【新作映画レビュー】14歳の第三夫人の物語を官能的に映画化した『第三夫人と髪飾り』がSNSの中傷で公開4日で上映中止に!! 

なかなか衝撃的な映画が日本公開となります。それが、14歳にして第三夫人として嫁ぐ事になる少女を官能的に描いた映画『第三夫人と髪飾り』

しかも、本作は実話ベースなんです!!ベトナムでは、そのセンセーショナルな内容も然ることながら、主人公を演じた女優が撮影当時13歳だった事もあり、SNSによる中傷が発生。公開わずか4日で上映中止に(詳細は後述)。そんななにかと気になる映画『第三夫人と髪飾り』は、ベトナムの新鋭アッシュ・メイフェア監督が自身の曾祖母の実話を本作の脚本に織り混ぜ執筆。その脚本をオスカー監督のスパイク・リー監督に見出だされ、資金調達、撮影、編集と5年の歳月を経て完成。すでに世界各国での映画祭で様々な賞を受賞。やっと10月11日より日本公開となるんです!!

親によって決められ、一夫多妻制の第三夫人へ!!

舞台は、19世紀の北ベトナム。断崖絶壁の谷を流れる川沿いにある小さな村。大自然を背景に落ち着いたトーンの綺麗な映像は各所でハイスピードに。物語は、主人公が富豪の屋敷へ嫁いで来るシーンからスタート。

早速、初夜を迎えます。相手の富豪は14歳の主人公からすれば父親くらい歳の離れた夫。一夫多妻制や親によって決められた婚姻など、当時のベトナムの文化がドキュメンタリーのように垣間見えます。そんな中、主人公の目の前を様々な性の形が通過していくんです。それは他の男と逢引の不倫だったり、妊娠、流産、百合描写、動物たちの出産や死。そして何より、男の子を産まないといけないという夫人たちのプレッシャー。世継ぎである男児を産んでこそ、真の“奥様”となる訳です。

まるで子供を産む為の道具のように扱われる本作の女性たち。酷いと思うかもしれませんが、日本にだって、戦前まで家父長制度はありましたから、全くの他人事ではない訳です。そう思うとゾッとする訳です。しかし、当時のベトナムでは、当時の日本同様に珍しい事ではなかったはずです。それを今の私たちが映画として観る事でカルチャーショックが発生。

公開中止の騒ぎへ!!

本作で、幼いあどけなさと妖艶さを併せ持つ主演をまさに熱演したグエン・フオン・チャー・ミー。監督いわく、「ベトナム中の学校に辺り、見つけ出した」との事。それだけあって、劇中では、ピュアな少女の一面がクライマックスでは酸いも甘いも知った女性の表情を見せます。ただ、ベトナム本国での官能描写が大きな物議に発展。保守的な人々による、主演のチャー・ミーさんとその母親への誹謗中傷が。挙げ句、個人情報をインターネット上に公開される騒ぎに。危険を感じた監督により、映画は公開4日目にして上映中止へ。監督は、その後、「本作はベトナムの史実を残す大切なメッセージを帯びている」というオフィシャル声明を発表。しかし、事態の収集へは向かっていない現状。

公開中止の経緯や作品への思いを語ったアッシュ・メイフェア監督のマガジンサミット独占の動画インタビューはコチラ!!

さらに後半には物語がスパーク!!最初は、妖艶な色気を放ちつつ、主人公を優しい眼差しで見守る第一夫人&温厚でのほほんとしていた第二夫人。その関係も主人公が妊娠するなり、昼ドラをハードに超えていく裏の関係性も明らかになっていきます!!主人公たちを比喩するかのような、飼育されてるカイコから作られる絹の作業行程で時間経過を表現。独特すぎるセンスが随所で登場。ラストは切なくも、どこか清々しい終わり方をするんですけど、カテゴライズ不可な何とも言えない気持ちになります。映画『第三夫人と髪飾り』は10月11日より公開です。

映画『第三夫人と髪飾り』

19世紀の北ベトナム。14歳のメイはその地を治める大地主のもとに、三番目の妻として嫁いでくる。一族が暮らす大邸宅には、唯一の息子を産んだ穏やかな第一夫人、3人の娘を持つ美しく魅惑的な第二夫人がいた。まだ無邪気だったメイは、この家では世継ぎとなる男の子を産んでこそ“奥様”になれることを知る。

そして妊娠。出産に向けて季節が流れる中、第一夫人も妊娠していることが発覚。時を同じくしてメイは、第一夫人のひとり息子ソンと、第二夫人のある秘密を知ってしまう。

監督:アッシュ・メイフェア 撮影:チャナーナン・チョートルンロート アーティスティック・アドバイザー:トラン・アン・ユン

出演:トラン・ヌー・イェン・ケー、グエン・フオン・チャー・ミー、マイ・トゥー・フオン( Maya )、グエン・ニュー・クイン

2018年/ベトナム/96分/DCP/カラー/字幕翻訳:原田りえ/配給:クレストインターナショナル R15

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