MotoGPチャンピオンインタビュー:「“ほぼ”完璧な1年だった」とマルケス。残り4戦で3年連続の3冠に挑む

 レプソル・ホンダ・チームのマルク・マルケスは、MotoGP第15戦タイGPで優勝し、最高峰クラスで4年連続、キャリア通算8度目のタイトルを獲得した。タイでの戦いを終え、ヨーロッパに戻ったマルケスは、スペイン・マドリードにあるタイトルスポンサーのレプソル社を訪れ、タイトルを獲得した2019年シーズンを振り返った。

Q:新たにタイトルを獲得して(母国スペイン)戻ってきた感想は?

マルク・マルケス(以下、マルケス):“ほぼ”完璧な1年だった。もちろん、僕は常に向上することができる。2019年シーズンのメインターゲットに設定していたタイトル獲得を達成することができたから、夢のような1年だったと言えるね。僕たちはチャンピオンを獲得した手段を誇りに思う。確かに僕はここひとりでいるけど、日々、僕を支えてくれる僕のチームのみんなと周囲の人たちがいることを決して忘れない。

第15戦タイGP後にタイトルスポンサーのレプソル社を訪れたマルク・マルケス

Q:タイトル獲得の祝勝会はどうだった?

マルケス:とても良かったよ。まだ声がかすれているけどね! タイトル獲得に相応しい祝勝会だった。これは世界選手権だし、この夢がいつ終わってしまうのか決して分からないから、チームのみんなと一緒にバンコク市内で全力で祝ったよ。祝勝会の詳細は内緒だけど、みんなと一緒に踊って騒いだ。今回はカラオケがなかったけど、必要なかったよ。

ガレージでチームメンバーとタイトルを祝うマルク・マルケス

Q:肩の怪我で始まったシーズンを振り返るとどうだった?

マルケス:当然、アスリートのキャリアには今回のような悪い時もあれば、良い時もある。困難な状況に見舞われると選手として強くなれる。今年の冬はキャリアのなかで最も過酷なもののひとつだった。一番好きなことであるバイクを走らせることができなかったからね。手術が必要でトレーニングができなかったけど、僕を支えてくれたすべての人たちの助けを借りて厳しい状況を乗り越えた。開幕戦は体調が100%ではなかったけど、そのなかで全力を尽くした。すべての仕事には報酬があると信じる。そして、その成果が出始めると、僕にさらなる力を与えてくれるんだ。

Q:「“ほぼ”完璧な1年」だと発言したけど、どうして“ほぼ”と評価するのか?

マルケス:自信過剰になったとき、ミスを犯してしまう可能性がある。それは僕たちが予想していなかったレースで起こったんだ。オースティン(第3戦アメリカズGP)ではそれが起きてしまった。4秒差のアドバンテージを広げていたときに転倒してしまった。勝利は明らかだったけど、リラックスし過ぎてしまい転倒してしまった。だから常に集中しなければいけないと思い知らされたよ。ミスから学ばなければいけない。とても良い1年だったけど、だからと言って仕事をやめるという意味にはならない。

マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)

Q:(第15戦タイGPの初日)最終コーナーでリスクを冒したことで母親を心配させたけど、彼女の反応はどうだった?

マルケス:レースウイークを転倒で始めてしまったから、金曜日に怒られたよ。僕は転倒で身体を強打するけど、周囲の人たちは精神的にもっと苦しむ。母親だけでなく、父親も苦しむ。家族は長年僕の近くにいてくれたし基盤なんだ。僕が4歳のころにバイクを求め、家族がそれに応えてくれなければ、僕はここまで到達することはできなかった。だけど、家族はもう長い間苦しでいるよ。

■アゴスチーニの記録更新は「ほぼ不可能だろう」

Q:ジャコモ・アゴスチーニはあなたが自身のタイトル数を越えると発言した。それについてはどうか?

マルケス:僕はアゴスチーニととても仲が良い。その発言を聞いたよ。不可能という言葉は好きじゃない。決して言いたくないけど、それはほぼ不可能だろう。彼の記録を超えるとうことは今の2倍タイトルを獲得するという意味だ。僕は数字と名前にこだわりたくない。レースへの情熱を楽しみたい。それが僕の仕事だし、とても幸運なことだ。そのために最善を尽くそうとしている。

通算8度目のタイトルを手にしたマルク・マルケス

Q:あなたはライバルのおかげでここまで到達したと常に発言してきた。2020年はファビオ・クアルタラロやホルヘ・ロレンソといった強い存在がどれだけ必要?

