艦船や社会資本のメンテナンス 東洋トラスト特機

佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・14

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航空機整備用の発電機を入念に点検する従業員=佐世保市小佐々町、東洋トラスト特機

 つくっているのは、「ありふれた日常」だ。
 自衛隊や米軍の艦船、陸上施設を中心に、発電機や配電盤など電気機械器具の修理、点検、整備に当たる。下水処理施設や佐々川流域の排水ポンプといった社会資本のメンテナンスにも携わる。「華やかさはないが、ニーズは多い」。取締役会長の迫田澄博氏(68)と代表取締役社長の高倉雅宏氏(61)は言い切る。
 戦後まもなく創立された鶴田電機が前身。主に電機装置などの修理をしてきた。迫田氏は、海上自衛隊を退官し2006年に業務部長として入社した。
 試練が待っていた。
 危機的な経営が発覚。約20人いた従業員に給与を支払えない状況に陥った。迫田氏は金策に奔走するとともに財務、労務、品質管理、安全管理など“不具合”を是正。09年には日本ベネックス(諫早市)と業務提携し、代表取締役社長に就いた。その後、海上自衛隊の後輩だった高倉氏を誘い入れ、二人三脚で会社を再生。16年に高倉氏に経営を委ねた。
 社会は大量生産・大量消費するフロー型から、インフラなどを長持ちさせるストック型に転換した。産業界も付加価値向上のために、これまでの製造主体から、アフターサービスを重視するようになった。
 一方で製造大手は人手不足に伴い、自社製品や産業機械の整備に当たる作業員の確保が課題になっている。こうした要請に応え、海外の機械メーカーと、同社製品のメンテナンスについて提携。自動車部品メーカーなどが所有する産業機械のメンテナンス事業への進出を視野に入れる。
 工場では、従業員が高さ1.5メートルほどの鉄製シリンダーの外経や内径を丁寧に点検、計測していた。船舶に搭載するエンジンの一部。経年劣化した部品と交換される。近くでは航空機整備用の発電機を入念にチェックしていた。
 安全や安心は、目に見えず、「絶対」もない。12年に変更した社名には、「正直たれ」という意味を込めた。「ここにすべてが詰まっている」と迫田氏。一つ一つの地道な作業を積み重ね、地域社会と日本の防衛基盤に「当たり前の明日」をもたらしている。

◎東洋トラスト特機
 佐世保市小佐々町黒石。1950年11月に鶴田電機として創立した。2009年5月に日本ベネックスと業務提携し迫田澄博氏が代表取締役社長に就任。12年5月に社名を東洋トラスト特機に変更した。高倉雅宏代表取締役社長は5代目。従業員は49人(7月現在)。主な取引先は自衛隊、米海軍、長崎県、佐世保市など。

船舶に搭載するエンジンのシリンダーを点検、計測する従業員