IMSA:モントーヤ組アキュラが“トリブルクラウン”達成。プチ・ル・マン優勝は31号車キャデラック

 北米耐久レースシリーズの最高峰IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権最終戦プチ・ル・マンが10月12日、アメリカ・ジョージア州のロード・アトランタで行われ、ウェレン・エンジニアリング・レーシングの31号車キャデラックDPi-V.R(フェリペ・ナッセ/ピポ・デラーニ/エリック・クラン組)が10時間におよぶ戦いを制した。タイトル争いは31号車組と競っていたアキュラ・チーム・ペンスキーの6号車アキュラARX-05を駆るファン・パブロ・モントーヤ/デイン・キャメロン/シモン・パジェノー組が4位に入ったことで、レギュラーコンビのモントーヤとキャメロンがDPiクラスのチャンピオンを決めている。

 全12戦で争われてきた2019年シーズンもいよいよ残すところ1戦。各クラスのチャンピオンが決定する最終戦の決勝レースは、12日(土)12時10分にスタートが切られた。

 前日11日に行われた予選でポールポジションを奪った31号車キャデラックは、元F1ドライバーのナッセがオープニングラップから飛ばして後続を引き離しにかかると、スタート後1時間経過時には、3番手グリッドからひとつポジションを上げたマスタング・サンプリング・レーシングの5号車キャデラックDPi-V.Rに17秒の大差をつける。

 その後も約1時間半に渡ってレースをリードした31号車キャデラックだったが、2時間30分過ぎに導入された今レース2度目のフルコース・コーション(FCY)中にステイアウトしたことで、DPiクラスの他車とピットタイミングがずれることに。これによってレース中盤は、31号車と5号車キャデラック、マツダチーム・ヨーストの77号車マツダRT24-P、コニカミノルタ・キャデラックDPi-V.Rの10号車キャデラックなどがピットタイミングごとにトップを入れ替える展開となった。

 チェッカーまで残り1時間となったレース終盤、トップ争いは5号車キャデラックと、一時は5番手に順位を下げていた31号車キャデラックの2台が頭ひとつ抜け出す。しかし20分後、4回目のFCYによって3番手以下とのギャップがリセットされてしまう。

 レースは残り25分で再開されると、このリスタートで3番手につけていた77号車マツダが、10号車キャデラックとアキュラ・チーム・ペンスキーの7号車アキュラARX-05に交わされて5番手に順位を落とす。一方、首位争いでは5号車キャデラックを駆るフィリペ・アルバカーキと31号車のデラーニがアクション・エクスプレス・レーシングのチーム内バトルを繰り広げていく。

 そんななか、スタートから9時間40分を超えた直後に5号車キャデラックにトラブルが発生。最終コーナーのブレーキング時に左フロントのブレーキディスクが割れ、減速でしきれずにコースオフしてしまう。幸い大事に至らなかったものの、ピットに戻った5号車は優勝争いから完全に脱落することとなった。

■双方リタイアで優勝車なしの珍事

52号車オレカに追突し右フロントにダメージを負ったアキュラ・チーム・ペンスキーの7号車アキュラARX-05
ラスト20分で首位を走りながら、ブレーキトラブルに泣いたマスタング・サンプリング・レーシングの5号車キャデラックDPi-V.R

 僚友のアクシデントによって前が開けた31号車キャデラックは一時、2番手につける10号車キャデラックにコンマ2秒差まで迫られるも、最後はコンマ9秒差でこれを振り切って今季2度目のトップチェッカーを受けた。開幕戦デイトナ24時間以来の優勝を狙った10号車キャデラックが2位。トップから9.8秒差の3位には7号車アキュラが入っている。

 シリーズタイトル争いでは、ランキング2番手の31号車キャデラックのナッセ/デラーニ組が優勝し獲得ポイントを297点に伸ばした一方で、ランキングトップで今戦を迎えた6号車アキュラのモントーヤ/キャメロン組も4位に入り、302ポイントとしたことでキャメロンが2度目、モントーヤが初めてのIMSAシリーズチャンピオンに輝いた。

