『裸一貫! つづ井さん 1』つづ井著 自家発電のヒント(とバカバカしさ)満載

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 またお前か!!!!書店で表紙を見た途端、思わず心で突っ込んでいた。つづ井……「魂がオタク」な彼女は、これまでも友人たちと休日になると集まり、オタク活動のほか公園で遊んだり知育菓子を作ったり架空の恋人を作ったりツイスターゲームしたりとやりたい放題やってきた。そんな彼女たちもアラサーに。同級生の結婚・出産ラッシュも相次ぎ、彼女たちの心境にも変化が……一切ねえ!!!スッテーーン。

 シリーズ30万部を記録し、文化庁メディア芸術祭のマンガ部門

 審査委員会推薦作品にも選ばれた前作「腐女子のつづ井さん」、その新シリーズである本書。「アラサー×おひとりさま×オタク=毎日生きるのがたのしい〜!!!」という、なんか知らんけどくそ明るいコミックエッセーだ。

 夜の公園で遊んだり、お泊まり会の夜風呂に入りたくなさすぎて、すもうで順番を決めたり、渋々風呂に入った友人を、風呂上がりにスタンディングオベーションで迎えたり、行き過ぎた誕生日会が開催されたり、街コン行ったり恵方巻き食べたり尻を愛でたり食レポしたり。

 そんな本書だが、一部、思わず息を飲む章がある。第2章の「推させて!つづ井さん」だ。これまで、もっぱら二次元(アニメやマンガ、ゲームなど)のオタクだったつづ井さんだが、ある日観に行った舞台でどうしても気になる俳優を見つける。彼のことをもっと知りたいとネットで検索をするが、この時代にまさかの、年齢すらわからない始末。彼のことをもっと知りたい想いと、手に入れられない苦しさ、こんなに何も知らない自分は、彼のことを「推し」と、胸を張って言えないのではないかというジレンマ……。ついに彼女は、「こうだったらいいな」という俳優の妄想の話を、友人に聞いてもらうようになる。既婚者、漬物漬けてる、娘がいる、運動音痴、服に無頓着で、全身真っ黒になりがち……。それを聞いた友人は、ふと口にする。「つづ井ちゃんの推しってさ、猫飼っとるんやない?」ズコーー!だ、誰も止めないのね……!

 なんて突っ込みながらも、読み終わる頃には苦笑に似た微笑みを浮かべていた。こういうのなんて言うの、自家発電?地産地消?自分の機嫌を自分で取れる人、そのためのアイデアがひっきりなしに出せるつづ井さんとゆかいな仲間たち。自分が楽しく生きることを優先順位の一番上に持っていける人って強い。バカバカしさ満載だけど、こんな風に生きていけたら幸せというヒントが潜んでいるんじゃないかな。

(文藝春秋 950円+税)=アリー・マントワネット