高校3年間でかかる教育費用を徹底解説! 親の収入で変わる支援制度

国などの教育に対する支援制度も随時変更があり、令和2年度は私立高校に通う生徒を対象とする、高等学校等就学支援金の引き上げが予定されています。

既に高校生のいるご家庭、または、これから子どもの進路として私立高校も視野に入れたいというご家庭のために、高校生にかかる教育費やぜひ知っておきたい支援制度についてお伝えします。


高校生の教育費はいくらかかる?

文部科学省のデータ によると、高校3年間にかかる平均の教育費は、公立高校に通う場合は合計で約135.1万円、私立高校なら約311.0万円となっています。私立高校は公立高校の約2.3倍もの費用がかかっていることがわかりますね。

公立高校・私立高校のどちらも、1年生のときの費用が3年間で最も高いです。1年生のときは入学金や制服・教材購入など入学準備のためにまとまった支出があるからです。

図1:高校3年間にかかる平均の教育費

※補助学習費とは、学習塾費・家庭教師費・家庭内学習費などを含む。
資料:文部科学省「2016年度(平成28年度)子供の学習費調査」をもとに執筆者作成

では、内訳を少し細かく見てみましょう。

表1:高校3年間にかかる平均の教育費内訳

※学校教育費とは、学校教育のために各家庭が支出した全経費で、授業料・入学金など学校納付金の他、必要に応じて各家庭が支出する経費(学用品費、クラブ活動費、通学費、通学用品費など)の合計。
※学校外活動費とは、家庭内学習費・家庭教師費・学習塾費など補助学習費とその他の習いごとや活動のため学校外活動費の合計。
資料:文部科学省「2016年度(平成28年度)子供の学習費調査」をもとに執筆者作成

注意しておきたいのは、
・授業料は、ご家庭の年収(税額)
・教科外活動費は、クラブ活動をするかどうか
・通学費は、自宅と学校の距離
・塾代は、塾に行くかどうか
などの事情により、大きく違ってくることです。

(1) 授業料は家庭の年収で大きく違う

平均としては公立高校で2万円台、私立高校で20万円後半台となっていますが、「高等学校等就学支援金」という制度や都道府県による補助を受けているご家庭を含めた平均です。

こういった補助はご家庭の年収により制限があり、受けられる就学支援金の金額に差があります。家庭の年収が制限を超えていれば授業料が全額自己負担になり、平均よりもずっと大きくかかります。

(2)塾代は塾に行くかどうかで大きく違う

高校2年生・3年生になると1年生よりも負担が減っていますが、大学受験をしないため学習塾などの費用が抑えられる生徒を計算に含めているため、平均額が低くなっていることに注意しましょう。大学進学を希望し学習塾に行く場合は、平均よりも補助学習費がかかります。

<学習塾> 大手進学塾 に1年間通う場合、約72万9,000円・入塾金3万円・月額約1万6,000円 ×3科目×12カ月=約57万6,000円・模擬試験 約7,000円 ×3回=約2万1,000円・夏期講習 ・冬期講習 約1万7,000円×3講座×2期=約10万2,000円

大学進学費用の支払いに要注意

大学進学を希望する場合、まず受験自体に費用がかかります。受験料が国立大学なら1万7,000円 、私立大学なら約3万5,000円程度。受験地によって交通費・宿泊費もかかります。大学合格後はすぐに入学金・授業料の半年分・施設設備費などを払うことになります 。遠方の大学に通うなら、1人暮らしの準備も必要ですね。

もちろん大学進学後の費用についても知っておきましょう。国公立か私立か、文系か理系か、自宅から通えるかなど、進路によってまた変わってきます。

(単位:円)

資料:文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」 および「私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」 をもとに執筆者作成

