SBKアルゼンチン:王者レイが2勝飾る。レース1では路面状況の悪さを理由に清成を含む6名が参戦せず

 スーパーバイク世界選手権(SBK)第12戦アルゼンチンがサーキット・サンファン・ビリクムで行われ、レース1はアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が優勝。スーパーポール・レースとレース2ではジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が連勝を飾った。

 スーパーポールでは、バウティスタがポールポジションを獲得。マイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)が2番手、前戦フランスで年間チャンピオンを決めたレイが3番手に並んだ。

 第12戦アルゼンチンは、初日からサーキット・サンファン・ビリクムの汚れによる路面状況の悪さが指摘されていた。モリワキ-アルティア・ホンダ・チームの清成龍一とレオン・キャミア、GRTヤマハ・ワールドSBKのマルコ・メランドリとサンドロ・コルテセ、チャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)、ユージン・ラバティ(チーム・ゴーイレブン)の6名が、こうした路面状況を理由にレース1の参戦をキャンセルしている。また、スーパーポールで転倒し、左手を負傷したロリス・バズ(テンケイト・レーシング)もレース1を欠場した。

■レース1:バウティスタがトップを守って最後は独走優勝。レイは2位フィニッシュ

 レース1は気温31度、路面温度45度のドライコンディションで行われた。上記のように7名のライダーがレースを欠場したため、実際にグリッド上に並んだのは12名のライダーだ。好スタートを切ったのは、ファン・デル・マークで、ホールショットを奪う。しかしそのファン・デル・マークをレイがオーバーテイク。さらにバウティスタがレイを交わすという、オープニングラップから激しいトップ争いが繰り広げられた。

 オープニングラップはトップがバウティスタ、2番手がレイ、3番手がファン・デル・マークで、4番手がトプラク・ラズガットリオグル(ターキッシュ・プセッティレーシング)。ここまでがトップ集団となって、レースをけん引する。

 2周目には、ラズガットリオグルがファン・デル・マークを交わして3番手に浮上。トップのバウティスタと2番手のレイを追う。この周の終盤にはレイがバウティスタに迫り、オーバーテイクを仕掛けようとするシーンもあったが、バウティスタがポジションを守った。トップ集団を形成する4台は僅差のまま、周回を重ねていく。

トップ争いを展開するレイとバウティスタ

 7周目、バックストレートでレイがバウティスタに並びかける。しかしここでもバウティスタがトップを堅守。バウティスタとレイはテール・トゥ・ノーズのトップ争いを展開する。その約0.5秒後方に、3番手のラズガットリオグル。このころになると、4番手のファン・デル・マークは次第にトップ集団から遅れはじめていた。

 トップをキープするバウティスタは、10周目にはファステストラップを記録。このあたりから、3番手のラズガットリオグルがトップ争いから脱落する。さらにバウティスタはその翌周11周目にもファステストを叩き出し、2番手のレイは次第にバウティスタに水を開けられていった。

 12周目以降には、バウティスタは完全に独走態勢を築いた。バウティスタはそのままトップを守り切り、第10戦ポルトガルのレース2以来の優勝を飾った。中盤以降、バウティスタに差を広げられたレイは、残り3周でラズガットリオグルに迫られた。しかしそのポジションを明け渡すことなく2位でフィニッシュ。3位はラズガットリオグルが獲得している。

 4位はファン・デル・マークで、アレックス・ロウズ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)とレオン・ハスラム(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)によって争われた5位はロウズが制し、6位にハスラムが入った。

 路面状況が懸念されるなかで行われたレース1であったが、結果的に転倒者はゼロ。12名のライダーすべてが完走を果たした。

■SBK第12戦アルゼンチン レース1順位結果(21周)

Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap

1 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 35’38.957

2 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 1.562

3 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 3.327

4 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 16.996

5 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 22.535

6 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 25.840

7 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 31.928

8 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 41.819

9 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 46.835

10 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 1’03.500

11 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 1’13.699

12 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 3 Laps

NS 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) スタートせず

NS 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) スタートせず

NS 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) スタートせず

NS 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) スタートせず

NS 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) スタートせず

NS 2 L.キャミア モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) スタートせず

■スーパーポール・レース:全19名のライダーが参戦。レイが独走優勝を飾る

 日曜に行われたスーパーポール・レースは、レース1を路面状況の悪さを理由にキャンセルした6名のライダーと、負傷を理由に欠場したバズが参戦。全19名のライダーにより争われることになった。

 気温19度、路面温度32度のドライコンディションで、風がやや強めに吹くなか、スーパーポール・レースが始まった。3番手スタートのレイが好スタートを切って飛び出すが、ホールショットを奪ったのはバウティスタ。しかし7コーナーのブレーキングでレイがバウティスタをオーバーテイク。続くバックストレートの加速でもバウティスタを抑え、トップに立つ。

 トップに立ったレイはファステストを叩き出しながらバウティスタを引き離していく。3周目を終えるころには、バウティスタに対し1秒以上の差を築いた。トップのレイと2番手のバウティスタ、そして3番手に浮上していたラズガットリオグルと2番手のバウティスタとの差も約1秒で、トップ3はそれぞれ単独走行となる。ラズガットリオグルの2秒以上後方には4番手のデイビスがつけていたが、トップ3との差は大きい。

