【台風15号】「2方向から異常な波護岸襲う」国交省報告

台風15号による高波で東京湾に面した横浜市金沢区の護岸が崩れ、隣接する工業団地に海水が流れ込んだ

 台風15号が9月9日未明に東京湾を通過する際、横浜市金沢区の工業団地で護岸を崩壊させた高波は、異なる2方向から押し寄せた波が沖合で重複したことが原因とみられることが、国土交通省関東地方整備局などの検証結果で分かった。小型で強風域が小さい台風だったため発生した珍しい現象といい、護岸に当たってくだけた波が高さ10メートル程度まで到達したと推定。工業団地は広範囲で甚大な浸水被害に見舞われており、同局などは年内にも高波対策を講じる。

 同局は8日、有識者を交えた「東京湾における高波対策検討委員会」の第1回会合を横浜市内で開き、想定される被災のメカニズムを明らかにした。

 報告によると、台風15号が強い勢力を保ったまま通過した際、風向きが急激に変わったため、同市金沢区の福浦地区の沖合では、東北東と南東の2方向からの波浪が発生。重なったことでエネルギーが大きくなり、工業団地の護岸が10カ所以上で崩壊した。

 委員長の高山知司京都大学名誉教授は「これまで経験したことがない異常な波だった。通常は1方向の波だが、今回は(湾口と湾奥から来襲する)『二山形』という特徴ができ、それだけ波が大きくなったと考えられる」と分析した。

 福浦地区の護岸にぶつかった波が到達した高さは強風の影響もあり、東京湾の平均海面から10メートル程度の高さに達すると推定されることも判明。護岸の築山頂部(高さ10.9メートル)に波の痕跡が確認された同局と市の調査を裏付けた。

 同局の加藤雅啓副局長は「今後は東京湾内で発生しうる最大クラスの高波を想定し、(護岸の必要高を求める)『設計波』の見直しや、高波の波力を考慮した護岸の設計手法をあらためて検討する」としている。横浜市の中野裕也港湾局長は崩壊した福浦地区の護岸について「なるべく早く年内に方向性のめどが付けられるようにし、一日も早い復旧に着手できるよう全力を尽くしたい」と述べた。

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