【台風19号】箱根の鉄道、道路寸断続く 秋の観光に打撃

小涌谷-宮ノ下間で線路流失の被害が生じた箱根登山鉄道=16日午前11時5分ごろ、箱根町宮ノ下

 観測史上最多の1千ミリを超す大雨をもたらした台風19号で甚大な被害が生じた箱根町で、土砂崩れなどによる交通網の寸断が町民や観光客の足を直撃している。道路の規制範囲は徐々に狭まっているものの鉄道の復旧は見通せず、箱根観光の「ゴールデンルート」の一角をなす強羅などでは、秋の観光シーズンへの影響を懸念。関係者は固唾を呑んで復旧の行方を見守っている。

 「箱根登山鉄道は強羅の観光業者にとって屋台骨で、相当な打撃を被る。早く代行バスを運行してほしい」

 強羅駅近くで土産物店を営む男性は、同鉄道の運休が及ぼす影響に表情を曇らせる。箱根登山鉄道は土砂崩れによる橋脚流失などの被害が十数カ所で確認され、箱根湯本-強羅駅間で運休。再開には長期間を要する見込みという。

 16日には振り替え輸送を始め、代行バスの運行も検討。強羅-早雲山駅を結ぶ箱根登山ケーブルカーも石が流されるなどしたが、16日の始発から運行を再開した。

 ただ、土砂崩れなどによる町内の幹線道路は、依然として複数箇所で通行止めが続く。16日午後7時現在で、国道は1号の二ノ平入口-芦の湯間、138号の碓水洞門-小塚入口間が規制され、県道は75号が大柴-箱根園入口などで通れない状態。箱根登山バスや伊豆箱根鉄道が折り返し運転するなど影響が出ている。

 一方、町民生活への影響も深刻だ。町内の多くの公立学校は16日までに再開しているが、町立箱根中学校(同町二ノ平)は17日も休校を決めた。仙石原方面から国道138号を通るバスを利用する生徒などもおり、町が代替交通手段の用意に向けて調整している。

 同中に通う女子生徒の母親(40)は「箱根は冬に雪で休校になることもあり、授業日数が少ない地域。輪をかけて休校となると、学習面の遅れが心配」。碓水洞門近くに住むパート女性(60)は「一番近い仙石原のスーパーには車で数分だったが、小田原まで行くか強羅経由で20分以上かけて行くしかない。買い物が不便になる」と困惑した表情を浮かべた。

 箱根は今月下旬から、紅葉のピークを迎える。

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