ナガサキギボウシ、クローン化成功! アジア最大級「サイエンスキャッスル」出場へ

 長崎県立長崎南高2年の八幡紗矢さん(17)らが、植物のクローンを簡単に作る方法を開発。絶滅危惧種「ナガサキギボウシ」(ユリ科)のクローン苗を作り出すことに成功した。この研究を引っ提げ、11月に開かれる中高生を対象にしたアジア最大級の学会「サイエンスキャッスル シンガポール大会」に出場する。

簡単な組織培養法で植物のクローン苗ができる過程(同校提供の資料より)

 長崎南高は文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校。生徒は日頃からさまざまな研究に取り組んでいる。今回の研究は、2016年度から土橋敬一教諭の指導の下で生徒が代々取り組んでいたものを、八幡さんらが継承、発展させた。
 「組織培養」と呼ばれる高校の教科書にも理論が載る技術を、誰でも簡単に実践できるよう方法を開発したもの。作業を無菌状態で行う必要があるため、従来は高価な器具や薬品を備えた専門機関でしか行えなかった。しかし、段ボール箱やビニール袋、100円ショップの除菌スプレーなど身近な材料で、無菌状態を実現した。
 その無菌の環境下、花弁や茎など植物の一部を、成長を促すホルモンなどと共に試験管の培養地に植え付け。するとカルスと呼ばれる細胞が出現(カルス化)し、それが芽や根に分化、クローン苗ができる。同校ではこの方法を学んだ生徒が、次々に校内の植物で実験してきた。

簡単な組織培養法でナガサキギボウシのクローン苗(手前)を作り出した八幡さん=長崎市上小島4丁目、長崎南高

 八幡さんは中学3年の時に同校であったセミナーでこの研究を知り、刺激を受けたという。入学間もない昨年5月から、先輩が成し遂げられなかった希少なナガサキギボウシの培養に挑戦。成功の鍵を握るとされる「投与する2種の植物ホルモンの濃度」を特定し、クローン苗を作り出すことに成功した。
 また、この簡単な方法と、高価な器具を必要とする従来の方法の成功率などを比較する実験も実施。簡単な方法で98%の成功率があることが分かってきたため、誰でも応用できるとして県内外の高校などで普及活動にも取り組んでいる。八幡さんは「絶滅危惧種を緊急避難的に保護し、救う方法として有効。もっと広めたい」と語る。
 昨年のSSH全国大会では、生物部門2位となる奨励賞を受賞した。世界に広めようと今回、サイエンスキャッスルに応募。英語の論文審査を経て、日本に2枠しか与えられないステージ発表の出場権を獲得した。
 八幡さんは「サイエンスキャッスルの発表やワークショップで、世界の多くの高校生と地球規模の問題を考え、交流を深めたい。今後は動物の細胞培養に挑戦したい」と目を輝かせる。

© 株式会社長崎新聞社