コラム凡語:秋の野草とチョウ

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 秘密の花園のようなビオトープで秋の七草の一つ、フジバカマが満開を迎えた。京都市伏見区の稲荷山のふもとで住民グループ「深草藤袴(ふじばかま)の会」が、地植えや鉢で育てている▼小学校プールの3倍ほどの敷地は公開していないが、フジバカマを市街地に広めるための「裏庭」の役割を担う。幼稚園やイベント、行政機関に鉢や株を貸し出し、提供する。他地域の普及団体の鉢も預かり開花まで見届ける▼花に集まるのが「海を渡るチョウ」と呼ばれるアサギマダラだ。会長の北仲重郎さん(75)の目の前で、ステンドグラスのように美しい姿がとまった。「今年は飛来がまだ少ない。あと5度は気温が下がってほしい」▼アサギマダラは夏を東日本の冷地で過ごし、秋に九州や中国大陸方面へと移動する。花の蜜は、途方もなく長い旅路を支える栄養源となる▼移動ルートとなる京滋は9月下旬に日中の気温が30度以上の日が続き、飛来が遅れている。9月末からフジバカマの展示を始めた下京区の梅小路公園でも「木陰か高所で暑さを避けているのか、朝夕に少数しか姿を見せない」と職員は話す▼万葉集や源氏物語に登場するフジバカマの周囲を無数のアサギマダラが乱舞する姿は、秋の深まりを告げる風物詩だ。寒露を過ぎて本格的な冷え込みが待ち遠しい。