MotoGP日本GPで世界戦デビューするJ-GP3王者の長谷川聖「自分のレベルがどれくらいなのか確認したい」

 10月18~20日に栃木県のツインリンクもてぎで開催されるロードレース世界選手権第16戦日本GPのMoto3クラスに、長谷川聖がワイルドカード参戦する。そんな世界戦に初挑戦する長谷川にワイルドカード参戦に向けた状況を聞いた。

 長谷川は、2019年シーズンは全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスにフル参戦している鹿児島県出身の19歳のライダー。第7戦オートポリスを終えた時点で6レース中5度表彰台に上り、3度優勝を飾った。ランキングでは2位に31ポイントの差をつけ最終戦を待たずにチャンピオンに輝いた。

2019全日本ロードJ-GP3クラスチャンピオンの長谷川聖(CLUB Y’s)

 しかし、第7戦オートポリス前の9月末に同地で行われた公開合同テストでは転倒を喫し左手小指を負傷している。オートポリスの決勝レースは怪我を負ったまま出場し、トップ争いを展開して僅差で2位に終わったが、左手はもちろん万全の状態ではなかった。左手小指は剥離骨折しており、腱が切れていてクラッチレバーを戻せない状態だったという。

 その万全ではない状況下でもトップ集団のなかを走り、2位に入賞しタイトルを獲得してみせた。そんな長谷川は、今回の日本GPのワイルドカード参戦がグランプリデビューとなり、全日本ロードのJ-GP3クラスチャンピオンとして挑むこととなる。

 長谷川はJ-GP3クラスでホンダNSF250Rを駆っており、日本GPのMoto3でもそのままのマシンで臨むという。しかし、ECU(エレクトロニックコントロールユニット)は全日本ロードではaRacer製のものを使っており、Moto3で全車共通のデロルト製のものに変更することになる。そして、全日本ロードはブリヂストンタイヤを使用し、Moto3はダンロップタイヤとなるが、そこは心配していない様子だ。

 本来Moto3クラスにワイルドカード参戦する場合は、多くのライダーが使用しているNSF250RWを用意するか、NSF250RにMoto3用のエンジンを乗せ換える方法がある。だが、貸出のエンジンは設計の想定距離を超えたもので、オーバーホールもされていない状態だったためそれを使用しない選択肢をとった。

 レギュラーライダーとマシン面において大きなハンディキャップを抱えた状態で出場することになるが、長谷川は「世界選手権の場に行くことがまず難しいことだし、すごいことだと思っています。(レギュラーライダーと)一緒に走ることはやりたくてもできない人が多いから出場することが大事です」と話している。

「レーサーとしては競り合ってポイントをゲットすることが目標となるところですが、正直厳しいです。Moto3ライダーと走り、全日本に向けても僕自身のレベルが今どれくらいのものなのかを確認し経験したいです。ビリではなく、レースでは周回遅れにならないことが目標です」

 意気込みを聞くと「日本のチャンピオンとして恥じのないように、世界相手にどこまでいけるかわかりませんが、全日本ロードのチャンピオンとしてレベルを見せつけてやりたいです。他のライダーは僕が不利なマシンで出場するのはわかると思いますが、コーナーひとつでも追いつけるなら全力で戦いたいです」と力強く語った。

 また、「(真崎)一輝は小さい時に一緒に走っていたから、また一緒に走れることがすごく新鮮です」とBOE Skull Rider Mugen RaceからMoto3クラスにフル参戦している真崎一輝と走れることも話題に上げていた。

2019全日本ロードJ-GP3クラスに参戦する長谷川聖(CLUB Y’s)

 長谷川が所属しているCLUB Y’sの山田修代表は、「聖と地方選で戦っていたライダーたちが今Moto3を走っています。どれくらの差になっているのか試したいでしょうし、一緒に戦えたらいいと思います」と以下のように続けた。

「今年になってからは成績が残せるようになり、タイトルも獲れました。全日本チャンピオンという肩書がどの程度通用するものかをみせ、今日本でレースをしている人たちのひとつの目安になればいいかなと思い参戦を踏み切りました」

「ECUは乗せ換えていますが、マシンはノーマルのままで遅いでしょう。それでも聖は『このままで出れるならそれでもいい』と言ったので出場します。エンジンの差がすごくあるので、最後尾で争えたらいい方かなと思っています。近年は誰も争いができていないので、タイムを上げてひとつでもポジションを上げたいです。一台でも抜けるように頑張ります」

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