離脱交渉に「なお大きな溝」とEU高官、イギリスは女王の演説で議会開会へ

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イギリスの欧州連合(EU)離脱期限が迫る中、EU側のミシェル・バルニエ首席交渉官は13日、アイルランドと北アイルランド国境をめぐる関税協議には「なお大きな溝」が残ると述べた。

イギリスとEUは週末にかけてブレグジット(イギリスのEU離脱)協定の交渉を行ったが、バルニエ氏はEU高官への報告で、イギリス側が提案した輸入品の追跡案は受け入れられないと話した。

これに対しイギリス側は、協定妥結に向けてさらに譲歩するつもりだとしている。ボリス・ジョンソン英首相は先に閣僚らに対し、合意成立への「道筋」が見えるものの、合意到達までには「まだ相当な作業」が必要だと話していた。

これを受けて欧州委員会も、「まだまだやらなくてはならないことがたくさんある」と述べた。

イギリスとEUは共に、17-18日のEU首脳会議より前に離脱協定案をまとめたい考え。英政府は、もし協定案がこのタイミングで得られれば、19日にも議会採決にかけたいとしている。

31日午後11時のブレグジット期限までに離脱協定をまとめるには、これが最後のチャンスになると見られている。

こうした中、イギリスでは14日から議会の新たな会期がスタートする。開会日にはエリザベス女王が施政方針演説を読み上げ、ブレグジット後の生活についてや犯罪対策といった政府の施策を発表する予定だ。

アイルランド国境

ジョンソン首相は先に、テリーザ・メイ前政権とEUが取りまとめたEU離脱協定に替わる新協定案を発表。その中で、既存の協定に含まれるアイルランド国境対策「バックストップ条項」の代替案を提示した。

この代替案では、北アイルランドは関税同盟からは離脱するものの、農産品などの一部領域ではEU単一市場にとどまる。また、アイルランド島内に検問所を置くほか、北アイルランド議会にEUのルールに従うかどうかの決定権を委ねるとした。

EUはかねてバックストップ以外の案は受け入れないとしており、この代替案についても難色を示していた。

BBCのアダム・フレミング・ブリュッセル特派員によると、バルニエ首席交渉官は13日の報告で、イギリス側がこの北アイルランド議会の決定権を代替案から削除することで合意したと述べた。

ただ、イギリスはなお、EUのルールから離脱する権限を北アイルランドに与える方策を模索しているという。

一方でバルニエ氏は、北アルランドをイギリスの関税圏にとどめつつ、EUの税関手続きを適用するというジョンソン氏の提案には賛同する方針だ。

しかし、北アイルランドに入ってきた物品について、アイルランドに輸出されるかどうかを追跡するという案は受け入れられないとしている。

フレミング特派員は、EU側はこれまで、EU首脳会議の1週間前までには新たな協定をまとめる必要があるとしていたが、現在は前日の16日まで交渉を続ける用意があるとしており、態度を「軟化」させていると話した。


EU離脱、今後の予定

  • 10月14日:イギリス下院が新たな会期として再開。女王の演説で、政府の法的方針が発表される。下院はその後、この演説の内容を審議する
  • 10月17-18日:イギリスのEU離脱前に行われる最後のEU首脳会議。イギリスとEUはこの日までに離脱協定に合意することを目指している
  • 10月19日:ベン法で定められた離脱協定および合意なしブレグジットの承認期限。どちらも承認されなかった場合、首相は離脱延期をEUに要請することが義務付けられている
  • 10月31日:イギリスのEU離脱期限。現在の法律では、合意のあるなしに関わらず、午後11時(日本時間11月1日午前8時)にEUを離脱することになっている

欧州委員会は週末の離脱交渉について、「多くの課題が残されている」と話している。

声明によると、EUは15日の会合で加盟各国に交渉の進ちょくを報告する予定で、14日にも「技術的な集中協議」を継続する方針。


女王の演説とは?

イギリス議会は開会初日、君主による演説で幕を開ける。演説の内容は政府が策定した施策方針となっている。

ジョンソン首相にとっては就任後初、エリザベス女王にとって65回目となる今回の演説は、「国民の優先事項」に注目した内容になっているという。

女王の演説でジョンソン政権は、EUと離脱協定がまとまった場合に議会で離脱協定法を承認してもらうための施策や、ブレグジット後にEU市民のイギリスへの移動を制限する政策を説明する。

また、「街から武器を減らす」ための政策、「凶悪犯に罪に見合った刑期を科す」施策などを発表する。

このほか、女王の演説に含まれる提案は以下の通り。

  • ポイント制移民システムを2021年から開始
  • 1990年代の鉄道民営化で導入された鉄道サービスのフランチャイズ制度を廃止
  • 患者の安全を改善するため、法的権限を持った国民保健サービス(NHS)の独立調査局を設置
  • 精神疾患による収容人数を減らすため、メンタルヘルス法を改正
  • プラスチックごみや大気汚染の削減、生物多様性や水質の改善に向けた法的拘束力のある目標設定

さらに、建築基準の改善や、インフラおよび科学への投資拡大も発表される見込みだ。

ジョンソン首相はこれらの施策で「イギリスを再始動させる」ことを約束すると述べ、「女王の演説の内容はイギリスの隅々で実施され、この国を再び地球上で最高の国にするだろう」と話した。

一方、間もなく解散総選挙が見込まれていることから、最大野党・労働党からは、女王の演説は「曲芸」で、「保守党の政治的宣伝」に過ぎないと批判の声が出ている。

(英語記事 'Big gap' remains as Brexit deal talks to continue/ Brexit plans centre stage in Queen's Speech