NICKEY & THE WARRIORS「結成35周年を迎えて到達した、今までとは違う、今だからこそのパンク」

私なりのパンク・ロックを追求したかった

──35周年ですね。びっくりです。

NICKEY:私もそんなに経っちゃってるの? って(笑)。

──実際、活動はずっと続けてましたよね?

NICKEY:休んでた時期もあったんですよ。交通事故に遭ったりもしたし。でも、そうですね、そんなに長くは休んではいないですね。

──作品も何年かごとに、1年ごととかではないけど、コンスタントですよね。

NICKEY:それもでも前々作(『DO I LOVE YOU?』)と前作(『in my Heart』)は凄い空いちゃって。去年出した前作は7年ぶりぐらいだったんですよ。

──あ、そうか。この歳になると、もう7年前でも最近って思っちゃうもんで(笑)。昨日のライブはTHE GODと、その前は宙也さんとデュオ・ユニット、Venus and Zeusとしてのライブだったんですよね。

NICKEY:そうなんです。宙也さんとは一緒に唄って。

──いいですよね、80年代から活動している人たちと今のスタイルで一緒にやれるのって。

NICKEY:ですよね。ライブでも言ったんですけど、私、アレルギー大好きで。初めて聴いたパンクがアレルギーで。

──あ、私も!

NICKEY:あ、そうなんですか! 凄い好きでライブも行っていて。ウォーリアーズに入って対バンに誘ってもらったり、ここ数年活動していく中で、いろんな場面で誘っていただいて。今回も、「一緒にやろうよ。今やったら面白いんじゃない?」って誘っていただいて。宙也さんとは今回初めてデュエットしました。

──今だからこその面白さがあったでしょうね。

NICKEY:たぶんみんな、ある程度の年齢になってるから、やれる時にやらないとっていうのがあるんだと思う(笑)。

──今日、Twitterで「昔見てたバンドを今見たい。進化を見てウォー! ってなりたい」ってツイートを見て。たぶん子育てもひと段落して、もう一度っていう。

NICKEY:うんうん。わかります。そういう方、いますよね。

──そういう人は多いと思うし、そういう人に見てほしいですね。

NICKEY:見てほしいです。

──私、昨日、ライブを拝見して凄く新鮮で。80'sパンクの懐かしさを感じるんだけど、その懐かしさも含めて新鮮で。この歳になって改めて、と言うか初めてパンク・ロックを聴いた時の気分になって。なんて言うか、ラジオから流れてきたパンク・ロックを初めて聴いた10代の頃の感覚になって。そういう感覚になったのが新鮮で。

NICKEY:わー、ありがとうございます。私も昨日のライブ、楽しかったです。

──11月にリリースの新作のミニ・アルバム『ONE FROM THE HEART』もワクワクしたし、凄くポップでキュンとしました。プロデュースはTHE STAR CLUBのHIKAGEさん。どんな流れで?

NICKEY:2月にHIKAGEさんのバースデー・ライブがロフトであって、ウォーリアーズも出て。私が急にHIKAGEさんにプロデュースをお願いしたいって思ったんです。それで打ち上げで、「35周年でCD出すんだけど、プロデューサーお願いできませんか?」って。そしたら「NICKEYに言われたら断れないな」って言ってくれて。すぐOKしてくれた。

──メンバーに相談もなしに?

NICKEY:どうだったかな。たぶんライブ見てパッと思いついて打ち上げでお願いしたんで、相談してないと思う(笑)。もちろん、メンバーも大賛成で。

──じゃ、NICKEYさんの直感で。

NICKEY:バッと閃いちゃった(笑)。でも改めて考えたら、HIKAGEさんはCLUB THE STARにいた頃からお世話になっていて。イベントとか一緒にやらせてもらったり。お兄さん的な感じだったんだけど、そんなに気軽に話したこともなくて。やっぱり大先輩だし、尊敬してるし。で、35周年ということもあったんで原点回帰と言うかね。そういう気持ちがあったのでHIKAGEさんしかいないって。私は王道のパンクと言うよりはポップなものが好きなので。私なりのパンクを追求したかったんです。

HIKAGEのプロデュースによる予想外の化学反応

──そこでHIKAGEさんっていうのも面白いですよね。HIKAGEさんはごっついパンクの人だと思ってました。

NICKEY:そうなんですよ。実は最初は私が追求したいポップなパンクを、HIKAGEさんはどう捉えてくれるんだろう? って気持ちで。それがね、凄い予想外なことが起こって。私たちがワクワクしちゃうぐらいポップになって。

──うんうん。まず1曲目のロックンロール・ナンバー「HUSH! HUSH!」のイントロの声はHIKAGEさんですよね? コーラスも?

