10月14日は「体育の日」です。来年から「スポーツの日」と呼び方が変わるので、実は今年が最後の「体育の日」でもあります。
10月も中旬になると「秋の長雨」の時期も終わり、カラッと晴れて気持ちが良い「スポーツの秋」の到来です。今年はラグビーワールドカップで日本代表が活躍しているので、例年以上に「運動を始めてみようかな」と思う人も多いのではないでしょうか。
いきなりラグビーは難しいかもしれませんが、「気持ちが良い陽気の中で軽くジョギングでも」とか「会社帰りにジムを始めようか」と思う人もいるでしょう。あるいは、この際、ゴルフやテニスとか、マラソンとか、本格的にスポーツを始めようと思うかもしれません。
今回は、人気スポーツの1つである「ダンス」を取り上げてみます。実は、ダンスと株価の間には意外な関係があるのです。
なぜダンスに着目したのか
いきなりダンスと言われても、ピンと来ないかもしれません。実は昨今、子供世代から大人までダンスへの注目が高まっています。この流れのきっかけの1つが、2008年に行われた学習指導要領の改訂。中学1・2年生でダンスの履修が必修となったことです。
過去を振り返ると、学校教育におけるダンスの歴史はとても古いのです。明治5年の学制発布から、女子体育の間でダンスは重要な種目でした。女子に限らず、運動会や体育祭ではフォークダンスをした経験がある方も多いでしょう。そして現在は、男女ともにダンスが必須です。
学校教育に限らず、今ではさまざまな団体がダンスコンテストを行っています。学校対抗のものだけでなく企業対抗もあり、学生から大人までの参加で盛り上がりをみせています。体育の授業にダンスが取り入れられたことで、それをきっかけにダンスを続けて、卒業後も楽しむ人もいるようです。
こうした国民の教育に深く根付いていることですから、その変動は国内の景気や株価にも影響が表れています。実は「ダンスが注目されると、株価が上がる」という関係があるのです。
ダンスの注目度をどうやって計る?
データを使って確認してみましょう。しかし、ダンスへの注目度を計るデータが、なかなか見つかりません。
これまで何度かお話ししてきましたが、株価に関係がありそうな身近な情報を見つけても、やはり実際に分析して株価との確認をする必要があります。政府の統計や民間の調査など、利用できるものも少なくないのですが、過去からの一定の長さのデータが必要だったりすると難しいものです。
今回もダンスへの注目を表すものとして、ダンス人口の推移やダンスコンテストへの参加人数などを探してみましたが、なかなか見つかりませんでした。そこで、こうした時に“注目度”の尺度として、われわれ専門家がよく使う方法を用いました。
新聞でダンスの記事が取り上げられた件数を調べる方法です。新聞でダンスが記事に取り上げられた件数が多いのは、世間で注目を集めているからでしょう。たとえば、9月に全国紙上でダンスが取り上げられた記事の件数を調べると、578件でした。1日当たりだと、20件弱です。
そんなにあるのか、と思うかもしれません。今回は新聞だけでなく、通信社のニュースも含んで、合計21媒体としました。できるだけ広く記事が取り上げられていることをチェックしたかったからです。
実際にデータを分析してみると…
ダンスが取り上げられる記事数は、秋の「三笠宮杯全日本ダンススポーツ選手権」に連動して急増する月もあります。こうした季節性をならすため、毎月末までの過去1年間としました。
そして、前年の同じ月までの過去1年間と比べて、記事数がどのくらい増えたかを見ています。ですから、グラフがゼロよりプラスにあると、前年と比べて過去1年間の記事数が増えて、注目が高まったとみられます。今回の分析では、この値を「ダンス注目度」と呼ぶことにします。
一方、株価のデータは日経平均株価を使っています。ダンス注目度から将来の株価の動きが予測できると、投資にも役立ちます。そこで、日経平均は翌月から半年間の動きを見ています。実際の分析結果は、下図のとおりです。
グラフはダンス注目度のほうが9月末までになっていますが、日経平均はその時点から6ヵ月間の動きをみたものなので、直近は3月末までとなっています。たとえば、9月末から半年前でいえば、4月からとなります。この間で日経平均は550円高となりました。これが3月末の値となっています。
グラフは連動した推移を見せており、ダンス注目度が将来6ヵ月間の株価を予想する傾向となっています。なぜ、このような関係があるのでしょうか。
なぜダンスと株価が連動するのか
やはりダンスなどのスポーツが注目される時は、基本的には国民の所得が良く、金銭面などに余裕がある時と思われます。または余裕がない場合でも、そのスポーツに関連する産業への恩恵が期待されたり、あるいは国民が元気になる原動力が生まれたりすれば、将来的な経済の発展にもつながると思われます。
ダンスとなると、あまり気軽に始められるものでもありません。レッスンなどの費用がかかることも、裏を返せば金銭面での余裕を表してくれます。
その一方で、ダンスはゴルフなど限られた世代の嗜好に留まるスポーツでもありません。リトミック体操、ストリートダンスから社交ダンスに至るまで、幼児から年配までのさまざまな世代・立場の人が関心を向けられるものだからこそ、景気や株価との関係が強く表れるとみられます。
ところで、図を見ると、ここに来てダンス注目度が下がっているのは気掛かりです。しかし、来年の東京五輪の4年後に開催されるパリ五輪ではブレイクダンスが競技種目に追加されるなど、長期的な注目が期待されます。より長い視点で考えると、ダンスへの注目と連動した株高も期待されます。