「1日2万丁!お高めでも売れる“豆腐”の掟」 一般的な値段の倍もするのに、1日2万丁も売れる“豆腐”がある。「究極のきぬ」と「至高のもめん」の秘密とは?

 一般的な値段の倍もするのに、1日2万丁も売れる“豆腐”がある。「究極のきぬ」と「至高のもめん」。製造するのは愛知県高浜市にある「おとうふ工房いしかわ」。大豆の収穫から密着取材すると、ヒットの秘密が見えてきた。 

ヒットする豆腐の掟、収穫は足元にご用心!

 豆腐の原料となる大豆の収穫がピークを迎えた12月、愛知県安城市の大豆畑は黄金色に輝いていた。大豆は、サヤが“枯れた枝豆”のような状態になると収穫のサイン。しかし、大型のコンバインで土ごと掘り起こしていくのではない。刈り取るのは根元から上の部分だけ。わざと土を避けて収穫しているのだ。土を巻き込むと、コンバインの中でサヤと大豆を分離するとき、大豆を傷つけるなどして“渋味”の原因になるという。売れる豆腐は国産大豆を使い、収穫からこだわっていたのだ。

 収穫された大豆は工場のサイロに運ばれ、出番がやってくると空気の力で工場内へと運ばれる。水流で洗い終えた大豆をさっそく使うのかと思いきや、なぜか貯蔵庫に入る。中を覗くと山盛りの大豆がまたまた水に浸かっていた。待つこと半日。水が抜けると大豆はぷく~と膨らみ、ひと回り大きくなった。水分を含んで柔らかくなった大豆を機械がすり潰し、とろとろの大豆スープ「生呉(なまご)」を作る。この生呉を「おから」と「豆乳」に分け、豆乳を固めると豆腐になる。

海から採れる魔法の水、“苦汁”って読める?

 豆腐を固めるのに使うのは“にがり”。海水から塩を作るときに残った液体がにがりで、その名の通りとても苦いことから漢字では「苦汁(にがり)」と書く。

工場で使うのは長崎産。天然のにがりを使うのも売れる豆腐の掟だという。しかし、にがりを入れた豆乳は数秒で固まり始めてしまう。固まり具合にばらつきが出ず、しかも大量に豆腐を作るために、工場では見たこともないマシンが活躍していた。

水流起こす“円盤”が登場!

たくさんの釜が円盤状に連なっている。釜の1つを覗くと豆乳がたっぷりと入っていた。するとプロペラが下りてきて、ぐるぐるかき混ぜながら水流を起こしていく。ここでピュッとにがりが投入された。渦のように回る豆乳。その時、突然鉄板のようなものが落ちてきて流れをせき止めた。水流が方向を見失い、上下に揺れる。

これは「櫂(かい)」と呼ばれる道具。流れをせき止めた衝撃を利用して、今度はにがりが縦にまんべんなく広がるようにしているのだという。釜がひと回りすると、豆乳はいい塩梅に固まっていた。

 「木綿」と「絹ごし」どう違う?

 ここで小さな穴があいたケース「型箱(かたばこ)」が登場。豆腐を崩しながら型箱いっぱいに詰め、布をかぶせてプレス機で水を抜く。せっかく固めた豆腐をわざわざ崩すのは水分を抜けやすくするため。こうして出来上がるのが、しっかりとした食感の「木綿豆腐」。一方「絹ごし豆腐」の型箱には穴があいていない。豆乳とにがりを直接流し込み、水分を抜かず固めていくから、プリンのようにぷるんぷるんとした滑らかな食感になる。こうして「究極のきぬ」と「至高のもめん」が出来上がるのだが、これだけでは売れに売れる豆腐の秘密とはいえない。

コレが味の秘密!豆乳に加える“2つの成分”

 撮影はNGだったが、味の秘密を教えてくれた。「大豆油とオリゴ糖を混ぜたものです。コクやうま味、甘みが非常にあがります。弊社独自の製法だと思います。」もともと大豆に含まれる2つの成分を豆乳に加えることで、コクや甘さをさらに際立たせてるのだという。

国産大豆に天然のにがり。そこに秘密の成分を加えることで、お高めでも売れる究極の豆腐が生み出されていたのだ。         【工場fan編集局】

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