河北春秋(10/11):カミソリ坂田。囲碁の23世本因坊、故坂田…

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 カミソリ坂田。囲碁の23世本因坊、故坂田栄男さんはそう呼ばれた。鋭い着手で一時代を築く。強さは将棋の大山康晴15世名人と並び称せられた▼1965年、無敵を誇る45歳の坂田さんを名人戦で破り、世間を驚かせた新鋭がいた。名誉天元の林海峰さん(77)。当時23歳。目立った実績はなかった。「20代の名人はあり得ないよ」。そう語っていた坂田さんは敗れ、「おごりがあった」と反省した▼一昔前はあり得なかった20代どころか、10代名人の誕生である。第44期名人戦で芝野虎丸八段(19)が張栩名人(39)を破り、10代初の七大タイトル保持者になった。最高段位の九段にも最年少、最速で到達した▼物静かで穏やかな青年という。虎丸の「丸」のように柔らかな雰囲気。だが盤上では戦闘的な手を打ち、「虎」になる。将棋の藤井聡太七段(17)らと同様に人工知能(AI)ソフトで鍛えた。対局をゲームのように楽しんでいるように見えるのはそのためだろうか▼54年前の林さんの勝利は囲碁界に群雄割拠の時代をもたらした。今も状況は似ている。井山裕太四冠(30)や「ポスト井山世代」と呼ばれる20代前半の棋士たちがしのぎを削り、女流棋士の躍進も目立つ。芝野さんと井山さんは25日開幕の王座戦で激突する。盤上の戦いが面白くなってきた。(2019.10.11)