障スポ中止 陸上スラローム・野副「リベンジしたい」

仕事と競技を両立させて、充実した日々を送る野副綾=諫早市、スタンドファーム就労継続支援B型アストルテ

 台風19号の影響で、12~14日の全日程が中止となった第19回全国障害者スポーツ大会「いきいき茨城ゆめ大会」。「脳性まひ」を抱える野副綾(スタンドファーム就労継続支援B型アストルテ)は、車いすを操作して赤と白のピンが置かれたコースを前進、後進させて走りきる陸上スラロームで金メダルを目指していた。「中止はショックだったけど、仕方がない。来年の鹿児島でリベンジをしたい」
 生まれつき左半身に強いまひがあった。幼いころは車いすに乗らず、歩行器を使って歩いた。諫早市立長里小、小長井中時代は普通学級に通う中で「周りと違う現実を突きつけられた」。「かわいそうに」と特別視される日々に耐えられず、不登校気味にもなった。
 そんな状況が諫早養護学校(現諫早特別支援学校)入学を機に一変した。自分と同じような境遇の仲間と出会い、障害者スポーツを知った。運動会はビリが定位置で「自分が障害者であると突きつけられる象徴的な場面」だったが、2年生で初出場した県障害者スポーツ大会60メートルで優勝。「自信が持てた。大嫌いが大好きになった」
 2006年、3年生で初出場した全国障害者スポーツ大会は「悔しい結果に終わり、ものすごく泣いた」。結果、競技に未練は残ったが、卒業後に福岡の職業能力開発校で資格を取って一般企業に就職。多忙な生活を送る中、スポーツから遠のいていった。
 それから5年後。「心身ともに疲れ果てて」会社を退職。しばらくは何も手に付かない日々を過ごした。それを再び前向きにさせてくれたのが、大好きな陸上だった。目標に向かって練習を頑張る毎日が、生きがいになった。14年長崎がんばらんば大会も経験した。
 今は2年前に就職した理解ある職場、仲間たちに支えられ、週3日は練習日を設けるなど、仕事と競技を両立できるようになった。ピアスなど装飾品の刺しゅうを作る仕事をしながら、ロードレース大会にも出場。「ハーフマラソン完走」という夢に向けてトレーニングに励み、競技用の車いすも購入した。
 今回の茨城ゆめ大会は残念な結果になったが、今は11月10日に挑戦する福岡マラソン(5.2キロ)へ気持ちを切り替えている。「仕事も陸上も大切にして、充実した毎日を過ごせている。自分が走ることで夢を持てる子がいればうれしい」。30歳の車いすアスリートは、障害を受け入れて挑み続ける。

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