【トロロッソ山本尚貴】ついにF1初ドライブ「尋常じゃないパワー。これを言葉にするのは難しい」改めて見えた山本らしさとスタイル

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 F1日本GP鈴鹿の金曜最初の練習走行(FP1)で、日本人として2014年の小林可夢偉以来のF1マシンの走行を果たしたトロロッソ・ホンダの山本尚貴。30周を計測してリザルトは17番手ながら、チームメイトのダニール・クビアトは16番手でふたりの差はわずかコンマ1秒。走行直後の山本尚貴はたくさんの汗を流しながら、メディアの会見に応えたが、その第一声は感謝の言葉だった。

「終わった直後で、こんなに近くで多くのメディアの方が集まって頂いて圧倒されています(苦笑)。F1を実戦で経験していないなかで、できるだけの準備はしてきましたけど、自分の力と自分の準備が本当に十分なのかどうか、正直、不安なところがあったんですけど、本当にトロロッソ、ホンダのPU(パワーユニット)のSakuraのメンバーのみなさんが僕を助けてくれたので、大きなミスもなく走ることができました」

「ポジションは残念ながら下位に沈んでしまい、ダニールに比べても負けてはしまいましたけど、いいパフォーマンスをほんの少しだけ示すことができたので、それはこれまでの準備とみなさんが助けてくれたお陰だと思っています。F1マシンをドライブする最初の一歩を楽しむことができて、みなさんに感謝しています」

 超大型の台風19号による影響で、土曜日のセッションがすべてキャンセルになってしまった今年のF1日本GP鈴鹿。金曜の午後はウェットコンディションが予想され、予選、決勝を1DAYで行う日曜日は天候が急回復の予定でドライコンディションで行われる見込みとなっている。

 つまり、日曜日の予選前に走れるドライコンディションはこのFP1のセッションだけになる可能性が高い。その大事なドライのFP1でトロロッソがチームとしてのメニューを普通に山本尚貴に託していることが、まずはチームの山本への大きな信頼のひとつと言える。

「メニューは自分のF1マシンの習熟も兼ねての走行がありましたけど、もちろんチームが用意しているプログラムに沿って進めました。基本的な新しいエアロパーツや新しいトライはダニールが担当して、僕は本当にスタンダードなクルマで走りました」と、走行内容を話す山本。

 その山本とクビアトは、前半は山本がミディアムタイヤでクビアトはソフト、セッション後半は山本がソフトでクビアトはミディアムと、タイヤの選択を分けてそれぞれのメニューをこなした。

「その結果、何ができるかというと、新しいエアロセットのダニールと僕のベースセットのクルマの比較で、どこが改善されているかが示されることが僕の今回の一番の仕事だったので、そういう意味では5秒も10秒も遅いドライバーのデータはまったく当てにならないので、ドライバー的にはコンマ1秒負けてしまったんですけど、最終的に同じくらいのタイムで走ることができたというのは僕のデータを少し有効に使ってもらえるのかなと思っています。そういう意味でも、FP1の自分の仕事はまずまず、合格点を与えていいのかなとは思っています」

 初めてのF1マシンの実走の山本の率直な感想は、F1マシン&PUのパワーと、車体の軽さだった。

「尋常じゃないパワーですね。これを言葉にするのは難しい。ロケットに乗っているみたい、と言っても僕、ロケットに乗ったことないですけど(笑)。だけど本当にジェットエンジンを積んでいるみたいな」

「こんなパワーのなかでF1ドライバーはみんなレースをしているのかと思うと本当にF1ドライバーに対する尊敬の念が湧いてきましたし、このマシンをイチから作り上げたトロロッソ、そして最初はかなり苦労していたと思うんですけど、ここまで戦えるPUを作って、初めて乗ったドライバーでも扱いやすいPUを用意してくれたホンダの努力を改めて感じました」

 ベストタイムは、セッション後半にソフトタイヤを履いた山本が16周目、ソフトタイヤを装着してアウトラップの直後にマークした1分32秒018。クビアトは13周目、ソフトタイヤでマークした1分31秒920。クビアトのソフトタイヤの状況は今は定かではなく、燃料搭載量も不明で、クビアトは山本と異なる新しいエアロパッケージでの走行のため、正確なパフォーマンス差はチームしか把握はできない。

■F1日本GP鈴鹿、トロロッソ・ホンダでF1初ドライブを果たした山本尚貴に対する評価と山本らしさ

「評価は僕がすることではなくて評価すべき人たち、チームでありホンダであり、レッドブルが評価をすることなので、僕が満足したとしても、周りが満足できなければレーサーとしてはダメ。いい評価をして頂ければそればすごく幸せなことですけど、いずれにしても大きなミスをすることなく、自分の仕事を落ち着いてこなすことができた」と、初走行を振り返る山本尚貴。

 そのチーム、ホンダ側としては、走行直後のホンダ山本雅史F1マネージングディレクターは「F1の実走が初めてのなかでミディアムとソフト、それぞれのフィードバックが的確だったし、FP2に走る(ピエール)ガスリーにつながる内容だった。良かったと思います」と話し、FP1直後の会見に出席した田辺豊治テクニカルディレクターも「グッドジョブ」と評価。トロロッソのフランツ・トスト代表も走行直後のテレビのインタビューで好感触を得たことを話していることからも、今回の山本尚貴の走りはチーム内部でも高かったことが伺える。

 走行直後の短い会見の最後に山本尚貴が語った最後の言葉もまた、山本らしいコメントだった。

「F1は今まで憧れの舞台でしたけど、ものすごく身近に感じることができましたし、もっともっとF1を知りたいなと思いました。より速いマシンをコントロールする技術が自分の中に芽生えたということは、スーパーフォーミュラ、スーパーGT、F1以外のカテゴリーのどのマシンに乗ったとしても非常に有効な経験になると思います。なにより、本当に初めて乗るマシンに対して、ここまで努力を重ねてきたことは、やっぱり裏切らなかったなと思います。改めて努力することの大切さを感じました」

「FP1の走行でしたけど、観客のみなさんが各スタンドで旗を振ってくれたり、手を振ったりしてくれたのが特に最終ラップのインラップの時に見えたので、本当に感動的な瞬間でした。まだまだこれから続くレース人生に向けて、もっともっと努力していきたいなと思いました」

 走行後には多くの関係者から握手や抱擁を受けた山本尚貴。たくさんの汗を流しながら、F1初走行について会見でも笑顔が耐えなかった。単なる思い出作りではなく、今回の走行の経験は山本尚貴というドライバーにとって、そして日本のモータスポーツにとって今後、大きな意味と可能性を生むに違いない。

トロロッソ・ホンダで30周鈴鹿を走行した山本尚貴
チームメイトのダニール・クビアトとはコンマ1秒差。F1の世界でも普通に戦えることを証明した
2019年F1第17戦日本GP フリー走行1回目で17番手タイムをマークした山本尚貴(トロロッソ・ホンダ)