タカを愛しすぎる高校生

自宅で6羽調教、卒業後目指すは鷹匠

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鷹匠を目指す高校生小川涼輔さんとハヤブサ

 オオタカなどの猛禽(もうきん)類を巧みに操り、害鳥駆除に役立てる「鷹匠(たかじょう)」を目指す高校生が群馬県榛東村にいる。高校3年小川涼輔(おがわ・りょうすけ)さん(18)。自宅でタカ6羽を飼い、家族の全面的な協力を得て毎日調教に励む。「タカは相棒。これからもずっと一緒にすごしていきたい」と話し、世界を見据え技術を磨いている。

 ▽本当に飼える? 不安の中でスタート

 8月下旬、榛東村の公園。オオタカ「レイア」を10メートルほど離れた場所から呼ぶと、レイアがさっそうと飛び上がり、勢いよく涼輔さんの左腕に止まった。えさを与え「よしよし、暑いね」と霧吹きでクチバシを湿らせると、レイアは気持ちよさそうに目を細めた。

 涼輔さんは幼稚園のときから「鳥の図鑑ばかり見ていた」という大の鳥好き。インコを飼っていた小学5年のとき、テレビで見た鷹匠に憧れた。「自分もタカを操ってみたい」と、家族に飼いたい気持ちを打ち明けた。

 母の直美さん(46)は当初「本当に飼えるのか不安だった」と振り返った。タカの寿命はおよそ25年。手なずけるのは簡単ではなく、人を傷つける恐れもある。「ペット感覚では飼えない」。一度は突っぱねた。だが、お年玉をかき集め、猛禽類の本をむさぼるように読む涼輔さんを見ているうちに、両親も心を動かされ、協力することを決意した。

涼輔さんと母直美さん

▽家族総出で応援の日々

 2年ほど飼育方法の下調べやペットショップ巡りを続け、茨城県牛久市の猛禽類専門店で、のちの相棒となるハリスホークの「ルギー」に出会った。目を見た瞬間「この子だ」と感じ、飼うことを決めた。

 ルギーは生後しばらく母鳥に育てられていたため警戒心が強く、人間になれていなかったが、1カ月ほどで少しずつ触れるように。腕の上に乗せて安全だと教える訓練「据え回し」を家にいる間行い、一緒にテレビを見たことも。

 3カ月ほどでなれ、外で飛ばして腕に戻す調教も始めた。週末には購入した茨城県の猛禽類専門店まで通って調教方法の指導を受け、平日は学校から帰るなり腕に乗せる。ずっと一緒の日々が続いた。

 家族はいつも応援した。総出で庭に鳥小屋を建てた。ふんの始末や掃除、えさやりを手分けし、調教もほぼ毎日。涼輔さんが学校にいる間は、直美さんが水浴びや日光浴をさせた。専用の冷凍庫はえさの冷凍うずらで満杯になった。

 毎日続けた調教のおかげで、日本最大の鷹匠の技術を競う大会「フライトフェスタ」で中学1年から3年連続優勝を果たした。タカを取り巻く成育環境を学ぶため、群馬県沼田市の尾瀬高校自然環境学科に入学。通学に片道2時間かかるため、調教の時間を確保しようと1~2年時は学校そばの古い家を借りてタカ2羽と暮らした。家事をこなしながら、放課後には校庭で調教を繰り返した。

ルギーと涼輔さん

 ▽父もタカを購入

 タカを飼い始めて1年たった頃、自営業で訪問マッサージをしている父伸一さん(48)もハリスホークを購入、調教を始めた。「涼輔が働き始めたとき、タカを生かした仕事がすぐできるように」と、自らの会社で害鳥駆除の依頼を受け始めた。商業施設や工場、倉庫など、ハトやカラスに悩む施設で、営業が終わった早朝や深夜に親子でタカを連れて歩き、飛ばして威嚇する。

 「涼輔はタカに出会って前向きになり、自信もついた。やりたいことが見つかってラッキー。頑張ってほしい」。直美さんは息子の姿にエールを送る。

 現在飼っているのは6羽。それぞれ個性があり、涼輔さんは「ハリスホークはおとなしくていい子だけど、少しおっちょこちょい。オオタカは暴れん坊で、調教中に頭を蹴られたことも」と苦笑しながら、優しいまなざしを向ける。

 最近、ハヤブサの幼鳥も飼い始めた。涼輔さんによると、調教の難易度が最も高いと言われており、世界ではハヤブサでの出場が義務付けられている大会も多いという。

飼い始めたハヤブサ

 高校卒業後は、ルギーを買った茨城県の猛禽類専門店に住み込みで修業するつもりだ。現在依頼を受けて行っている害鳥駆除や、タカの飛行を披露するバードショーなど鷹匠の活動を本格化したいと考えている。「害鳥で困っている人は多く、力になれればと思う。いろいろな種類のタカを操り、周りの人に認められるような鷹匠になりたい」

 ▽取材を終えて

 初めて会ったとき、涼輔さんは「鷹匠」と書かれたTシャツを着て、タカ柄のマグカップでお茶を飲んでいた。スマートフォンケースも待ち受け画面もすべてタカ。手は調教中に受けたひっかき傷だらけだが、タカを見る眼差しは優しく、心からタカが好きだという気持ちが伝わってきた。猛禽類を飼うのは簡単ではないのに、母直美さんは「大変ですけど、やるからには頑張ってほしい」と笑顔を絶やさない。子どものやりたいことを全面的に応援する家族に、心温まる気持ちになった。(共同通信=小林清美)