公務員採用で知的・精神の障害者なぜ対象外 政令指定都市の一部、受験資格なし

京都市役所

 「障害者を対象にした京都市の正規職員採用試験で、身体障害者だけに受験資格があり、なぜ知的障害者や精神障害者にチャンスがないのか」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に滋賀県の女性から疑問が寄せられた。全国20の政令指定都市を対象に2020年度採用の要件を調べたところ、確定している19市のうち、身体限定は京都市など4市のみだった。14市は知的と精神も対象とし、うち11市が20年度採用から加えていた。中央省庁での障害者雇用水増し問題を機に意識が高まった影響のようだ。

 身体障害者限定の採用を続けているのは京都、大阪、福岡、浜松の4市。名古屋は身体と知的に限定している。京都市は今年2回に分けて行う20年度採用の正規職員試験で身体障害者枠を設け、一般事務職約10人、学校事務職若干名の採用を予定する。
 滋賀県の女性は精神障害があり、京都市の採用試験を受けようとして対象外だと知ったという。知的と精神を含めていない理由について、市人事課は「施設のバリアフリー整備だけにとどまらない配慮が必要」とし、「知的障害者には能力に応じた仕事を作り出さないといけないが、郵便物の仕分けなど軽度な業務は民間委託する方向にある。精神障害者は体調面からフルタイム勤務が難しいケースが想定される」と説明する。
 一方、神戸や川崎など11市は、20年度採用から身体に加えて知的、精神にも拡大した。方針転換を促したのは、全国的な障害者雇用を巡る問題を受け、厚生労働省が18年12月に自治体に出した文書。「特定の障害種別の人に応募を限るのは障害者雇用促進法の趣旨に反する」と改善を求めた。
 厚労省は、障害の違いで採用試験の取り扱いが異なることは、障害者雇用促進法で禁止されている差別には当たらないとする。ただ、同法は事業主に障害者の雇用の場を確保するよう求めており、能力・適性のみを基準とした公正な採用選考を依頼したという。
 厚労省は16年にも同趣旨の文書を出していたが、多くの政令市が再度の依頼に応じた形となった。20年度採用から3障害に対象を広げた千葉は「16年時点は嘱託職員の採用で知的と精神障害者も対象にしていたので、文書の内容に対応しているとの認識だった。今回は障害者雇用問題に社会の意識が高まっているのが大きかった」と説明する。

 

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政令指定都市における障害者を対象にした正規職員採用試験

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