安くて2000円前後、「忘れ物防止タグ」はお買い得な代物か

周囲に必ず1人はいる、「しょっちゅうモノを探している人」。鍵や財布など、大事なモノをひょいとどこかに置いてしまい、わからなくなってしまう人は、洋の東西を問わず一定割合います。

そんな「しょっちゅうモノをなくす人」向けの「忘れ物防止タグ」が、Amazonや大手量販店で売られているのをご存知でしょうか。使い方は簡単で、スマートフォンに専用のアプリをインストールし、なくしたら困るモノにタグを取り付けたり、貼り付けたりしておくだけ。

ただし、価格は安いもので1個2,000円前後から。何個も付けようと思うと、数千~1万円を超える投資になります。はたして、このタグはお買い得な代物といえるのでしょうか。


Bluetooth機能でなくした場所がわかる

忘れ物防止タグのコストパフォーマンスを検証する前に、基本的な性能を確認しておきます。このタグを利用するには、スマホにインストールしたアプリを常に起動させ、BluetoothもONにしておく必要があるようです。捜し物をする時は、アプリからタグを鳴らせば、音の発信場所が捜し物のありかです。

電波が飛ぶ距離はおおむね40~60メートル、かなり飛ぶ機種でも120メートルくらいなので、外出先でなくした場合は役に立たないかというと、さにあらず。Bluetooth機能を使うので、通信が切れた場所と時間を知ることができ、どこに置いてきたのか、おおよその見当もつけられます。

生産しているメーカーも多数あり、ボタン状のもの、クレジットカードくらいの大きさの薄型のもの、縦長、正方形、リング用の穴が付いたもの・付かないものなど、形状もいろいろです。モノに貼り付けられるよう、裏に粘着テープが付いているものもあります。

基本的にスマホでタグの音を鳴らすので、スマホが手元にあることが前提ですが、中にはタグについているボタンを押すと、スマホが鳴る機能(相互アラート機能)が付与された機種もあります。外でスマホをなくした場合は、PCでBluetoothが圏外になった位置を探り当てることができて、落とした場所がわかるという機種もあります。

もっとも、就寝中も含めてスマホだけは片時も手放さないという人は少なくありませんから、なくしたスマホを探す需要がどれほどあるのかは疑問の残るところです。

簡易GPSを使った「みんなで探す機能」

秀逸なのは、簡易GPS機能を使った「みんなで探す機能」です。アプリが起動しているスマホの近くをタグが通過すると、そのスマホからタグの持ち主のスマホに自動的に通知が届くのです。

同じメーカーの製品を使っている人同士であれば、本人が何もアクションを起こさないのにタグの居場所を通知してくれて、しかもお互いに相手の連絡先を知ることもないというわけです。

ただ、多くの人が同じメーカーの製品を使っていないと、この機能はワークしません。そのためでしょうか、各社ともこの機能を搭載していても、あまり積極的にアピールしている形跡はありません。

量販店では1年半から2年くらい前から普通に売られているようですが、認知度はさほど上がっていません。バッテリーなどのスマホアクセサリー売り場のそばに忘れ物防止タグのコーナーは設けられていますが、あまり売れていないのでしょう。その気になって探さないと、見落としてしまいます。

日本のメーカーも参入していますが、米国発のTile(タイル)など海外メーカーが大半。しかも基本的にベンチャーですので、日本語の取扱説明書が付いているかどうかだけでなく、ちゃんとクレームに対応してくれそうな会社が販売代理店になっているかどうかもチェックしたほうがよさそうです。

どんな人に適した商品なのか

さて、問題はお値段です。各社ほぼ横並びで、安いものでも2,000円前後します。しょっちゅうモノを探している人は、何か1つだけなくすのではなく、いろいろなモノをなくしますから、何個も付けたいと思うと数千~1万円を超える投資になります。

定額課金ではないので、本体の購入代金以上のお金はかかりません。ただ一方で、しょっちゅう探し物をしている人でも、これだけの投資をする気になるのかどうかです。

自転車のサドルに貼り付けられるタイプも

むしろ効果を発揮しそうなのは、普段高価なモノを持ち歩いている人の場合。たとえば、楽器やゴルフクラブのセットです。

どちらも中古市場が成立しているので、盗まれて転売されてしまったら、取り返すことはまず不可能。ですが、目立たないところにこのタグを付けておくと、ある程度追いかけることができます。守るものが高額だと、数千円の投資も抵抗がなくなるはずです。

認知症の人や子供に持たせる目的であれば、数千円の投資に抵抗を感じる人はさらに減るのではないでしょうか。

類似商品に比べて優位性は?

以前この欄で紹介した、地図会社が開発したQRコードのサービスは、見つけた人にQRコードを読み取ってスマホを操作してもらうという、アクションを起こしてもらう必要がありました。

昭文社が売り出した「おかえりQR」

しかし、忘れ物防止タグは誰かにアクションを起こしてもらうことなく、通信が切れた場所を知ることができます。「みんなで探す機能」は、とにかく普及しないことにはワークしなさそうですが、普及すれば用途は一気に広がるでしょう。

認知度が上がらなければ普及もしません。スマホユーザーを対象にしているので、宣伝はもっぱらSNS。知っている人はすでに知っているのでしょうから、ここから先はSNSでは届かない人たちへのアプローチが必要かもしれません。

楽器店やゴルフショップ、あるいは自転車やバイクの販売店、もしくは老人医療機関の協力を仰ぐなど、メーカー側が既成概念を越えたアクションを起こす必要があるのではないでしょうか。

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