関西鉄道事情の不思議を読み解く~地下鉄で異彩を放つ長堀鶴見緑地線~

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長堀鶴見緑地線という個性的な地下鉄をご存知でしょうか?大阪の東西(門真南~大正間)を結ぶ大阪メトロ7番目の路線ですが、路線名(愛称)だけでなくさまざまな面において異彩を放っているのです。他の路線と比べて何が違うのか、どのような点が個性的なのかといった不思議に迫りたいと思います。

少しだけ長い路線名の秘密

1990年に大阪の鶴見緑地にて開催された「国際花と緑の博覧会」(通称:花博)の会場へのアクセスとして同年に京橋~鶴見緑地間を結ぶ「鶴見緑地線」という路線が開業しました。花博終了後は市民の足として利用され、1996年には京橋~心斎橋が延伸となり、途中長堀通りの下を通るルートになることもあり、路線名も「長堀鶴見緑地線」と延伸と同時に改称されました。

翌年の1997年には心斎橋~大正間、鶴見緑地~門真南間が延伸されて現在に至っているという歴史から、この路線名のルーツを知ることができるのです。

駅ごとにデザインが異なる不思議

駅ごとに異なるデザインという点でも目を楽しませてくれます。最初に開業した京橋~鶴見緑地間の改札正面は花博を意識した壁画があり、駅ごとにオリジナルのデザインとなっています。

また2度目の延伸で建設された大阪ビジネスパーク駅~心斎橋駅は、改札口からホームに至るまでの照明、壁、床といったデザインが異なっており、地下鉄であるにも関わらず車窓からどの駅であるかを特定することが可能です。

このように地下鉄のホームでありながら唯一無二の地下空間が広がっており、駅ごとに個性的な演出が施されています。

コンパクトでカラフルな車両

実際に乗車してみると、写真からも見て取れますが、まず車体全体が一般的な地下鉄よりも少しコンパクトであると感じられるでしょう。これは長堀鶴見緑地線が「リニアメトロ」を導入したためです。

地下鉄建設の工期短縮、需要予測に基づく適正な建設コストといった問題を解決するために開発されたリニアメトロでは、一般的な円筒型のモーター駆動ではなく当時国内では珍しいリニアモーター駆動(現在建設中のリニア新幹線のような浮上走行ではなく車輪で走行する鉄輪式)が採用されました。これにより床下機器が小型化され車両全体がコンパクトになり、トンネル1kmあたりの建設費を地下鉄御堂筋線の2/3程度に抑制することを可能にしたのです。

また近年では開業から年数が経過したこともあり、更新工事を受けた車両をよく目にするようになりました。

現在はホーム柵が設置されたこともあり、車番とイメージカラーの黄緑色のラインが車両上部に、号車番号もドア横に描かれています。

また更新されたタイミングによっては黄緑色と緑色、黄緑色とピンク色といったカラーバリエーションが増えたとこもあり、カラフルな車両が走るようになりました。

実は黄緑色とオレンジ色の車両も存在しますが、この車両だけは形が少し異なっています。それもそのはず、この車両は元今里筋線80系車両であり、のちに長堀鶴見緑地線へ転用するために改造された車両です。長堀鶴見緑地線の70系車両では行先案内のLEDが車両前後に設置されていますが、80系車両ではドア上部に設置されている点など、車内からも確認することができます。

ワンマン運転とATO制御の導入

近年では千日前線など他の地下鉄路線でも採用されていますが、長堀鶴見緑地線では京橋~心斎橋間延伸と同年の1996年から大阪の地下鉄(ニュートラムを除く)では初のワンマン運転となり、またATO(自動列車制御装置)での運転としても長堀鶴見緑地線が先駆けとなりました。

ホーム柵においても、オーバーランしたときに乗降が難しいドア幅ですが、自動制御によって停止位置での停車が容易であることが見て取れます。

さいごに

長堀鶴見緑地線はまだ比較的新しい路線ということもあり、地下鉄民営化前に大阪市から発表された「平成29年度自動車運送事業会計・高速鉄道事業会計の決算概要」の路線別の経常収支から赤字であることが見て取れます。

しかしながら京橋、心斎橋といった大阪の主要駅を結び、御堂筋線や中央線、JR大阪環状線といった大動脈との乗り換えが可能であり、利便性の高い路線であることは間違いありません。

そして何よりも個性的な車両、デザイン性の高い駅構内、システマチックな運行システムといった異彩を放つ路線に心を奪われ、また乗車したいという気持ちにさせてくれる路線でもあります。

(写真/記事 田村 聖)