「ゴミ油」の噂で平壌市民に広がる食の安全への不安

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最近、平壌市民の間ではこんな噂が流れている。

「平壌で売られている中国製の食用油はゴミから作られている」

こんな噂を耳にした平壌の消費者は、多少高くても東南アジア製の食用油を買っていると、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。ちなみに、中国製は5リットル入りのものが4.5ドル(約480円)から5ドル(約540円)、東南アジア製は6ドル(約640円)で売られている。

国営メディアが、国民の必要としている情報や事件、事故についてほとんど報じない北朝鮮では、情報を知るにおいて口コミが大きな役割を果たしている。当局に都合の悪い情報が口コミで流れれば、極刑をもって対処するなど、権力者もその威力に恐怖を感じるほどだ。こんな噂を流された、市場で油を売っている商人などひとたまりもないだろう。

このような情報がどのような経路をたどって平壌に広がったかは不明だが、全く根も葉もない噂というわけではないようだ。

「北朝鮮の貿易会社が中国から輸入する大豆油は本当に質が悪い」の述べた中国の対北朝鮮情報筋は、廃油を精製して作った油が輸入されていると証言した。

北朝鮮の貿易会社の社長が「薬を使って精製した大豆油を安く買いたい」と中国の業者に持ちかけ、「北朝鮮の人は、料理をする時に油をそんなに多く使わないんで大丈夫だろう」とうそぶいたという。

中国では「地溝油」などと呼ばれる油だが、下水管などにタール状になって溜まっている廃油をすくい上げ、薬品を使って精製したものだ。2000年代に入り、中国メディアは地溝油など、食の安全を脅かす不良食品の問題を大々的に取り上げた。

消費者の意識が高まり、パッケージの内容が怪しかったり、原材料が不確かだったりする食品を避ける傾向が強まっているが、依然として地溝油は製造されているようで、その新たな販路が北朝鮮市場になったということだ。

「朝鮮の貿易業者は、中国から取り寄せた油が質の悪いものであることを知りながら、工場に納品している。業者らは『北朝鮮で製造されたものは食べない』とおおっぴらに言っている」(情報筋)

平壌の消費者の間では、食用油以外の中国製の食品に対しても不信感も高まり、購入を避ける傾向にあるという。また、北朝鮮国内で製造された食品に対しても同様の扱いがなされている。

「北朝鮮のものは純粋だと思っていたが、すべての材料を中国製を使っているので純粋ではない。中国製の材料が入っているソーセージは子どもたちに食べさせない」という女性が増えていると付け加えた。

市場で売られている品物の9割が中国製と言われるほど、中国企業に市場を乗っ取られていた北朝鮮だが、金正恩党委員長の国産品愛用運動を受けて、各国営企業が新たな製品開発に乗り出した。

当初は、評判も悪い上に、生産、流通量が少なく消費者の手に届かない状況だったが、その後徐々に改善、評判も高まっていた。


しかし、北朝鮮の食品会社は、材料のほとんどを中国からの輸入に頼っているのは周知の事実。少しでも懐に余裕がある北朝鮮の消費者は、リスクを犯してでも、韓国製の食品を買い求めることになるだろう。