時代を超えて成長し続けるミュージカル「キレイ」来年1月博多座上演! 松尾スズキが意気込み語る

2019年9月、福岡・博多座で2020年1月25日から上演される「キレイ―神様と待ち合わせした女―」の記者会見が行われた。会見には演出を担当した、劇団・大人計画の主宰・松尾スズキが登壇。“自信作”への思いを語った。

本作は2000年に松尾が初めて手掛けた本格的ミュージカルとして、東京のBunkamuraシアターコクーンにて初演。その後2005年、2014年と再演し、回を重ねるごとに進化している。都合4回目にして初めて、自身の故郷・福岡へ。念願の凱旋(がいせん)公演に「非常に楽しみで、ドキドキしています」と神妙な面持ちだ。

さまざまな分野で活躍する松尾だが、シアターコクーンで芝居する機会に恵まれた際、未経験の分野に挑みたいと思ったことが、ミュージカルを手掛けるきっかけに。松尾は「当時は『ミュージカルの概念をぶっ壊してやろう』という思いでスタートしました。音楽や舞台装置も、ミュージカルが本職ではない人を配置したり…攻めていましたね」と振り返った。しかし、回を重ねるごとにミュージカルという世界の“深さ”に気づき、自らのミュージカルに対する未熟さが気になってしまったという。今回の舞台について初演との変化を聞かれると、「今は無駄をそいで、ミュージカル的な要素を深めていき“音楽的に充実”させ、進化した形になっていると思います」と自信をのぞかせた。

この物語は、100年間民族紛争が続く“もう一つの日本”が舞台。争いのさなか、民族解放軍を名乗るグループに誘拐、監禁されていたとある少女が10年ぶりに逃げ出してくる。全ての過去を忘れたその少女は、自らを“ケガレ”と名乗り、過去、現在、未来が交錯する中でさまざまな人と出会い、新たな人生を歩んでいく…というストーリーだ。

過去3度の公演では主人公の少女・ケガレ役に奥菜恵、鈴木蘭々、多部未華子といった実力派若手女優を起用。一方、今回はミュージカル経験豊富な生田絵梨花が主演を務める。また“枯れ木に花を咲かせる能力”を持つ少年・ハリコナ役には、舞台初出演の神木隆之介を起用し、キャスティング面も大きな話題に。「今回は今までよりもミュージカル経験がある人を起用しました。一応ミュージカルなので…歌が歌えるに超したことがないというのが大前提です」と松尾。生田については「以前舞台を拝見しまして。非常に手あかのついてない演技をするというか。歌声も素晴らしく、美しいし。『ぜひ』とこちらから言いました。生田さんも『キレイ』を見たことがあったそうで、それでトントン拍子で話が進みました」とし、神木については「前から注目していました。初舞台っていうことが、彼の役のフレッシュさにコンディションが合致しているんじゃないかな?と思っています。先日歌声を聞きましたが、非常にいい歌声で上手でした」と説明した。

物語を盛り上げる音楽は、過去3度の公演から引き続き、伊藤ヨタロウが担当する。彼について松尾は「初演の時に、僕がミュージカルをやるからには普通の音楽ではなく、少し“無国籍”でなきゃと思って、付き合いがあったヨタロウさんに相談したのがきっかけ。オープニングの『ケガレのテーマ』は特に名作だと思いますね。日本発のミュージカルのスタンダードナンバーになるんじゃないかな?」と笑顔。

会見の最後に松尾は、博多座公演に向けて「うちの俳優は博多が大好きで、博多公演となると少しテンションが上がるんです(笑)。そんな博多にやっと来られたなという感じ。今までは小さな規模のお芝居しか、こっちに持ってきたことがないですが、松尾の芝居はこれぐらい派手でスペクタクルな演出ができるんだっていうのを感じていただけたらなって思います!」と意気込みを語った。

2000年の初演後「見ている眺めが変わったなぁと思った」と振り返った松尾。回を重ね進化を続けてきた名作が、時代を超えていよいよ博多座に登場する。ぜひ会場に足を運んでみてほしい。

© 株式会社東京ニュース通信社