思わぬ「家電火災」を防ぐ!実家の親にも教えてあげたい家電の知識

「家電火災」ってご存知ですか? 電子レンジやエアコン、乾燥機やドライヤーなど、普段何気なく使っている家電が突然発火して、火事や事故を引き起こしてしまうことを言います。

このような「家電火災」は、今後、高齢者世帯数の増加に伴い、さらに増えていくとも言われています。思わぬ事故を防ぐためにも、やはり私たち使用する側の知識や注意がとても大切です。

特にどのような点に注意しておくべきなのか? 「取扱説明書の正しい読み方」や「コンセントの事故」から「電子レンジ発火時にやってはいけないこと」まで、いざという時のために知っておくべき家電の知識やポイントをお話します。


取扱説明書は前からではなく、後ろから読むのが正しい?

まずは思わぬ事故・故障を防ぐためにも、取扱説明書をしっかり読んでおくことをおすすめします。取扱説明書は前方ページに主な使い方や機能、後方ページには「故障かな?」「こんなときには…」など、お困りのときに確認して欲しいことや、「お手入れ」「定期的なメンテナンスの方法」などが書かれているケースがほとんどです。

なので、基本的な操作方法を充分理解している家電や、ゆっくり読む時間がない場合などは、前方のページよりも後方のページから読むことをおすすめします。思わぬ事故・故障を防ぐためにも、時間のあるときにしっかり読んでおくようにしましょう。

実は怖い!コンセントの事故"トラッキング現象"とは?

家電の思わぬ事故のひとつ"トラッキング現象"。電源プラグとコンセントの間から発火するこの現象について、図を交えて、順を追って解説してみましょう。

1.電源プラグとコンセントとのわずかな隙間にホコリが推積します。

2.推積したホコリは空気中の湿気を吸収します。

3.この状態のまま放置すると、電源プラグとコンセントの接続部分はホコリを介して電気が流れることになります。

4.水分を吸収したホコリを介して電気が流れるため、電源プラグの樹脂表面にも電気が走ることとなり、時間をかけながら炭化。炭化が進むと樹脂表面に亀裂等が生じることから、電流の伝わりを断ち切るための絶縁性能が低下します。

5.この状態になると樹脂表面を流れる電流が大きくなり発熱し、発火します。

以上のような絶縁破壊、短絡発火のことを"トラッキング現象"といいます。"トラッキング現象"は非常に怖いもので、鉄骨3階建ての住宅から出火し、2階から3階の約110平方メートルを全焼した実例もあります。

このような事故を防ぐためにも、定期的に電源プラグをコンセントから抜いて、乾いた布でホコリを取り除きましょう。その際、電源プラグの状態を注意して確認してください。もし、変形や変色などが確認できた場合には取り扱いを中止して、必ず電気工事店などに相談してください。

電子レンジが火災を引き起こす原因とは?

電子レンジが火災を引き起こす事故も年々増加しています。電子レンジの機能には手動で加熱する方法と、自動で加熱する方法があります。非常に便利な「自動加熱」ですが、実は電子レンジの各種センサーは100g未満の食品や食材を検知することは一般的には難しいとされていて、誤探知もされやすく、食品や食材によっては加熱時間が長くなり、発煙あるいは発火させてしまう可能性があるのです。

そのような食品や食材を加熱する場合は、必ず「手動加熱」を選択してください。また、ジャガイモやさつま芋などは長時間加熱すると、爆発的な燃焼を起こすことが確認されています。大きさや量に関係なく、手動で加熱しましょう。

さらに、発煙や発火はお手入れ不足が原因の場合もあります。庫内に付着した油や食品などのカスをそのままにしていると思わぬ事故につながるので、日頃からしっかりお手入れするようにしておきましょう。

電子レンジが庫内で発煙した場合

万が一、電子レンジ庫内で発煙した場合に絶対に注意すべきことがあります。それは、決してドアを開けてはいけないということ。焦って、ドアを開けて発火しているものを取り除こうとし、衣類に着火して死亡事故に至った実例があります。

ドアは必ず閉じたままで、まず電源プラグをコンセントから抜いて、すぐに消火器などの消火器具を準備します。そのまま発火に至らなければ、充分に時間をおいてから安全な場所に電子レンジを移動し、メーカーサービスなどに連絡しましょう。

もし発煙で終わらず発火してしまった場合は、用意した消化器具で初期消火活動を行ない、119番通報を行なってください。とにかく発煙と発火に関係なく、かならずドアは閉めたままにしておくこと。これは絶対に覚えておいてください。

トイレにも危険な家電がある?

