島の5色で網を編む アートプロジェクト「そらあみ」 島民ら力を合わせ作業 五島・奈留

1人で黙々と網を編んだり、手を止めて知人と世間話を楽しんだり。参加者は思い思いのペースで作業している=五島市奈留町、泊集会所

 網は人を寄せる-。長崎県五島市の奈留島で、島民たちが力を合わせて漁網を編むアートプロジェクト「そらあみ」が進んでいる。透明度の高い海の「緑」や教会の「白」など、島にある特徴的な5種類の色に染めた糸で編み込んでいて、高さ4.5メートル、幅15メートルほどの作品が完成する予定。22日から、島内随一の景勝地「千畳敷」に掲げる。
 プロジェクトを主宰するのは千葉県のアーティスト、五十嵐靖晃さん(41)。2011年以降、東日本大震災で被災した岩手県釜石市の仮設団地や、瀬戸内海の離島、ブラジルのビーチなど国内外の十数カ所で同様のアートに取り組んできた。今回は、文化活動で離島活性化を図る本県の事業「長崎しまの芸術祭」の一環で実施する。
 五十嵐さんによると、網の制作技術は太古から受け継がれ、基本的な編み方は世界各地で同じ「共通言語」。今では多くが機械化されているが、かつては日本の漁師町でも漁に出られない時に漁師や家族が集まり手作業で編んだ。五十嵐さんは「網を作る場には自然と人が集まり、豊かな時間が流れる。編む作業を通じて、島民同士や島外から来た人との間に会話や新たなつながりが生まれれば」と作品の意図を語る。
 制作期間は19日までの15日間。島内各地の集会所や海岸を巡回しながら、近隣住民にボランティアで編んでもらっている。12日午前は、奈留港ターミナル近くの泊集会所で住民5、6人が参加。「網針」と呼ばれる道具を手に、1人で黙々と編んだり、手を止めて知り合いと世間話をしたりしながら思い思いのペースで編み進めていた。
 今後は▽16日・大串江上集会所▽17日・夏井集会所▽18日・東風泊集会所▽19日・椿原集落の海岸-で、いずれも午前9時~午後5時(正午~午後2時は休憩)に制作。22日午前11時半に千畳敷で完成式がある。五十嵐さんは「完成した網を通して島を見ると、いつもと違う景色が見えると思う。この作品を、自分たちが暮らす島を見詰め直すきっかけにしてほしい」と話している。

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