世界最速の湿度センサー 北電工が開発

展示会に向けてデモ機を操作する担当社員と多田社長(左)=北陸電気工業

 北陸電気工業は、湿度を超高速で感知するセンサーを開発した。同社によると、応答時間は従来品の約10倍も速くなり、世界最速。湿度を正確に把握する必要があるエアコンや冷蔵庫に加え、電気自動車(EV)や医療機器、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムなど幅広い分野での利用を見込む。来年1月から量産を始める。(経済部・浜松聖樹)

 北陸電気工業は約10年前から容量式湿度センサーを生産し、エアコンや空気清浄機などの機器では世界トップシェアを誇る。IoT(モノのインターネット)や5Gの時代を見据え、約3年前から改良を加えて開発したのが「HSU-CHM-04A」だ。

 信州大と共同研究し、材料や構造を見直した。応答時間は従来品が10秒ほどだったが、1秒にまで短縮した。大きさは2ミリ四方、厚さ1.25ミリの業界最小クラス。特許出願中で、既に車載用や医療分野からの引き合いがあるという。

 新センサーを自動車のエアコンで用いれば、湿度を効率的にコントロールでき、省エネにつながる。エンジンにガソリン車ほどの熱を持たないEVは暖房時の省エネが求められるため、需要が高いとみている。

 人工呼吸器での利用も見込む。人が吐いた息の湿度は高い一方、吸う時には口の周りの湿度が下がるため、超高速センサーでは呼吸の速さや間隔を把握できる。

 5Gの基地局での利用も見据える。機器の中に雨水が浸入すると湿度が上がるため、素早く検知できる。今後、基地局の増加が見込まれており、ビジネスチャンスが広がる。

 10月15~18日に千葉市の幕張メッセで開かれる、アジア最大級の家電とITの展示会「CEATEC(シーテック)ジャパン2019」に出品する。サンプル価格は1個500円。2020年度に年間売上高5億円、23年度には30億円を目標とする。

 多田守男社長は「これまでにはない分野にも売り込みをかけ、新分野や新顧客の開拓に挑戦していく」と話している。

米粒(右)よりも小さい業界最小クラスの湿度センサー

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