協力行動は“寛容性”から生まれる 協力的社会を築く淡路島のニホンザル

大阪大学の研究グループは、ニホンザルが仲間と協力できることの実証に初めて成功した。

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ニホンザルは一般に、寛容性が非常に低く、順位関係の厳しい社会を形成することが知られる。例えば、魅力的な食べ物があると、順位の高いサルが順位の低いサルを追い払ってそれを独占するため、1頭だけでは遂行不可能な課題を別の個体と協力して達成するといった行動は、ニホンザルでは起こらないと考えられてきた。一方、ニホンザルの寛容性には地域差があることが、近年分かってきた。特に、淡路島に生息する集団は、ニホンザルの中でも特別に高い寛容性を示し、順位の離れたサル同士が食べ物を共有することができるという。これまでの研究から、寛容性の差が協力行動課題の成績に大きな影響を与えることがわかっている。そこで本研究では、寛容性の高い淡路島ニホンザル集団と、寛容性の低い勝山ニホンザル集団で協力行動実験を実施した。実験で用いた課題では、手の届かないところにあるエサを引き寄せるのに、1頭だけがヒモを引っ張るとヒモが抜けてしまう。エサを手に入れるためには、2頭のサルが同時にヒモの両端を引かなければならない。結果、勝山ニホンザル集団では、ケンカが起こり低順位個体が追い払われることでほとんど協力が成立しなかった一方、淡路島ニホンザル集団では、サル同士が協力し、何度も課題を解決することができた。さらにこの集団では、協力するパートナーが近くにいない時には、パートナーが来るまでヒモを引かずに待つことも学習したという。このことから、社会の中で協力行動が起こるためには、寛容性の高さが重要であることがわかった。本成果は、ヒトの協力社会が進化してきた道筋について新たな示唆を与えるとともに、ニホンザル社会の多様なあり方について新たな知見を与えるものでもある。論文情報:

【Primates】High but not low tolerance populations of Japanese macaques solve a novel cooperative task

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