テーマ ◆ 目のトラブルの予防とケア(後編)

青色光・紫外線と目の健康 40歳になったら眼科で検査

Q.「青色光(ブルーライト)」は目に悪いのでしょうか?

A.

これについては以前から議論がありますが、ブルーライトが人間の目の組織や視力に悪影響を与えるかどうかは、まだ分かっていません。今後一層の研究が進むと思われますが、米国眼科学会はこれまでの研究結果などから、ブルーライトは、目にはまず問題ないだろうとの見解を出しています。

ブルーライトとは、バックライトに発光ダイオード(LED)を使うスマートフォン(スマホ)やタブレット、パソコンの画面などから出る光のことで、太陽光にも含まれます。

太陽光の中でも、紫外線が網膜にダメージを与えることはよく知られています。ブルーライトは波長やエネルギーの強さの点で紫外線に近く、一部研究者の間では、紫外線と同じように目への影響を危ぶむ意見があることは事実です。また、動物実験や細胞レベルでは、ブルーライトの目への悪影響を示唆する研究結果も報告されています。しかし、研究データの蓄積はまだ不十分で、実際に人間の目への影響が確かめられたわけではありません。

Q. ブルーライトが人の「体内時計」を狂わせるとは、どういうことですか?

A.

お話ししたように、ブルーライトは目への悪影響はないと考えられていますが、浴び方によっては体内時計に遅れが生じ、入眠が難しくなることが分かっています。

日中に心と体が活動状態になり、夜になると自然に眠くなるのは、体に体内時計が備わっているからです。ところが、就寝前の数時間にスマホやタブレット画面を見てブルーライトを浴びると、まだ日中であると体が勘違いし、体内時計の働きが乱れてしまいます。眠気を起こすホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられ、なかなか眠れなくなり、翌朝の目覚めも悪くなります。寝不足は集中力を低下させるだけでなく、体にさまざまな影響を及ぼします。

体の健康を考えると、就寝前はスマホやタブレットなどを使用しないこと、どうしても使わなければいけない場合は、ブルーライトをカットするフィルターやメガネを用いることをお勧めします。

最近のスマホはブルーライトをカットする「夜間モード」を設定できる機種もありますが、この機能も、もともと体内時計対策として設けられたものだそうです。ただし、夜間モードにしたからといって、ベッドに入ってから長時間スマホやタブレットを操作することは目によくありません。画面を至近距離で見続けることが、近視の原因になるからです。

近年は検査技術が進み、視神経や視野、網膜などの状態を外来で詳細に調べることができ、検査後はすぐに日常生活を再開できる

Q. 目を守るフィルターやメガネについて教えてください。

A.

日中外出するときは、紫外線対策(UVカット)仕様のサングラスの着用をお勧めします。レンズの色の濃さとUVカット率は関係ありません。サングラスを選ぶときは、色の濃さよりもUVカット仕様かどうかに注意してください。

白内障(カメラのレンズに相当する「水晶体」という目の中の透明な組織が白濁する病気)や、その他の目の病気の影響で、夜間運転中に対向車のヘッドライトが気になるなど、光をまぶしく感じることがあります。その場合、レンズに光の影響を制限する仕様を施したメガネで症状を抑えられることがあります。ですが、目に入ってくる光の量が減るので、人によっては周囲が見えにくく、運転が難しくなることもあります。運転中の見え方の低下が気になる人は、原因や対策について、早めに眼科医に相談してください。

Q. 大人は何歳から眼科検診を始めるといいですか?

A.

40歳になったら、一度は眼科で検査を受けることをお勧めします。メガネやコンタクトレンズの処方時に簡単な目と視力の検査を受けますが、それで問題なければ安心というわけではありません。視神経や視野、網膜に異常がないかなど、より詳しい検査が必要です。今は症状がなくても、病気が隠れていることもあります。

40歳になったら詳細な検査を受けて、その結果次第でそれからの検査の頻度を眼科医と相談するといいでしょう。よくある疲れ目やドライアイも、実は深刻な病気の症状かもしれません。分からないことは眼科医に聞いてください。

※来週は霞竜雄先生に心不全について伺います。

アップル眼科 Apple Ophthalmology

遊馬吉右衛門先生=左(Kichiemon Asoma, MD)、林直美先生(Naomi Hayashi, MD)。 眼科医師(board certified ophthalmologist)。 眼科検診と、白内障、緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性症、 ドライアイ、アレルギーなど目の病気と症状の治療、 メガネ、コンタクトレンズの処方、LASIK(視力矯正手術)など。

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