30年3000万円の住宅ローン「繰上げ返済はいつから、貯蓄の何割まわす?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、なるべく早く繰上げ返済をしたいと悩む41歳のパート主婦。いつから、貯蓄の何割を繰上げ返済にまわしたらいいのでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。

住宅ローンは、いつ繰り上げ返済したらいいのでしょうか? 2年半前に4300万円のマンションを購入し、借入額3000万円で返済期間30年の住宅ローンを組みました。残債は2700万円です。はじめの10年間は固定金利0.9%、その後は変動金利になります。

なるべく早く繰上げ返済をしていきたいと考えているのですが、いつ頃、また貯蓄の何割くらいを繰り上げ返済にまわしてもいいものなのでしょうか? アドバイスよろしくお願いします。

<相談者プロフィール>

・女性、41歳、既婚(夫:44歳、会社員)

・子供2人:13歳、10歳

・職業:パート

・居住形態:持ち家(マンション)

・毎月の世帯の手取り金額:54万円

・年間の手取りボーナス額:30~120万円(変動が大きい)

・毎月の世帯の支出目安:約36万円

【支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:6万円

・水道光熱費:1.5万円

・教育費:3万円

・保険料:1.5万円

・通信費:1.6万円

・車両費:なし

・お小遣い:6万円

・その他:4万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:18万円

・現在の貯蓄総額:1000万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:2700万円(住宅ローン)


飯田:住宅ローンの繰り上げ返済を検討中の相談者様。いつ、どれくらい返済したら良いのかをお悩み中のご様子です。相談者の場合、ベストなタイミングはいつか? いくらまで返済にまわして良いのかを考えてみたいと思います。

繰上げ返済の前に、まずはライフプランを明確にする

変動金利が始まる前にできるだけ多く返済しておきたいというのは、とても良い心がけですね。また毎月の支出にもほとんど無駄が見られず、真剣に家計を運営されていらっしゃる様子が見て取れ、大変ご立派だと思います。

相談者様の場合、現状の支出に無駄が見て取れないことから、これからの支出も明確にしておくことで家計管理がしやすくなると思います。

そこで考えておくべきことは、大きな出費となる子供の教育費についてです。

しっかり者の相談者様のことですから、ある程度予測して計画されていらっしゃるかと思いますが、お子様の進路によってかかる費用は変わってきます。上のお子様はすでに中学生ですし、下のお子様も10歳です。具体的なことは分からなくても、どのような勉強をしたいのか? 将来、何になりたいのか? 等も家族で話し合うことをおすすめします。

子供ひとりにかかる教育費は1000万円?

子供の教育費や大学の入在学費用に関する調査(※)をもとに算出したデータによると、幼稚園から公立で大学から私立文系に進学した場合の子供にかかる教育費は1000万円強です。

ただし、これは一般的な数字です。進学先によってコストも変わってきますので、より具体的に進学先を決めていき、実際にかかる費用はどれくらいになるのかを知っておくと、後々役立ちます。その他、塾代や部活関連の費用も見込んでおくと安心ですね。

具体的な費用が分かったら、どれくらい返済に回してもOKかを考えていきましょう。

※文部科学省の「平成28年度 子供の学習費調査」「私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果」、独立行政法人日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査」を参照

教育費を加味した上で、繰り上げ返済に回していいお金はいくら?

例のように、お子様が公立小学校から私大文系に進学した場合の教育費は、二人分で約1500万円です。

相談者様の現在の預貯金額は1000万円(投資分含まず)。毎月18万円貯められていますので、この状態をキープしていけたなら、下のお子様が大学を卒業する12年後までに預貯金はプラス2592万円の、3592万円となります。

毎月の貯蓄額18万円×12ヵ月=216万円

下の子が大学卒業するまであと12年

年間の貯蓄額216万円×12年=2592万円

現預貯金額1000万円+2592万円=3592万円

単純計算では、預貯金のみで子供の学費を支払うことができる計算です。

しかしながら、これはあくまでも例のように進学し、かつ突発的な出来事等は何も加味されていない状態です。人生はどのようなことが起こるのか、誰にも分かりません。

試算上では手元の預貯金を全額繰り上げ返済に回しても問題はないのですが、1000万円すべてを返済に回すのはリスクが伴います。生命保険には加入しているようですが、万一を想定して世帯月収の6ヵ月分は手元に置いておくようにしましょう。

相談者様の場合、毎月の手取り額54万円×6ヵ月=324万円なのですが、毎月の支出額は36万円×6ヵ月=216万円となっています。支出が抑えられているので、毎月の手取り額6ヵ月分よりもすこし少ない300万円を手元に残し、700万円を繰り上げ返済に回すというプランをご提案させていただきたいと思います。

いつ返済する?手数料の確認を忘れずに

ご存知かと思いますが、繰り上げ返済は早いほど効果があります。700万円と提案させていただいていますが、不安であれば、もう少し減らして返済しても構いませんが、できるだけ早いタイミングで返済することをおすすめします。

不安を感じると、まとまったお金があるにもかかわらず、様子を見ながら何回かに分けて繰り上げ返済する人がいます。繰り上げ返済をする場合に手数料がかかるような場合には、分ければ分けるほど、本来享受できる繰り上げ返済のメリットが薄れてしまいます。手数料の有無は、あらかじめ確認しておきましょう。

ライフプランは定期的に見直しを

ライフプランを一度立てると、それに安心してしまいそのままになってしまう人が多く見られます。ぜひ、定期的に見直しをして、プランに無理がないか? 無駄なことがないか? 確認してください。

相談者様の場合、お子様がまだ小学生と中学生ですので、家族旅行についても計画を立ておき、そのための費用を準備しておくことお忘れなく。相談の支出内容からは読み取れなかったのですが、加入している生命保険も定期的に見直すことをおすすめします。

住宅ローンを組んでいる場合、同時に団体信用生命保険に加入しているかと思います。住宅ローン残高と生命保険金は連動しています。他に加入している保険金額は適正かどうか、見直しましょう。

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