NICKEY:そうです。けっこう普通に唄ってくれた。普通にって言うのも失礼かな(笑)。まさか唄ってもらえると思わなかったので。

──なんかHIKAGEさんの中のポップな面を、NICKEYさんたちが引き出したんじゃ?

NICKEY:私からは言えないですよ(笑)。

──あ、「そうです」とは言いづらいですよね(笑)。HIKAGEさんのプロデュースはどんな感じで?

NICKEY:もうね、どんどんアイディアを出してくれて。凄い勉強になった。HIKAGEさんは新しいものをいろいろ聴いていて、取れ入れていて。ヒップホップも聴いてるんですよ。あと「ビリー・アイリッシュは知ってる?」って言ってきたり。私はそのへん疎くて知らなかったんで聴かせてくれて。

──自分のバンドじゃないからこその自由さが、きっとあったんでしょうね。

NICKEY:あ、それはあると思います。女性ボーカルだからやれるってものもあったと思うし。違うことをやれる楽しさを感じていただけたら、私たちも嬉しいですよね。

──実際、新しい試みもかなりあります。

NICKEY:新しいウォーリアーズを聴いてほしいって思いがあるんですよ。過去のウォーリアーズのイメージが強いと思うし。メンバーがいかついとか(笑)。今はメンバーも変わってるし、このメンバーの新作だよっていうのを打ち出したかった。だから原点回帰なんですけど、それはなんて言うのかな、私なりのパンクの原点回帰で。そういうことをHIKAGEさんに言ったら、「うんうん」ってわかってくれて、いろいろアイディアを出してくれたんだと思います。

──新しいウォーリアーズってことですが、曲そのものは以前からポップですよね。

NICKEY:そうですね。昔の曲もポップだと思うし、最近ですが去年出した『in my Heart』もポップで凄く気に入ってる。でも昔のウォーリアーズを好きな人は、今は違うって思ってる人もいるだろうし。私はそこにこだわりたくない。今は今って思ってる。常に新鮮でいたいなって思ってるんで。そこにブレはないと思うし。

──最初のビジュアルがインパクトありましたからね。ごついメンバーを従えた小悪魔と言うか女王様と言うか。

NICKEY:はいはい(笑)。強烈でしたもんね。

──だから久しぶりにライブを見て、NICKEYさんは全然変わってなくて、でも自然体だなって。勝手な想像ですが、昔はイメージに合わせていたと言うか、自らイメージを作っていたと言うか。

NICKEY:ああ、そうかも。

──今もそのイメージがなくなってはいないんだけど、自然に身についてる感じでナチュラルで。ナチュラルに小悪魔で女王様(笑)。

NICKEY:いつからか自然体になれて。凄い楽に表現したり唄ったりできるようになったなって思います。今のほうがライブをやってて楽しい。昔が楽しくなかったわけじゃないんですよ。ただ気負ってた感じがあって。今は、ある程度の緊張感は大切なんですけど、なんかこう、気負った感じはまったくなくて。なんだろうな、バンド全体で楽しめてると言うか。

──歌詞はNICKEYさん?

NICKEY:そうです。

──アルバムのタイトル・チューン「ONE FROM THE HEART」、凄くいい。キュンとした。

NICKEY:あ、やっぱり(笑)。私も凄い好き。

──“寂しがりやの反逆者たち 祈るように唄う ニューローズ”は世代のせいもあるかもしれないけど、もうキュン死(笑)。

NICKEY:いいですよねー(笑)。

──“おまえがここに生まれてきた理由を 風がきっと教えるだろう”もいい!

