マック「100円コーヒー」が全面刷新、カフェ難民の救世主になるか

10月1日の消費増税に伴い、カフェなどの外食店舗でイートインした際の消費税率が10%に上がりました。わずか2%の上昇とはいえ、仕事の合間などにカフェを頻繁に利用していた愛好者には、小さくない負担となっています。中には、これまで使い慣れていたカフェの利用を見合わせ、予算に合った価格帯のカフェを探し歩いている人もいるようです。

そんな“カフェ難民”にとって朗報となるかもしれない商品リニューアルを、日本マクドナルドが10月9日に発表しました。Sサイズ100円で提供してきた「プレミアムローストコーヒー」を約3年ぶりに全面刷新したのです。

しかも、販売価格の100円は税込み価格で据え置き。はたして、リニューアルの中身はカフェ難民たちの肥えた舌にかなうデキになっているのでしょうか。


芸能界のコーヒー通も太鼓判

「おおー、僕の好きな濃いめだね。香りというか、コクというか、うま味というか、進化しているね」

1日に5~6回はコーヒーを飲み、心臓が止まるまで飲み続けると豪語する、俳優の藤岡弘、さん。10月9日に開催されたプレミアムローストコーヒーのリニューアル発表会で、新商品をこう評しました。

同じイベントには、ママ友とコーヒーをよく飲むという、タレントの若槻千夏さんも登壇。「普段はブラックで飲まないけれど、これはブラックでもスッと飲める。しかも1時間かけてメイクした後に飲んでも、味わいが変わらないのに感動しました」と、感想を話しました。

毛筆で味わいを表現する藤岡弘、さん(左)

新商品の印象を感じ一文字で表すことを求められた藤岡さんは、毛筆で「濃」と表現。「濃いコーヒーでガツンと来る。気持ちが入るコーヒーは良いよね」と、付け加えました。

中身に加えてカップも一新

日本マクドナルドが10月15日から提供を始める、新プレミアムローストコーヒー。リニューアルに際しては、「深みのある濃い味わい」「食事とよく合う味」「味わいの経時変化を抑える」という3点にこだわったといいます。

中身のリニューアルに合わせて、カップも一新。マクドナルドのロゴと同じゴールデンイエローに色味を変更するとともに、カップのデザインを5種類用意。カップ同士を横に並べると線でつながって見えるなど、SNS映えも意識しました。「家族や友人と共有して楽しんでいただきたい」と、日本マクドナルドの西田瑛太郎ナショナルマーケティング部長は狙いを語ります。

カップのデザインはSNS映えを意識

今回のコーヒーのリニューアルは、同社が4月から始めた「もっと、おいしさ&バリュー向上宣言」という一連の施策の第6弾に当たります。昨年度の「もっと、おいしさ向上宣言」では味に照準を絞りましたが、今年度は味に加えて商品の値打ち感の向上も意識した商品開発を進めています。

それゆえ、商品の中身は見直した一方、価格は税込み100円(Sサイズ)を据え置きました。「自信のあるリニューアルなので、一度飲んでもらえたら、おいしさとバリューを感じていただけると思います」と、西田部長は力を込めます。

3つのこだわりをどう実現したのか

とはいえ、リニューアル前の商品の売れ行きも好調だったといいます。商品開発を担当した、メニューマネジメント部の若菜重昭・上席部長は「味を変えるのは勇気が必要でした」と振り返ります。

リニューアルのコンセプトを「最高の食事体験」と置き、2年の歳月をかけて開発を進めました。前述の3つのこだわりを実現するため、さまざまな工夫を施しました。

「深みのある濃い味わい」を出すために、リニューアル前はブラジル、コロンビア、グアテマラ、エチオピアという4ヵ国産のコーヒー豆を使用していましたが、リニューアルにあたってエチオピア産を抜いて、新たにペルーとニカラグアの豆を加えました。さらに焙煎度合いをわずかに深くすることで、甘みと酸味と苦味のバランスを調整したといいます。

特徴の異なる5種類の豆をブレンド

2つ目の「食事とよく合う味」については、焙煎度合いの変更によって苦味をアクセントとして取り入れつつ、新たに2ヵ国の豆を加えることで酸味を抑え、サッパリした口当たりを実現したそうです。

そして、3つ目の「味わいの経時変化を抑える」に関しては、上述のように豆の配合を見直し、酸味が突出しないようにブレンド。バリスタのワールドチャンピオンの実績を持つ井崎英典さんの監修の下、時間が経ってもおいしく飲めるコーヒーを実現させました。

「濃い味わい」よりも印象的だったのは?

発売にあたっては試飲キャンペーンを実施。10月15~18日の14~21時に、全国の店舗でSサイズを無料で提供する予定です。

イベントでは濃いめの味わいが強調されていましたが、イベント後に報道陣に配られた試飲用の商品を飲んでみると、濃いめの味以上に、後味のスッキリ感が印象に残りました。濃いめのコーヒーを飲むと、後味の余韻が強すぎるケースがしばしばありますが、この商品は濃いめの味がガツンと来た後、しばらくすると一気に余韻が引いていく印象がありました。

特に効果を発揮するのが、甘いスイーツを食べた直後。今回のイベントではコーヒーとともに「三角チョコパイ」が提供されましたが、チョコパイを食べた後にコーヒーを一口ふくむと、パイの過剰に甘い部分が洗い流され、チョコとコーヒーの無駄のない余韻だけが口内に残りました。

三角チョコパイとの相性は抜群

イベントでは、「5ヵ国の豆の良い味わいを、いいとこ取りして、凝縮して飲める。濃いめの味わいは食事にピッタリ」と藤岡さんが語れば、若槻さんは「食事の邪魔をしない、だけどコーヒーとしての爪痕を残してくれる。プレミアムローストコーヒーのようなタレントを目指します」と、うまくまとめました。

濃いめの味で本格派のコーヒー愛好家のニーズに対応しつつ、スッキリした後味で新たに女性のティータイム需要を掘り起こすことができるか。消費増税に揺れる外食業界にあって、今回のコーヒーリニューアルはカフェとファストフードの勢力図に変化をもたらす可能性も秘めていそうです。

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