)から有明・青海地区で開催される「東京モーターショー2019」。モーターショーといえば、どんなクルマが展示されて、どんなクルマがデビューするのか興味が尽きない。そんな中、トヨタから展示車に関するビッグニュースが飛び込んできた。新型車『グランエース』の登場である。

グランエースは、「上質かつ快適な移動空間を提供する新たなフルサイズワゴン」として、全国のトヨタ車両販売店を通じて、2019年内に発売される。それに先立ち、東京モーターショー2019での初披露が決定した。

海外では「ハイエース」「マジェスティ」などの名前で販売

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

グランエース? とは聞き慣れない車名だが、写真を見れば「わあ! あのクルマ、日本に来るのか!」と驚いた人も多いはず。そう、2019年2月18日にフィリピンで世界初公開となった「海外向け新シリーズのハイエース」(以下:新シリーズのハイエース)が、グランエースとして日本に導入されるからなのだ。

新シリーズのハイエースでは、現行の1BOX型ハイエースと異なり、フロントにノーズがついたセミボンネット型とされ、2m近いワイドボディに2種類のホイールベース、多人数乗りのコミューターと商用バンモデルをラインナップ。「日本にやってくるの? その場合はどんなイメージで?」など、商用車ファンやハイエースユーザーの間で大きな話題となったのは記憶に新しい。

グランエースのテーマは「上質かつ快適な移動空間」

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

グランエースには豊かな装備と上質な室内を持ち、乗員が快適に移動できることを主眼に置いた、フルサイズワゴンとしての性格が与えられた。そのため、海外向け新シリーズハイエースと基本的なボディシェルを同一としつつも、前後の意匠を大きく変えて存在感と高級感をアップさせた。

フロントには、金属調加飾の大型ラジエーターグリルと連続するLEDデイタイムランニングランプ、クロム加飾フレームで一括りにしたプロジェクター式2眼LEDヘッドランプを装備。高級車に相応しい先進性を与え、押し出しの強いフロントフェイスを作り出している。

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

室内フロントシートまわりでは、ブラックを基調としたインストルメンタルパネル、空調吹き出し部に金属調加飾、助手席正面には木目調加飾を施し、メーターフードにも表皮巻きとステッチをあしらって華やかさと上質さを演出している。

ビッグボディを生かし3列6人乗りと4列8人乗りを設定!

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]
トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

そしてさらなる注目は、広さを活用した「上質なおもてなし空間の提供」だ。

グランエースには3列6人、4列8人乗りタイプが設定されるが、東京モーターショー2019に展示される3列6人タイプでは、リアの4脚すべてが、ゆったりとくつろぐことが可能な専用の左右独立型本革キャプテンシートを採用。実際に着座してみたところ、座り心地がとてもよく、背もたれ・オットマンなどを電動で調整することで、自分好みの快適なポジションを得ることが可能だった。

フロントシート背面からサイドトリムに向かって木目調加飾が配されるほか、加飾部には優しくLEDサイドカラーイルミネーションが灯り、華やかかつ落ち着きのある上質な車内空間を備えている。

全長5.3メートル! 巨大ボディを動かすのは2.8リッターディーゼルとFRの組み合わせ

アルファード/ヴェルファイアとの違いは「ボディサイズ」

ここまで読んで、「同じトヨタのアルファード/ヴェルファイアとはどう違うの?」と思った人がいるかもしれない。

グランエースのボディサイズは全長5,300×全幅1,970×全高1,990mmもあり、アルファード/ヴェルファイアの全長4,935×全幅1,850×全高1,935~1,950mmよりもさらに大きい。グランエースでは、この豊かなボディサイズを活かして、後席の4席すべてが同寸のキャプテンシートになっている。ファミリーカーの延長線上にある高級ミニバンのアルファード/ヴェルファイアに対し、グランエースは「上質な室内で快適な移動が可能な高級ピープルムーバー」という性格を持っているのである。

なお、新シリーズハイエースでいうところの「ショート・標準ルーフ」ボディというサイズにあたる。

環状骨格ボディとタフな足回りが快適な移動を支える

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

高級ピープルムーバーとして、新型グランエースでは、後席に座る乗員の快適移動に特に留意した設計が行われている。

ハイエースで熟成された後輪駆動(FR)レイアウト、新開発のトレーリング車軸式リアサスペンション、環状骨格構造の採用による高い剛性を持つボディなどで上質な乗り心地と優れた操縦安定性を実現することによって、乗員への「揺れ」を抑えている。さらに過酷な環境で使用される商用車がベースという「強さ」が、多人数乗車時に特に大いに発揮される。振動・遮音対策も徹底されており、高級ワゴンにふさわしい心地よい静粛性も追求している。

磨き抜かれたエンジン性能、先進安全機能も充実

エンジンは1GD型クリーンディーゼル、トランスミッションは6速オートマチックで、滑らかさとトルクフルな走行を可能とした。

もちろん安全装備も充実しており、プリクラッシュセーフティ採用の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」、低速走行時の衝突緩和・被害軽減に与するインテリジェントクリアランスソナー「パーキングサポートブレーキ(静止物)」などを備えている。

高級ホテル・旅館、空港アクセス、企業送迎などの潜在ニーズに期待大

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

セミボンネット型のバンモデルは、海外メーカーではメルセデス・ベンツ Vクラス/スプリンター、VW トランスポルターT6/クラフター、ヒュンダイ H1、ルノー トラフィック/マスター、シトロエン ジャンピー/ジャンパー、フィアット デュカト、フォード トランジットなど、すでに多くの種類が発売されており、これらの車種には送迎用のコミューターモデルも存在する。そのため、海外に出向いた際、空港・ホテルなどからの移動で乗ったことがある、という人も多いだろう。日本でもハイエースやライバルの日産 キャラバンがワイド・ロングボディの送迎車を用意しており、またアルファード/ヴェルファイアなどのミニバンも、送迎用に使用されることが多くなってきた。

しかし国産メーカー発の大型セミボンネットバン、しかも高級な室内を持つピープルムーバーという存在はかつてあまり例がないことから、高級ホテルや旅館の送迎、法人・企業の送迎など、快適な移動が特に求められる用途に活用されることが期待される。その際には、強い押し出しを持ちつつも、品のある全体的なデザインと雰囲気も大きなポイントになるだろう。

グランエースに向けた2種類のインテリア提案モデルにも注目

トヨタ 新型 グランエース「Resort Tourer Concept」[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース コンセプトモデル]

新型グランエースの製造はトヨタ車体が行う。同社は、主にミニバン・SUV・商用車を製造する、トヨタグループの中核企業だ。歴史は古く、1945 年にトヨタ・刈谷工場が独立してトラックボデー専門メーカーとして発足したことに端を発する。2018年11月からは、従来トヨタからトヨタ車体へ委託していたバン事業(バン、ミニバン、小型バス)をトヨタ車体に移管。それにより、バン事業での企画・開発・生産業務はトヨタ車体が進めているため、グランエースは、バン事業移管後初の記念すべきモデルでもあるのだ。

トヨタ 新型 グランエース「Business Liner Concept」[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース コンセプトモデル]

前述のように、注目の新型車グランエースは、東京モーターショー2019ではトヨタ車体ブースで展示が行われる。その際、室内モックで2つのインテリアコンセプト「Resort Tourer Concept」「Business Liner Concept」も展示する予定だ。

トヨタ 新型グランエースの広さを用いて、今後も様々な提案や新しいコンセプトのクルマが登場することが予感される。

[筆者:遠藤 イヅル/撮影:茂呂 幸正・トヨタ自動車・トヨタ車体]

© 株式会社MOTA