埼玉では参院補選が今年6度目の投票になるところも!こんなに選挙が多いことってあった?

10月27日に参議院埼玉県選挙区補欠選挙の投開票が行われます。これは参議院の埼玉県選挙区から選出されていた大野元裕氏が8月に行われた埼玉県知事選挙に立候補するために議員辞職したことによります。この選挙により、2019年の埼玉県では、県議選、県知事選、参議院の通常選挙、参議院の補欠選挙の4回が行われることになりました。今回はこのように選挙が集中した事例を紹介します。

亥年選挙:選挙が集中する1年

選挙が集中する年というのは周期的に存在します。参議院選は3年に1回、統一地方選は4年に1回行われるため、12年に1回だけ、参議院選と統一地方選が同じ年に行われます。この年は十二支の亥年になるため、亥年選挙と呼ばれます(余談ですが、亥年選挙の参議院選は自民党が苦戦しやすいという説があります)。このため、この年は選挙が集中しやすく、都道府県知事選と議会選、市区町村長選と議会選が行われる自治体は1年で5回も選挙が行われることになります。
なお、今回の埼玉県の場合はやや特殊なケースです、県政関係の選挙は、統一地方選で県議選、統一地方選とはスケジュールがずれたものの知事選がありました。さらに、参議院選の通常選挙と今回の参議院選の補欠選挙があるため、他に選挙がなくても2019年は埼玉県に属する自治体は4回は選挙を行うことになります。そして、埼玉県の中でこの年に市町村長選と議会選が行われた自治体は行田市、所沢市、狭山市、蕨市、北本市、幸手市、吉川市(議会補選)、毛呂山町、川島町、横瀬町の10の自治体で、これらの自治体は1年間に6回も選挙を行うことになります

全選挙が1か月間に集中した1947年4月選挙

過去の事例を見ると、衆議院、参議院、都道府県知事、都道府県議会、市区町村長、市区町村議会の全ての選挙が1か月以内に行われたという驚くべきことが起きた事例があります。さらに驚くべきことにこれは一つの自治体だけに起きたのではなく、全国で同じことが起きたのです。
この驚くべきことが起きたのは、1947年4月でした。このようにこの時期に選挙が集中した理由はこの年の5月3日に日本国憲法が施行されるためで、この選挙は新たな日本の出発のためという性質がありました。特に都道府県知事や市区町村長を選挙によって選ぶのはこの選挙が初めてであり、参議院は新しくできた日本国憲法によって設置されたもので、この選挙が第1回でした。このほか、極めて画期的な点として、今までは選挙運営は自治体の首長がしていたものの、この選挙から選挙管理委員会が選挙運営を行うというシステムになったことが挙げられます。
これらの選挙の投票日は首長選が4月5日、当時存在した首長選の決選投票が4月15日、参議院が4月20日、衆議院が4月25日、地方議会が4月30日という超過密スケジュールで、首長選の決選投票まで行われた場合、1か月の間に最大8回選挙をする可能性がありました。これらの選挙はまとめて4月選挙と呼ばれました。

1947年4月選挙の様子

この4月選挙の様子はどうだったのでしょうか。衆議院選は選挙の3か月前という状況まで、詳細な日程が決まらなかった上に選挙制度の議論も続き、選挙1か月半前という土壇場になって、今までの大選挙区制から中選挙区制になるなどの制度変更まで行われ、選挙前から混乱も見られていました。また、すべての選挙において、選挙に使う紙不足が生じていたため、文書による選挙運動に著しい制限が加えられました。
この選挙が現在の選挙と異なる点として、公職追放令があったため、立候補者の審査が存在していたことが挙げられます。以前の選挙でもこのような事前審査は存在していましたが、特に今回は新憲法施行ということもあり、厳しく審査が行われたことが記録されています。この審査受付は2月から行われましたが、余りにも人が多いため、地方議会選は当選後に資格を審査するという形となりました。このほか、この選挙の特徴ある点として、当時の日本は連合国の占領下にあったため、連合国最高司令部もこの新しい憲法のための選挙を重視して、公職追放の徹底をすることや棄権せず投票するようなどの様々な声明が出されたり、援助が行われたりしました。
また、大きなトラブルとしては、「台風直撃で投票時間・投票日が変わる? 「早まる」「延期」などにご注意を!【沖縄県知事選】」で紹介したように、長野県飯田市では参議院選の投票日に市街で大火が発生し、投票所が焼失したため、参議院選の投票ができなくなったというものがあります。

このように日本で最も選挙が集中した1947年4月の選挙でしたが、投票率は衆議院が約68%だった一方で、参議院が新しい議院として有権者にちゃんと周知されていなかったことや衆議院に各政党や有権者の視線が集中していたこともあり、やや低調で選挙区、全国区ともに約61%と記録されています。また、首長選も似たような投票率でしたが、知事選と市区町村長選を同時に行った自治体は、2つの選挙の投票用紙を同時に渡されたため、取り違えた人や片方だけ書いた人がおり、白票や無効票が多めに存在したことも記録されています。

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