鷹・長谷川勇、内川の代打で千金同点打「無になっていたから何も分からない」

ソフトバンク・長谷川勇也【写真:荒川祐史】

長かった2軍暮らしでもバット振り続け「報われた気がして、それが良かった」

■ソフトバンク 8-4 西武(CS・9日・メットライフ)

 ソフトバンクの長谷川勇也外野手が値千金の同点打を放った。9日に敵地メットライフドームで行われた「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第1戦。8回2死一、三塁の場面で代打で登場すると、西武4番手の平良から左前へと落とす適時打を放ち、試合を振り出しに戻した。

 まさかの代打起用だった。一打同点の場面で、打順には短期決戦にめっぽう強い内川へと巡ってきた。ここで工藤公康監督は「今日はちょっとタイミングが合っていない感じがした」と、内川に代えて、代打・長谷川勇を送った。

 ストレート2球で追い込まれ、ストレートで2球ボールが続いた。2ボール2ストライクからの5球目は再びストレート。高めのボールを弾き返すと、打球は左前へと落ちた。三塁走者が生還し、試合は振り出しに。代走周東が一気に三塁まで進むと、敵バッテリーのミスで勝ち越しに成功した。

 試合後、殊勲の一打を放った長谷川勇は「無になっていたから何も分からない。何も考えてなかった。意外と冷静だったし、無心で打った」と振り返った。内川の代打という驚くべき起用にも「全然考えてなかった」。狙い球や相手の配球に関しても「それすらも考えていなかった」。まさに“無の境地”で打った一打だった。

 今季は開幕を2軍で迎え、1軍昇格は4月16日だった。この時は負傷により、わずか2日で登録抹消。再び1軍からお声がかかったのは7月19日になってからだった。代打が主ながら、打率3割超をマークしていたが、8月21日には再び降格を言い渡された。長かったファーム生活。それでも、腐ることなくバットを振り続けてきた。「このためにバットを振り続けてきた。今年やってきたことが報われた気がして、それが良かった」。そう語ると、ふっと柔らかい笑顔を見せていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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