リチウムイオン電池市場拡大。当面リユースで。リサイクルは20年代後半から

 小型で軽量なリチウムイオン電池はこれまでノートパソコンや携帯電話、デジタルカメラ、携帯音楽プレイヤーなど携帯用機器に搭載されIT機器の利便性を大きく向上させてきた。環境への配慮が重視されるようになった現在、EV、HV、P-HVなどエコカーと呼ばれるような自動車への搭載が進み、今後これらの市場は急速に拡大する見込みで、これに伴いリチウムイオン電池市場も拡大基調で推移するとみられている。

 4日、矢野経済研究所がリチウムイオン電池リユース・リサイクルの世界動向調査の結果を発表している。レポートによれば、リチウムイオン電池はレアメタルを必要とし、さらに需要が拡大すると見込まれる電動車やESS(定置用蓄電池)は搭載容量が大きいため、資源リスクや環境問題の観点から今後、リチウムイオン電池のリユース、リサイクルに向けた取り組みは重要度を増すと予想される。

 現在、一部でリサイクルが実用化されているものがあるものの、リユース、リサイクルとも実証実験レベルでの取り組みがメインとなっている模様だ。車載用リチウムイオン電池に関しては、採算性からリサイクルに直ちに着手することは困難で、当面はリユースの取り組みを検討する必要があるようだ。こうした事情を考慮すると車載用の使用済みリチウムイオン電池がリサイクル用に集まり始めるのは2020年代後半になるとレポートは予測している。

 17年の車載用リチウムイオン電池の世界市場規模をHEV、PHEV、EVの合計で見ると、容量ベースで前年比123.1%の57.4GWh、18年は前年比108.3%の62.2GWhと見込まれている。

 20年前後に環境規制の強化に応じた新規xEVモデルのラインナップ強化が予定されており、これを背景に20年の世界市場規模は129.2GWhまで拡大、25年には20年比166.0%の214.5GWhまでに拡大すると予測されている。

 車載用リチウムイオン電池市場に影響を与えるxEV市場は中国や欧州等の主要国における補助金制度や燃費規制等に直接影響を受ける状況にある。17年には中国政府のEV・PHEVに対する補助金制度の改正によりEVバス向け補助金が減額され販売台数が減少し、これに影響され18年の車載用リチウムイオン電池市場の成長は鈍化したと見込まれている。こうした主要各国の補助金・規制等の状況に影響を受け、今後の成長速度は不透明な部分もあると言えそうだ。(編集担当:久保田雄城)

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