日本代表ハーフ、田中史朗選手 スコット戦で光った技術と経験 ラグビーW杯に懸ける想い

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W杯開幕戦で後半から出場した田中(9月20日、東京都調布市・味の素スタジアム)

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で史上初の8強入りを狙う日本が13日、横浜市の日産スタジアムで、1次リーグA組突破を懸けてスコットランドと対戦した。控えに回っていたSH田中史朗(キヤノン、伏見工高―京産大出)が後半に途中出場し、大一番で輝きを放った。

 初戦から4戦連続出場となった田中。「日本のために命を懸けられるのは、この大会しかない。ラグビー人生を懸けて皆さんに何かを残せればと思っている」。3大会連続となる大舞台で34歳のベテランは燃え尽きる覚悟で語っていた。

 最後のW杯だと心に決めている。代表31人の顔ぶれが伝えられたのは8月28日。合宿最終日で名前が順に読み上げられ、スクラムハーフは「茂野、流……」と続いた後に少し、間があったという。落選も覚悟していた田中は「ああ、もう終わったんだな」と思った。「フミ(史朗)」と呼ばれると涙があふれた。

 ラグビーへの思いは洛南中時代から変わらない。ラグビー部顧問だった佐々木祥晴さん(57)=神川中校長=は、グラウンドに真っ先に飛び出してボールを蹴っていた姿を思い出す。大会が近づくと頭を丸刈りにし、目が合うと照れたような笑みを浮かべていた。「この子、ほんまにラグビーが好きなんやな」と感じていた。

 伏見工高(現京都工学院高)から京産大を経て日本代表となり、世界最高峰リーグのスーパーラグビー(SR)でも活躍。忙しい合間を縫って力を注ぐのがラグビー教室など子どもへの指導だ。母校を訪れるときは、練習着やグッズなどをプレゼントする。佐々木さんは「いつも笑顔で教えてくれる。楽しそうな姿は中学生のときと同じ」とほほ笑む。

 地元大会の開幕戦として大きな重圧が掛かった9月20日のロシア戦は後半20分から途中出場した。大観衆の中でも届く大きな声を意識し、FWに積極的に声をかけて鼓舞するなど、ベテランらしさを発揮した。「勝って結果を残さないと(全敗した)2011年W杯のようになる」との強い危機感が勝利を支えた。

 日本代表が目標にするベスト8入りの先に、期待するものがある。「サッカーや野球ぐらいメジャーなスポーツになってほしい。子どもたちの未来が広がり、世界への扉はもっともっと広がるんじゃないか」。身長166センチの小柄な体でも世界で戦えることを忘れないでほしい―。次代を担う子どもたちへのメッセージをプレーに込め、最後のW杯を戦い抜くつもりだ。