CROSS:この曲、男言葉なんですよね。以前から、男言葉でNICKEYが唄うってことはあったよね。

NICKEY:そんなに多くはないけどありました。ウォーリアーズはコーラスがメンバーの男声なんですよ。野郎の声の中で私の声で男言葉っていうのも、意外と面白いかなって。

パンク・ロックであえて応援歌をやる試み

──なんか、NICKEYさんの声ってハリがあるけど高音のキーっとした声ではないし、どこか少年のようかも。だから女性の声と男言葉のギャップの面白さもあるかもしれないけど、意外と自然に入ってくる。

NICKEY:ああ、前に、クレヨンしんちゃんの声に似てるって言われてショックだったことがあるんですよ(笑)。

──ハリがあってキュートで、どこかエグイと言うか(笑)。で、「ONE FROM THE HEART」の歌詞はパンク・ロックを好きになった頃を思い出して、懐かしいんだけど新しい気持ちになれるし、救われるような気持ちになる。NICKEYさんはどういう思いでこの歌詞を?

NICKEY:パンクの応援歌的なイメージ。パンク・ロックで応援歌をやりたかったんです。だからもう、クサさがあってもいいなって。

──そういう気持ちで作った曲は、これまでありました?

NICKEY:なかったです。でもいつの頃からか、そういう曲が1曲あってもいいかなとは思っていたんです。この曲の原型は前からあって。それを土台にライブでも何度かやって。

CROSS:NICKEYのソロ・プロジェクト的な軽蔑(keibetsu)ってバンドでやったりね。その時はまだサビがなくて。“ワン・フロム・ザ・ハート!”ってだけ唄ってて。そこをどうにか変えたいってね。

NICKEY:どうにかして完成させたい、パンクの応援歌にしたいってずっと思っててね。今回やっと完成した。大好きな曲になった。ハッキリ言われたわけじゃないんだけど、たぶんHIKAGEさんも凄い気に入ってくれてると思うんですよ。

CROSS:だってね、最初はクラッシュのイントロで始まってピストルズの「God Save the Queen」のギターが出てきてっていうのを作って、「HIKAGEさん、どうですか?」って聞いたら、「そんなの要らない」って。「曲がいいんだからそんなのやったらもったいないだろう」って。

──へー! HIKAGEさん、カッコイイ。

NICKEY:びっくりしちゃって。

CROSS:で、いろいろアイディアを出してくれて。ピストルズがアヴリル・ラヴィーンになった(笑)。ウォーリアーズはコーラスがメンバーの男の声なんですけど、今回、NICKEYのボーカルも重ねたりね。「NICKEYの声が前に出なきゃダメだ」って。

NICKEY:HIKAGEさんのアイディアで、私たち自身が本当に新鮮になれて。本当にHIKAGEさんには感謝。

──やりたいことが具現化されて。

NICKEY:本当にそう。

──応援歌は今だからこそですね。

NICKEY:そうですね。今、唄うことができて良かったです。世代的にも今の時代的にも。あの、私は一つのイメージにとらわれるのが嫌で。フレンチも好きで、軽蔑ってバンドはフレンチ寄りで。ソロでやったりアコースティックでやったり、いろいろやってきて。でもウォーリアーズに関してはパンクをやりたい。今までとは違う、今だからこそのパンク。昔はパンクで応援歌なんて思ってもみなかったけど、今なら私たちらしいパンクでやれるって、自然に思えたんですよね。

──2曲目の「VELVET LIPS」はディスコ風で。

NICKEY:はい。榊原秀樹君が作曲。彼はギターで参加してくれて、曲も2曲書いてくれて。私、ブロンディが好きなんですよ。それで、「あ、ブロンディだ」って思って。たぶん秀樹は私が唄うってことだけで作って、今作のために作ったんじゃないんですよ。でも私はあえてウォーリアーズでやりたいって思った。HIKAGEさんも気に入ってくれたしね。