 6号車アキュラはチームタイトルも獲得し、マニュファクチャラーズタイトルでもアキュラが5ポイント差でキャデラックを上回り、参戦2年目での初戴冠を成し遂げている。

 2台がエントリーしたLMP2クラスでは、ポールポジションを獲得したパフォーマンステック・モータースポーツの38号車オレカ07・ギブソンが、PR1・マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07・ギブソンをリードする。

 しかし、その38号車オレカはスタートから1時間25分後に7号車アキュラに追突された弾みでコースアウトし、コンクリートウォールにヒット。足回りを損傷したことでリタイアを余儀なくされてしまう。ライバルが消えた52号車オレカだったが、こちらもレース中盤にトラブルが発生したことでリタイアに。この結果、最終戦は優勝車なしで終えるなかで52号車のマシュー・マクマリーがLMP2クラス王者を決めることとなった。

 GTル・マン(GTLM)クラスではスポット参戦のかたちでシリーズに復帰したリシ・コンペティツィオーネの62号車フェラーリ488 GTE Evo(ジェームス・カラド/アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ダニエル・セラ組)が、フォード・チップ・ガナッシ・レーシングの66号車、67号車フォードGTとの争いを制してポール・トゥ・ウインを達成。

 2位は67号車フォードGT、3位にはBMWチームRLLの25号車BMW M8 GTEが入った。今戦がラストレースとなるC7型コルベットを走らせるコルベット・レーシングは3号車シボレー・コルベットC7.Rの4位が最上位だった。チャンピオンシップはポルシェGTチームが、912号車ポルシェ911 RSR(アール・バンバー/ローレンス・ファントール組)のドライバーズタイトルをはじめ、チームタイトルとマニュファクチャラーズタイトルも獲得して“トリプルクラウン”を達成している。

■アキュラ、GTDクラスでも戴冠。NSX GT3がダブルタイトル獲得

アキュラ・チーム・ペンスキーは、ドライバーズタイトルとチームタイトル、さらにマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。
マツダチーム・ヨーストの77号車マツダRT24-P
GTLMクラスで優勝したリシ・コンペティツィオーネの62号車フェラーリ488 GTE Evo
フォード・チップ・ガナッシ・レーシングの67号車フォードGT

 GTデイトナ(GTD)クラスはファイナルラップにドラマが待っていた。レース最終盤、序盤戦から首位争いに絡んでいたメルセデスAMG・チーム・ライリー・モータースポーツの33号車メルセデスAMG GT3は、フィニッシュまで残り25分の時点でターナー・モータースポーツの96号車BMW M6 GT3を交わしてトップに立つことに成功する。しかし、FCYの影響でその後に築いたギャップがリセットされてしまう。

 リスタート後、33号車メルセデスは一転して劣勢となるもその後、約20分に渡ってトップの座を死守してみせる。しかし、スタートから10時間を超えて迎えたファイナルラップで、ついに96号車BMWがライバルを捉えて再びクラス首位を奪還。この日が誕生日だったビル・オーバレン駆る96号車BMWは、そのままトップでチェッカーを受けてシーズン2勝目を飾った。

 2位は前述の2台とともにレース序盤から首位争いに絡んだモンタプラスト・バイ・ランド・モータースポーツの29号車アウディR8 LMSで、3位にはパフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 Rが続き、首位陥落後にコース上でストップした33号車メルセデスは4位という結果になっている。

 シリーズチャンピオンはマイヤー・シャンク・レーシングの86号車アキュラNSX GT3 Evoのマリオ・ファーンバッハー、トレント・ハインドマン組がダブルタイトルを獲得。マニュファクチャラーズタイトルは2点差でアキュラを上回ったランボルギーニの手に渡った。

今季限りで引退するIMSAのスコット・アサートン代表が、グランドマーシャルとしてチェッカーフラッグ振動役を務めた。
IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権GTMクラスで3冠を達成したポルシェGTチーム
ファイナルラップの逆転劇でGTDクラスウイナーとなったターナー・モータースポーツの96号車BMW M6 GT3
GTDクラスでドライバーズ、チームタイトルを獲得したマイヤー・シャンク・レーシングの86号車アキュラNSX GT3 Evo

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