 レイはその後も危なげないレース運びで独走体勢を崩さず、トップでチェッカー。SBK 5連覇チャンピオンたる貫禄を見せた。バウティスタは2位、ラズガットリオグルは3位表彰台を獲得している。

 4位にはデイビス、5位にはロウズが入り、フロントロウスタートのファン・デル・マークはレース1に続きポジションを落として6位。レース1をキャンセルした清成は18位でレースを終えている。

■SBK第12戦アルゼンチン スーパーポール・レース順位結果(10周)

Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap

1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 16’23.270

2 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 2.140

3 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 3.682

4 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 5.549

5 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 8.322

6 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 9.478

7 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 11.393

8 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 15.326

9 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 16.704

10 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 16.933

11 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 19.519

12 2 L.キャミア モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 20.615

13 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 22.785

14 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 25.670

15 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 26.558

16 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 30.148

17 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 42.116

18 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 42.663

RET 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 0 Lap(1周できず)

■レース2:レイが独走で2連勝。追い上げを見せたデイビスが2位

 レース2は気温21度、路面温度37度のドライコンディションで行われた。スーパーポール・レースの結果により、ポールポジションはレイ、2番グリドはバウティスタ、3番グリッドはラズガットリオグルというフロントロウ。

 ホールショットを奪ったのはポールポジションスタートのレイだったが、その後方で1コーナーで激しいブレーキングを見せたのがラズガットリオグル。ラズガットリオグルはバウティスタのインにマシンをねじ込み、2番手に浮上。しかしバウティスタも負けじとそのポジションを奪い返し、レイ、バウティスタ、ラズガットリオグルという、レース1、スーパーポール・レースで表彰台を獲得した3人のライダーがトップ3でオープニングラップを終える。

 バウティスタとラズガットリオグルがポジションを争う間にややその差を広げたレイ。2周目を終えて早くも2番手のバウティスタに対し、1秒以上のアドバンテージを築く。

 独走体勢を築きつつあるレイ。そのレイを、2番手のバウティスタが4周目にファステストをマークしながら追う。しかし5周目にはレイが、バウティスタの追撃を振り切るようにファステストを記録。レイとバウティスタの差は1秒を切るか切らないかというところで推移していく。

 6周目、バウティスタがレイをとらえてトップに浮上する。バウティスタはトップを奪ったものの、レイとはテール・トゥ・ノーズ。ブレーキングではもちろん、ストレートでもその差が大きく開くことはない。

一時トップを奪ったバウティスタ。しかしレイがぴたりとその背中を追う

 8周目、8コーナーでバウティスタがマシンの挙動を乱した一瞬を見逃さず、レイがバウティスタをオーバーテイク。レイが再びトップに浮上した。

 その後方では、3番手争いが激化していた。4番手に浮上したデイビスが、9周目の10コーナーで3番手のラズガットリオグルに仕掛ける。デイビスはラズガットリオグルを交わすと3番手に浮上。さらに2番手を走るチームメイト、バウティスタを追う。その差はみるみる縮まっていき、11周目を迎えるころにはテール・トゥ・ノーズとなった。

 明らかにペースが上がらないバウティスタ。デイビスは11周目の10コーナーでバウティスタをオーバーテイク。バウティスタは3番手に後退し、4番手のラズガットリオグルの追撃を受けることになる。

 13周目、2コーナーでラズガットリオグルがバウティスタをパス。バウティスタはなすすべなく、ポジションを落としていくことになった。

 一方、2番手に浮上したデイビスは、レイを追う。残り周回数は9周、その差は2秒以上。ふたりのペースはほぼ変わらない。その差が2秒を切らないまま、周回数が重ねられていく。

 レイはそのままトップを守り切り、スーパーポール・レースに続くアルゼンチンラウンド2勝目を挙げた。デイビスは、終盤にはレイを追い上げることかなわず、2位フィニッシュ。3位にはラズガットリオグルが入って3レースすべてで表彰台を獲得した。

 4位は終盤にバウティスタを交わしたファン・デル・マーク。バウティスタは中盤以降ペースが上がらず、5位でチェッカーを受けている。清成は17位フィニッシュだった。

清成はスーパーポール・レース、レース2に出走。完走を果たした

 スーパースポーツ世界選手権(WSS)ではジュール・クルーゼル(GMT94 YAMAHA)が優勝。2位はルーカス・マシアス(Kawasaki Puccetti Racing)で3位はイサック・ビニャーレス(Kallio Racing)が獲得した。大久保光(Kawasaki Puccetti Racing)は12位でフィニッシュしている。

 以下、SBK第12戦アルゼンチン レース2の順位結果。

■SBK第12戦アルゼンチン レース2順位結果(21周)

Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap

1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 34’33.478

2 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 5.158

3 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 14.511

4 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 17.046

5 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 17.771

6 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 18.976

7 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 33.901

8 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 35.233

9 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 36.783

10 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 37.478

11 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 44.053

12 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 45.623

13 2 L.キャミア モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 51.082

14 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 1’06.298

15 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 1’10.768

16 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 1’10.937

17 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 1’12.519

RET 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 7 Laps(リタイア)

RET 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 15 Laps(リタイア)

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