巨人坂本勇、中日大野雄… セイバー目線で選出する9月の月間MVP【セ編】

中日・大野雄大(左)と巨人・坂本勇人【写真:福谷佑介, Getty Images】

5年ぶりにリーグ優勝を果たした巨人

 5年ぶりに巨人の優勝で幕を閉じたセ・リーグペナントレース。9月の月間成績は以下の通りです。

阪神 13勝8敗
打率.257 OPS.678 本塁打11 援護率4.54
先発防御率3.87 QS率19.1% 救援防御率1.93

中日 14勝9敗
打率.257 OPS.688 本塁打12 援護率4.23
先発防御率3.09 QS率52.2% 救援防御率2.58

ヤクルト 10勝9敗
打率.243 OPS.734 本塁打21 援護率5.60
先発防御率4.47 QS率26.3% 救援防御率6.78

広島 8勝10敗
打率.261 OPS.725 本塁打18 援護率4.37
先発防御率3.77 QS率50.0% 救援防御率3.70

巨人 9勝13敗
打率.244 OPS.742 本塁打29 援護率3.42
先発防御率4.77 QS率31.8% 救援防御率3.86

DeNA 7勝12敗
打率.246 OPS.755 本塁打28 援護率3.48
先発防御率5.31 QS率15.8% 救援防御率4.38

 9月20日まで借金5で5位だった阪神が残り6試合全てに勝利し3位でフィニッシュ、クライマックスシリーズ出場権を獲得しました。その原動力は月間防御率1.93の救援投手陣でした。

 DeNAは9月上旬に巨人と2.5差まで詰め寄りましたが、先発投手陣が揃って不調に陥り、月間防御率5.31、QS率が15.8%と序盤で打ち込まれてしまいます。結局9月に6試合残していた巨人との直接対決も1勝5敗と大きく負け越し、巨人のマジック2で迎えた9月22日の直接対決で2-3と敗戦し2位でペナントレースを終了します。しかしDeNAとして、そしてシーズン中に10連敗を経験したチームとして初めて2位の座に就きました。

坂本勇がOPSで圧巻の数字を残す

 そんなセ・リーグの月間MVPが10月15日に発表される予定です。

 ここから、セイバーメトリクスの指標による9月の月間MVP選出を試みます。

9月月間MVP セ・リーグ打者部門
坂本勇人(巨人)
OPS1.173 wOBA.491 wRAA12.03
(すべてリーグ1位)

 9月で目立った活躍をしたのは、坂本勇の他、首位打者・最高出塁率のタイトルを獲得した広島の鈴木誠也、そして本塁打・打点の2冠王に輝いたDeNAのネフタリ・ソトです。

坂本勇人
打率.361 26安打 本塁打7 打点11 得点圏打率.267

ネフタリ・ソト
打率.282 20安打 本塁打10 打点22 得点圏打率.333

鈴木誠也
打率.365 23安打 本塁打3 打点23 得点圏打率.385

 ソトは2年連続でシーズン40本塁打以上を記録し、本塁打王のタイトルを獲得しました。昨年の本塁打率は10.15のハイペースでしたが、今季も12.0と12球団1位となっています。鈴木は首位打者を初戴冠です。特に目立ったのは三振数の減少です。昨季は520打席で116三振(三振率4.48)でしたが、今季は612打席で81(三振率7.56)と大きく減少しています。コンタクト率の上昇が打率、出塁率の向上につながったと言えるでしょう。このようにタイトルホルダーとなった2選手の活躍ぶりが目についた9月でしたが、ここでセイバーメトリクスの指標による評価を見てみましょう。

坂本勇人
OPS1.173 出塁率.465 長打率.708 wOBA.491 RC27 12.03

ネフタリ・ソト
OPS1.110 出塁率.378 長打率.732 wOBA.458 RC27 7.60

鈴木誠也
OPS1.087 出塁率.500 長打率.587 wOBA.465 RC27 10.79

 出塁率では鈴木、長打率ではソトが1位ですが、出塁率と長打率を足し合わせたOPSでは坂本が1位なのです。また、各プレーの特典価値を累積して算出するwOBA、選手の得点創出能力を測るRC27といったセイバーメトリクスの指標も坂本勇人が1位です。9月も主に2番打者としてチームを牽引し5年ぶりの優勝に導いたキャプテン坂本を9月の月間MVPに推挙いたします。

 これで坂本の通算安打数は1884となり、あと116安打で2000本安打です。来年のオリンピック休止前までに達成すれば榎本喜八の持つ最年少2000本安打の記録更新にもなりますが、シーズン終盤に腰痛を患った模様。日本シリーズ終了後もプレミア12に出場が予定されています。来季も同じペースで安打を量産できるかどうかに注目しましょう。

9月月間MVP セ・リーグ投手部門
大野雄大(中日)
 登板5 2勝1敗 1完封(ノーヒットノーラン)
FIP2.16 RSAA7.23 K/BB7.75
防御率2.04 WHIP0.59 奪三振率7.90 QS率80% 

 公式の月間MVPの有力候補は以下の3人と考えられます。

大野雄大
登板5 2勝1敗 防御率2.04 奪三振31 奪三振率7.9 被打率.140

西勇輝
登板4 4勝0敗 防御率1.93 奪三振12 奪三振率3.86 被打率.250

山口俊
登板4 3勝0敗 防御率3.33 奪三振28 奪三振率9.33 被打率.176

阪神の西は4登板で4勝、月間防御率1.93をマーク

 西は今月4登板すべてで勝利投手となり月間防御率1.93もリーグ1位です。これだけ見れば西が月間MVPの最有力候補ですが、大野は9月14日の阪神戦でノーヒットノーランを記録しています。また9月30日の阪神戦で3回1/3を無失点で抑え、シーズン防御率を2.58とし、最優秀防御率のタイトルも獲得しました。これが選考にどう影響するでしょうか。

 なお、今月3勝の山口俊はシーズン15勝で最多勝、最高勝率、奪三振のタイトルを獲得しました。では、セイバーメトリクスの観点で3投手を評価してみましょう。

大野雄大
FIP2.16 WHIP0.59 QS率80% HQS率40% K/BB7.75 RSAA7.23
被本塁打1

西勇輝
FIP3.73 WHIP1.00 QS率75% HQS率50% K/BB4.00 RSAA0.84
被本塁打2

山口俊
FIP2.60 WHIP1.04 QS率50% HQS率50% K/BB2.33 RSAA4.19
被本塁打0

 大野はノーヒットノーランを達成した試合以外でも、8日のDeNA戦では8回1/3、被安打5、奪三振11の好投を見せるなど、あらゆる指標で好調な数値を残しています。特にK/BBが7.75と出色の成績です。また

(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9

 という計算式によって、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAにおいても、大野はリーグ1位を記録しています。よって9月の月間MVPに大野雄大を推挙いたします。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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