──応援歌もディスコも、ウォーリアーズのパンクなんだよってことですね。

NICKEY:そうそう。こういうパンクもあるんだよって、若い人たちにも聴いてほしい。

過去は過去、今は今、今が一番大事で最高

──今作、HIKAGEさんの存在が大きかったんですね。

NICKEY:いろんなアイディアを言ってくれるんだけど、こだわりも凄くあって。こだわりはあるけど柔軟なんですよね。だからずっとやってこれたんだな、ずっとパンクスなんだなって思います。昔、THE STAR CLUBのメンバーが若いメンバーに代わった時があって。当時、私は、先生と生徒みたいなのかな? って失礼ながら思って(笑)。HIKAGEさんは先生だったかもしれないけど、同時に新しい刺激や音楽を吸収してきたんじゃないかって。吸収しながら同時に引っ張っていって。柔軟さと強さ、両方を持ってるから40年パンクを続けられるんじゃないかなって。凄いことですよね。

──NICKEYさんもウォーリアーズを引っ張ってきてるじゃないですか。

NICKEY:いやいや、引っ張るとか、そういうタイプじゃないですよ(笑)。

──でも35周年ですよ。凄いですよ。

NICKEY:引っ張ってるつもりはないし、引っ張るより引っ張られるほうがいいんですけど。なんで35年もやってるんだろ(笑)。なんかね、嫌なこともいっぱいあったりしましたけど、でもやっぱり自分がやり続けなきゃって思いはいつもどこかにあって。いろいろあっても、そこから新しいスタートができてきたんですよ。私、あんまり引きずらないので。過去は過去。今は今。今が一番大事で最高だと思ってるんで。そりゃ、毎回凄くいいステージをできるわけじゃない、納得いかないステージだってある。でも、「ああ、凄い気持ちいい、最高!」ってステージがあるわけで。それを超えるステージをやりたいって思うし。続けてる理由はそこなんでしょうね。あとウォーリアーズだけをずっとやってたらどうなってたかわからないけど、ソロをやったりアコースティックがあったり、バランスをとってるからかな。

──NICKEYさんのAll time best、2枚組のベスト盤も同時リリースなんですよね。

NICKEY:そうなんです。NICKEY & THE WARRIORSのベスト盤とソロのベスト盤の2枚組。私の全部の活動のベスト盤です。選曲もすべてやりました。

──レーベルの垣根を超えたアルバム。どうですか? 昔の音源を聴いて。

NICKEY:恥ずかしいってのもあったりしましたが、でも「このテイクが自分の中ではベストだな」ってものもあったし。だから恥ずかしさだけじゃなく、当時の良さも思い出して。ちょっと前は否定的だったかもしれないです、過去の作品に対して。今は、コレはコレだなって。あの時代のあの年代の自分が唄っていて、それを否定しなくていいよねって。今はそんな気持ちで。過去は過去、今は今って気持ちもあるんですけど、あるからこそ、過去を素直に思えるようになったのかな。

──うんうん。35th Anniversary Liveが11月1日、新宿ロフトで開催ですね。

NICKEY:今のメンバーと、私が入る前のKEIGOが唄ってたROAD WARRIORSの頃から、全員ではないけど歴代のメンバーに出てもらって。もちろん、ゲストにHIKAGEさん、そしてThe STRUMMERS。The STRUMMERSは同じ事務所だったし、いろんなことがあったけど現在進行中で。素晴らしいですよね。

──いいですね。昔からの仲間だけど、改めて再会と言うか。

NICKEY:人生どうなるかわからないじゃないですか。そういう実感はみんなあると思う。だからやりたいって思った時にやるっていうのは、ホントに大事だなと。そしたらまた出会えるし、また繋がれるっていうね。人との繋がりってその時々で違ったりするけど、それが大事なものだったんだなぁ、繋がっていくんだなぁって。

──まさに今作もそういう感じです。昔好きだったパンク・ロックに新しく出会えたっていう。

NICKEY:ありがとうございます。今作、新しいウォーリアーズなので幅広くみんなに聴いてほしい。これが今のウォーリアーズです! そしてライブに来てください!

アーティスト写真:菊池茂夫/ライブ写真:YUKO TAKI

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