【台風19号】芦ノ湖氾濫、大打撃 観光・漁業再開できず

冠水したボート乗り場=14日午後0時45分ごろ、箱根町元箱根

 台風19号で観測史上最大となる千ミリの大雨を記録した箱根町で、芦ノ湖の氾濫による周辺の浸水被害が続いている。台風通過から3日が過ぎた15日も遊覧船乗り場の水は引かず、ボートの桟橋は無残な姿をさらす。観光業へのダメージは計り知れず、関係者は表情を曇らせている。

 「13日朝は腰の高さまで漬かっていた。水が引かないと何もできない。こんな被害は初めて」

 観光船の箱根町港(箱根町箱根)近くで、釣り船業の女性は水に漬かった状態の駐車場を見ながらため息をついた。同エリアの「海賊船」乗り場の冠水は14日までにほぼ収まったものの、釣り船店の桟橋などが破損する被害が相次いだ。

 遊覧船を運営する伊豆箱根鉄道によると、元箱根港(同町元箱根)の建物は、最大雨量を記録した12日から一夜明けた13日午前6時半ごろに約30センチ浸水。翌14日午前に約10センチまで下がり正午に水が引いたが、桟橋の冠水は続いている。職員は清掃や電気設備の安全確認などの対応に追われたといい、広報担当者は「電気設備は復旧させたが、水位が下がらないと遊覧船は再開できない」と嘆いた。

 湖尻港(同)周辺でもボートの桟橋が冠水するなどの被害があり、15日も関係者が片付けをする姿などが見られた。

 芦ノ湖の氾濫による浸水被害の影響で、1日に解禁されたばかりのワカサギ漁も中止に追い込まれた。芦之湖漁業協同組合は「災害でボートが出られず、漁はできない」と困惑を隠せない状況だ。

 1日の初漁では10~15センチとまずまずの大きさの魚がかかり、関係者は少なくとも年間1.5トンほどの漁獲量を見込み、期待を寄せていた。例年、漁は11月にピークを迎えるが、「いつ水が引くのかこちらが知りたいぐらい」と想定外の事態に頭を抱えていた。

© 株式会社神奈川新聞社