マルケス:ライバルは弱いほどいいよ!(笑)今のMotoGPは技術的に最も平等な時代だ。それは最終的に数字に反映されていないけど、それが今シーズンおもしろい理由だ。レースで優勝を争うことができる4メーカーがいる。これは優勝できる可能性があるバイクが少なくとも8台いることを意味しているし、過去にはなかったことだ。バレンティーノ(・ロッシ)やホルヘ、ドヴィ(アンドレア・ドヴィツィオーゾ)のようなベテランライダーたちや、ファビオ(・クアルタラロ)やマーベリック(・ビニャーレス)のような若手ライダーたちから学ばなければいけない。

Q:2020年はさらに良くすることができるだろうか?

マルケス:2019年はとても良い1年だった。この1年を上回ることは難しいだろう。僕のアイドルであるラファエル・ナダル(テニス選手)は、試合をした後、次の試合で常に一歩前進する。リオネル・メッシ(サッカー選手)がゴールを決めたとき、彼がこれ以上ないゴールを決められるだろうかと誰もが考えるけど、それを越えるゴールをメッシは次に決める。僕は常に良くしていく彼らを参考にしたい。僕はミスから学ぼうとする。ライバルたちがレベルを決めるけど、僕はさらに成長を続けたい。

アレックス・マルケス(EG 0,0 Marc VDS)

Q:弟(Moto2ライダーのアレックス・マルケス)と一緒に再びチャンピオンになりたいと願っているか?

マルケス:僕の弟は一生懸命働いて、とても良い年を迎えている。彼は気持ちで勝利しているが、プレッシャーを管理してベストを尽くさなければならないレースが4つ残っている。僕としては、アレックスが抱えている以上のプレッシャーをかけることはしない。アレックスがレースを楽しめるよう集中してサポートするし、プッシュする。もし一緒にチャンピオンが獲れなくても恥じることはないよ」

Q:第15戦タイGPの初日で転倒した後、ペースを緩めようと思わなかったか? タイでタイトルを決めたかった理由は?

マルケス:タイでタイトルを獲得したかった理由は、最初のマッチボールだったからだ。チャンピオンシップで一定のアドバンテージがあるとき、新たなモチベーションを探す。僕は今を生きて、レース毎に挑みことが好きだ。レースウイークが始まる木曜日から僕はレースに勝ちに行くことと、最低でもタイトル獲得に向けてトライすることを発言した。後はライバル次第だったし、彼らはトラック上で答えてくれる。レースで優勝してタイトルを獲得することは、最も美しいことだから、最終コーナーまでトライしたよ。シーズンを通して僕がチャンピオンになれると意識していたから、フィニッシュラインを超えたとき、その幸福を得るためにモチベーションを追及する必要があった」

マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)

Q:2019年シーズンのターニングポイントは?

マルケス:2019年はふたつ重要な瞬間があった。最初は、オースティンでミスした後、同じように独走態勢に持ち込んで勝ったヘレス(第4戦スペインGP)だ。獲得したポイントは25ポイントで変わりはないけど、前戦と同じ自信とメンタリティがあることをライバルたちに示すことができた。もうひとつはバルセロナ(第7戦カタルーニャGP)だ。僕はレースに勝ち、タイトル争いのライバルたちが0ポイントに終わった。彼らのミスではなかったけど、この2レースがチャンピオンシップのターニングポイントだった。

Q:ホンダはマルケスのためにバイクを作っているか、それともマルケスはホンダを最もよく理解しているライダーか?

マルケス:ホンダはバイクを作る。そして、ライダーはそれに適応する能力を持たなければならない。 僕たちのチームでポジティブなことは、同じ構造のバイクを持っている3人のライダー、ホルヘ、カル(・クラッチロー)、そして僕が、改良されたマシンについて同じコメントとフィードバックを持っていることだ。 僕たちのバックには技術グループいて、彼らはそれぞれの状況を最大限活用する。それに適応できたのは僕の仕事の結果だよ。

レプソル社でタイトル獲得の報告をするマルク・マルケス

Q:残り4戦に向けたモチベーションは?

マルケス:最初の目標は日本で完走することだ。チャンピオンになった後の次のレースでは毎年転倒してしまった。アラゴンでは残りの全戦で表彰台を獲得したいと発言したけど、それは変わらない。そして、僕たちがリードしているコンストラクター部門とドゥカティがリードしているチーム部門のタイトルを忘れてはいけない。チーム部門ではレプソル・ホンダ・チームは19ポイント差だから、僕たちは攻めるだけだよ。

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