高校生のいる家庭への支援制度は?
既に見たとおり、公立高校でも3年間で平均して約135.1万円の費用がかかります。高校生のいるご家庭の負担を軽くするため、国による「高等学校等就学支援金」という名称の授業料支援の制度があります。ただし、年収が多いご家庭(目安として年収910万円以上の場合)は対象にはなりません。 また、就学支援金は学校が生徒本人に代わって受け取り、授業料に充てるもので、生徒や保護者が直接受け取るものではありません。

(1)公立高校の場合
公立高校授業料相当額として一律年11万8,800円(月額9,900円)が支給されます。

(2)私立高校の場合
私立高校に通う場合、公立高校よりも授業料や学校にかかる費用が高いぶん、就学支援金も加算されています。ご家庭の年収に応じて支給額は変わり、授業料のうち最大で29万7,000円が就学支援金でまかなわれ、残りはご家庭での負担となります。

就学支援金は授業料に対する補助であって、授業料以外の制服や学用品、入学金など学校に必要な費用は、就学支援金からの補助はありません。ただし、住民税所得割額が非課税、もしくは生活保護受給世帯などの低所得世帯向けに、授業料以外の部分での援助をする「高校生等奨学給付金」などがあります 。

都道府県ごとの支援も確認しよう

都道府県では、国の制度である就学支援金に上乗せして、授業料の補助により家庭の負担軽減を図っています。 都道府県ごとに対象や金額が違い、例えば、兵庫県では国の支援金に県の補助を上乗せして上限が39万7,000円 です。これに対して、大阪府では府内私立高校の授業料平均に合わせて、上限は58万円となっています。

図2:兵庫県での私立高校授業料補助

※年収目安は、両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合をモデル世帯としている。
資料:兵庫県「私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度」をもとに執筆者作成

支援を受けられるか判定の基準は?

このように、高校生のいるご家庭には、高等学校等就学支援金、私立高校の場合の加算支給、都道府県ごとの補助があります。利用できるかどうか、また支給額がいくらになるかは、ご家庭の年収で毎年判定されます。 判定の基準は、親権者全員の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額。これが50万7,000円以上(2019年6月分までは市町村民税所得割額が30万4,200円以上)だと国の就学支援金は受けられません 。

年収目安は、あくまでモデル世帯によるもの です。父と母が共働きなら2人の税額を合算して判断されます。また、税額は会社にお勤めか自営業か、家族構成などでかなり変わってきます。勤務先から6月頃に配布される住民税の決定通知書 などで、税額を一度確認してみてください。

私立高校の就学支援金が引き上げ予定

2020年4月から国の就学支援金は、年収目安が約590万円未満世帯の生徒に対し、私立高校の平均授業料を勘案した水準まで引き上げられる予定です 。

この国の制度の改正を受けて、都道府県ごとの補助も変更される可能性がありますので、最新の情報に目を配っておきましょう。

我が家の場合はどう?

高校3年間で教育費は、ご家庭の事情によって大きく差が出てきます。兵庫県内にある私立高校から私立大学文系への進学を希望する例で考えてみましょう。

住民税の決定通知書 で父と母の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が25万円と確認できれば、就学支援金と県の補助が合わせて23万2,200円とわかります。年間授業料が約55万円 とすると、自己負担額は約32万円。ただし、2020年度からの就学支援金制度の変更により授業料の負担が少なくなると予想されます。

もっとも、大学受験のため大手進学塾に約72万9,000円かけて1年間通うと、学習塾費を含む補助学習費の平均を40万円以上、上回ります。滑り止めを含めて3校受験して検定料が1校3万5,000円 ×3校=10万5,000円。さらに、志望大学に合格した場合、高校3年3月中に入学時納付金約70万3,000円 を支払えるよう準備しなければなりません。

私立高校は公立高校よりも全体に教育費は高くなります。制度のみに頼らず計画的に準備をすることも大切ですが、支援制度を利用して少しでも進路の選択肢を広げられるよう、学校やお住まいの自治体に問い合わせをして最新の情報をキャッチしておきましょう。

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