火災などを最も注意したい家電製品のひとつにトイレの温水洗浄便座があります。温水洗浄便座には一度発火すると消火がしづらいヒーターが使われています。ヒーターの発火の主な原因は"安全使用期間"を超えた使用による経年劣化にあるのですが、その期間を意外と知らずに使っている方が多いのです。

おおよそ1回における温水洗浄便座機能の使用時間は10秒から15秒と言われており、例えば男性2人、女性2人の4人家族の場合、想定安全使用期間は10年とされています。10年以上使っている場合は、買い替えの時期を迎えていると判断しても間違いではありません。便座ぶたを開けると、注意喚起や製造年などが記載された表示ラベルが貼り付けられてるので、確認してみましょう。

また、簡単にできるセルフチェックのポイントがあるので、こちらも併せて参考にしてください。

1.便座にガタツキが確認できる(便座の裏側に据えられているゴム足が欠損している)

2.便座が異常に熱くなる、異常に冷たい(季節で感じ方も異なるが「異常」と感じる)

3.便座にひび割れが確認できる※便座の表裏など目視できる箇所はすべて確認しましょう

4.配線がねじれているor配線カバーに亀裂などが確認できる(被覆内部の銅線が目視できる)

5.配線が熱くなっているor電源プラグの差込部が発熱・変色している ※大量の埃にも注意しましょう

6.アース線が取れかかっている ※取れかかっていると故障や漏電の際に感電するので注意しましょう

7.操作部のパネルなどがめくれている、ひび割れしている※被水に注意しましょう

8.製品本体から水漏れしている ※滴下していなくても、漏れた形跡に注意しましょう

もちろん、これら以外にも異常がないか、しっかりチェックしてください。ガタツキがある部分に段ボールの切れ端を差し込む、ひび割れしている箇所をボンドで固定する、被覆の亀裂箇所にビニールテープを巻いておく、水漏れしている箇所を硬化パテで覆うなど、ついやってしまいがちですが、素人判断で応急処置をすることは御法度です。

意外と知らない、衣類乾燥機やドライヤーの危険性

衣類乾燥機も火災の原因となるケースがありますので注意が必要です。油分の付着した衣類やポリプロピレン繊維の衣類を乾燥機に入れると発煙に至り、最悪の場合は発火し、火災につながります。

注意すべき油分は、美容オイル、食用油、機械油、動物系油など。また、シンナーやガソリンなどが付着したものももちろん厳禁です。

他に、日ごろからよく使われる家電製品としては、ドライヤーも注意すべきでしょう。一般的なドライヤーでも、最大出力で使用する場合の消費電力は1000Wを超える場合もありますので、間違ってもタコ足配線で使用しないでください。

また、ドライヤーの電源コードを束ねた状態で使用したことによる異常発熱からの発火や、ドライヤー本体と電源コードの付け根部分を屈折させたことによる発火、といった実例もあります。電源コードは丁寧に取り扱い、吸込口や吹出口もこまめに掃除するようにしましょう。

火事にならないように気をつけたいこと

まず、家電の分解や、故障している部分を素人判断で応急処置することは絶対にやめましょう。火災や感電、思わぬケガの原因となります。異常な状態や故障に気付いたら、電源プラグをコンセントから抜き、メーカーサービスなどに連絡をしましょう。

調理器具など電熱ヒーターを用いる家電製品は、誤った使用方法やお手入れ不足を原因とする事故も増加しています。可燃物を周囲に置かないこと、使用用途を守ること、使用している最中は製品から目を離さないこと、定期的にお手入れをすること、は鉄則です。

家電はいずれも、発煙から発火に至ると信じられないくらいの速度で燃え上がります。炎を目の前にすると恐怖で動けなくなることも予想されます。そのような最悪の事態にならないためにも、充分に注意して家電を取り扱うことが大切です。

<構成/青山ネムリ>

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