予算は5年で9000億円超、「教育のICT化」で恩恵を受けそうな銘柄は?

9月25~27日の日程でインテックス大阪において開催されていた「【関西】学校・教育総合展」に参加してきました。会場は活気にあふれ、次世代の教育について可能性を感じさせるものでした。

会場には「教育ITソリューションEXPO」「学校施設・サービスEXPO」「STEM教育EXPO」の3つの展示会がされていましたが、ほとんどの展示が教育ICT(情報通信技術)と関連するものであったことが印象に残っています。

今、教育の現場において、劇的な変化が起こりつつあります。これまで教育現場にほとんど導入されていなかったICTの活用が推し進められているのです。

こうした状況になると、関連銘柄のパフォーマンス向上が期待されます。教育分野のICT化で恩恵を受けそうな企業の顔ぶれとはどのようなものなのか、考えてみます。


なぜ「教育のICT化」が喫緊の課題なのか

海外ではすでに情報活用能力を重視した教育がなされており、ICTの導入が進んでいます。そんな中、日本のパソコンやタブレットなどの情報端末を使っている生徒の割合がOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、最も低い水準にあるようです。

このような状況を改善しようと、「学校におけるICT環境の整備について(教育ICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度))」を文部科学省が発表しています。また、2018~2022年度までに単年度1,805億円の地方財政措置を講じる予定。現在、実施2年目にあたり、各都道府県・地町村の教育委員会などでは、対応に追われています。

このICT環境整備の根拠は、学習指導要領の改訂によるものです。学習指導要領では「生きる力」を重要視しており、未来の社会で行き抜くために必要な力を育成しようとしています。

その「生きる力」を育成するために、主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)や情報活用能力の育成、繰り返し学習や習熟度別学習などが取り組まれる予定です。これらの取り組みに重要な役割を果たすとされるのが、ICTと言われています。

この「生きる力」を盛り込んだ新しい学習指導要領が来年度以降に始まる予定です。小学校では2020年度。中学校では2021年度。高等学校では2022年度。間近に迫っていることから、ICTの導入が急がれています。また、2025年度に1人1台の情報端末の利用を目標としていますが、今のペースでは実現が危ぶまれる状況のようです。

大本命は通信関連機器

こうした中で開かれた「【関西】学校・教育総合展」では、「ICT環境の導入」「プログラミング教育」「学校における働き方改革」「英語4技能の活用」「eラーニング教材」「デジタル教科書や電子黒板などの学校設備」などを、数多くの企業が取り上げていました。

また、模擬授業やICT機器を使ったデモンストレーションなども各ブースで開催されており、多くの関係者が注目していたようです。

「ICT環境の導入」については、超高速インターネットと無線LANを2022年度には100%整備することが目標であるために、急速に導入が進むことが見込まれています。パソコンメーカーや情報機器の卸売り企業、無線LAN機器メーカー、セキュリティ関連企業に恩恵がありそうです。

たとえば、情報機器の卸売業を行うダイワボウ(証券コード:3107)や、無線にも強みを持つバッファローを子会社に持つメルコ(6676)、ICT機器や大型ディスプレイを電子黒板化する「てれたっち」という製品を持つアイ・オ・データ機器(6916)、教育に強みがありICT導入支援なども行う内田洋行(8057)などにとって追い風となると思われます。

また、セキュリティにおいては、トレンドマイクロ(4704)、デジタルアーツ(2326)、ソリトンシステムズ(3040)などに注目したいところです。

モビルスーツが教育現場に?

「プログラミング教育」は小学校の学習指導要領の改訂に伴うもので、新日鉄住金ソリューションズ(2327)、LITALICO(6187)など、数多くの企業が参入しています。

注目を集めそうなのが、バンダイナムコホールディングス(7832)が手掛ける「ZEONIC TECHNICS」です。「機動戦士ガンダム」の登場する「ザクⅡ」を用い、組み立てながらロボティックスの基礎やプログラミングが学べる教材で、約10万円で発売を予定しています。ロボットアニメが強い日本ならではの商品で、子供のためと言い訳しつつ大人が購入するといった光景も見られるかもしれません。

「学校における働き方改革」は教職員の長時間労働に対応したもので、特に私学において喫緊の課題となっているようです。これを解消する対策手段として「統合型校務支援システムのための手引き」を文部科学省が公表しています。この統合型校務支援システムを扱うシステムディ(3804)などに注目しています。

「英語4技能の活用」が求められています。その理由は、2020年度から実施される「大学入学共通テスト」において、今まで重視されていた「読む」「聞く」だけでなく、「書く」「話す」という能力までテストされるからです。

補習関連銘柄にも追い風か

今までの学校教育では不足となることも考えられるため、英会話教室の利用や「eラーニング教材」を利用する学校や保護者が増えることが見込まれています。

英会話ではオンライン英会話最王手のレアジョブ(6096)、塾ではリソー教育(4714)や京進(4735)、eラーニングではEduLab(4427)や学研ホールディングス(9470)、ベネッセホールディングス(9783)などに注目しています。

英語教育に強みをもつアルクを買収したフリービット(3843)も、ICT技術を用いて英語教育に寄与していくと見込まれるため、恩恵を受けそうです。

その他、デジタル教科書関連ではオンライン学習教材などのすららネット(3998)や、学校教育向けICT事業が柱のチエル(3933)。電子黒板については、テクノホライゾン・ホールディングス(6629)以外は株式の時価総額が大きい企業が製品を提供していることが多いため、業績に与える影響は低いとみています。

カスタマイズなど幅広い企業に商機?

教育関係者に聞くと、教育現場では教育ICTになって便利になった半面、教育の現場に沿っていない部分もあるとのことで、カスタマイズして欲しいなどの要望もあるようです。また、プログラミング教育では、現場の教職員が指導できるように何度も研修をしていますが、苦労しているようだとのことでした。

そのため、アフターサービスや使い方の研修、カスタマイズ可能な柔軟性などに強みがある企業に、より追い風となるのではないかと思います。

教育ICTに関連する企業としてアライドテレシスホールディングス(6835)、スターティア(3393)、パシフィックネット(3021)、明光ネットワークジャパン(4668)、ネオス(3627)、ACCESS(4813)などにも注目しています。

<文:投資調査部 饗場大介>

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