日本ではできないことを否が応でも経験してしまう海外移住、日本に住まないという選択肢を考える

海外で生活するとなると、現地の生活はどうなのか、その土地の人たちうまくやっていけるのかなど、さまざまな不安が出てくると思います。ここでは、海外で働く女性のためのポータルサイト「世界ウーマン」のファウンダーである藤村ローズさんに海外移住の魅力について解説してもらいます。

海外在住者の立場から見た「海外に住むこと」

キューケンホフ公園にて

はじめまして。オランダに在住している藤村ローズです。正真正銘の日本人ですが、海外に出て本名が英語発音で聞き取れない、10回以上言ってもうまく伝わらず、困りに困って英語名を使い始めたところ、「Rose」はすぐに覚えてもらえ、すっかり浸透してしまったので、今ではこの名前を名乗っています。

北京・香港・マカオ・マレーシア・オランダと、海外生活は通算13年目。海外在住者の立場から「海外に住むこと」についてお話しします。

海外在住の日本人は過去最多!

海外在住の日本人は、現在どのくらいかご存知ですか? 2017年度に外務省が行った集計によると、海外に在留する日本人の総数は135万1970人。このうち、3ヶ月以上の「長期滞在者」が86万7820人、残りが「永住者」で48万4150人となっています。また、在留邦人の総数は、前年と比べて1万3493人(約1%)の増加となっており、統計を開始した1968年以降最多となっています。

海外在留邦人数推移(外務省「海外在留邦人数調査統計」より)

この背景には、日系企業の海外進出(前年より約5.2%の増加で2005年以来最多)があります。とくにこの5年ほどでアジアを中心に約18%の増加となっており、会社から派遣される駐在員とその家族の人数が増加しています。

その一方で、会社派遣ではなく、自らの意思で海外に出る日本人も増えています。「自由業関係者」が約5.6%の増加、「留学生・研究者・教師」が約0.2%の増加となっており、これはとても興味深いことではないでしょうか。

海外滞在はトータルで13年目

実は、私自身もこの中の一人。2015年より個人事業主としてオランダに滞在しています。オランダは今年で5年目。2006年から北京、香港、マカオ、マレーシアと滞在しており、海外生活は合計で13年目となります。

実は自分でも海外生活がこんなに長くなるとは想像もしていませんでした。最初の海外での長期滞在は北京への留学で、2〜3年で中国語とスキルを身につけたら帰国して日本で働きたいと考えていました。ところがそのまま帰国することなく、いくつかの他の国に住むこととなり、現在に至ります。海外で予想のつきにくい人生を送っていることが辛く感じる時期もありましたが、今ではオランダでとても充実した生活を送っています。

若ければ若いほど吸収力は高いが、人生に遅すぎることはない

オランダでの通学風景

香港で生まれた息子は現在11歳、インターナショナルスクールで中学生になりました。海外で生まれ育った彼は、まさにグローバルシチズン。プロサッカー選手になることを目標にオランダで頑張っています。日本人の両親をもち、日本が大好きで日本文化に誇りをもっていますが、第一言語は英語。そして、日本語とオランダ語を流暢に話します。中学生になってフランス語も学びはじめました。

世界中から来た友達がたくさんいて、毎日いろいろな子と勉強したり遊んだりとても楽しそうにしています。「私もこんな風に子ども時代を送れていたら、大人になってこんなに苦労せずに済んだのに」と思わないでもありませんが、彼らにもまた別の悩みがあるので、そこは単純に比べることはできないものかもしれません。

*彼の生活の様子についてはこちらの本「世界で通用する最強の子育て」藤村正憲で紹介されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

所属するサッカーチームが大会で優勝

しかし確実に言えるのは、子どもと大人の吸収力の違いです。やはり若ければ若いほどいいと言わざるを得ません。母国語として言語を習得できるのは10歳ごろまでと言われていますし、言葉だけでなく考え方なども若いときのほうが、柔軟性が高いでしょう。

私が海外に出たのは成人してからですが、もっと早く出ていればよかったと本当に思います。たとえば、英語は中学1年生から習いはじめて大学を卒業するまでに10年以上学習しているのに、海外に出て自分の英語が通じないことに驚きました。そもそも英語で話すことに壁がありすぎるのです。

「文法的に間違っていないか」「発音がおかしくないか」などを気にしていると、声も小さくなってしまいます。日本人女性は高めの声で話すことが多いですが、子どものような高い声で話すことは、外国人にとって奇妙で聞き取りにくいそうです。そもそも相手にキチンと聞こえていなければ、英語以前に伝わりません。そういうことに気づくのにもけっこう時間がかかりました。失敗を繰り返しながら少しずつ身についていくので、スタートが早くほうが有利だと思うのです。

しかし、人生に遅すぎることはないとも思います。年を重ねるにつれ、経験を通して得た知恵があります。若いときより吸収力は落ちているかもしれませんが、努力によって乗り越えることは十分可能です。海外生活の中で、そういう方々にも出会ってきました。彼らはとても輝いていました。年齢を気にすることなく、やる気次第で挑戦できるのも海外ならではかもしれません。

日本ではできないことを経験してしまうのが海外

アムステルダムの教会

また、日本ではなかなか経験できないことを経験できる──いえ、してしまうのが海外
。ヨーロッパは国を越えての移動が簡単です。国境チェックもありません。オランダから2時間ほどドライブすれば、ドイツやベルギーに出れます。飛行機もEU内は国内扱いで運賃も格安。長距離バスもたくさん出ています。休暇の度にいろいろな国や都市を訪れては、似ているけれどそれぞれに違う文化を学んだり楽しんだりしています。

30歳を越えてバックパッカーデビュー

日本にいたら出会えないような人に出会えるのも海外ならでは。小さな国や日本人の少ない地域であれば、一国の首相や王様に会うことも夢ではありません。日本人というだけでお声がかかることもあります。ヨーロッパには日本代表クラスのサッカー選手が多くいるので、試合観戦に行ったり練習風景を見に行ったりすることもできます。また、海外在住日本人はとにかくユニークなキャリアをもつ人が多くとても勉強になりますし、日本ではお目にかかれないような方にお近づきになれる機会も日本より断然多いと思います。

オランダ・ヘーレンフェーンでの試合

日本の常識が通じないということもよくあります。文化も言葉も違う相手と一緒に何かをするのは骨が折れますが、すべてを超えて心が通じ合うこともあります。そういうときは、「やはり同じ人類。平和な世界を作っていかなければ」と妙に感動してしまったりもします。人種や文化の違いを意識せずコミュニケーションを取れるようになったらしめたものだと思います。

プライド・アムステルダム当日のダム広場

日本で生活しているとどうしても周囲の目や意見が気になってしまいがちですが、自分の人生を自分で築いていきやすい海外。むしろ自分をしっかりもっていないと、異文化の中で生き残っていくのは難しいでしょう。

もしかしたらあなたにとって、日本より住みやすい国が世界のどこかにあるかもしれません。年齢に関係なく、日本以外の国に住んでみる選択肢があっていいと思うのです。一度海外に出たら、一生日本に帰れないわけではありません。人生のしばらくの期間、今までとはまったく違う世界に身を置いてみることで手に入れるものは少なくないと思います。もし少しでも興味があったら、ぜひ一度海外に住んでみることをオススメします。

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