佐々木が注目浴びるドラフト、東北にもう一人の逸材 151キロ右腕の球は「芸術品」

青森山田・堀田賢慎【写真:高橋昌江】

青森山田の堀田賢慎は東北担当スカウトが自信を持って推す逸材

 プロ野球ドラフト会議が今日17日、行われる。最速163キロ右腕の大船渡・佐々木朗希投手が大きな注目を浴びるが、東北地方にはもう1人、東北担当スカウトが自信を持って推す逸材がいる。青森山田の堀田賢慎投手だ。

 この春の青森県大会準決勝。8回途中で走者を2人背負った先発・小牟田龍宝(2年)からマウンドを譲り受けたのが堀田だった。185センチ、80キロのスラッとした長身で立ち姿が美しかった。スコアブック的には、対峙した先頭打者を四球で歩かせ、満塁から犠飛で1点を失った。だが、そのストレートが素晴らしく、つい写真撮影する手を止めて見入ってしまった。

 東北大会では初戦の盛岡四戦に先発し、7回を5安打8奪三振無失点。NPB12球団20人を超えるスカウトの前で好投した。「均整のとれた体。ストレートはキレがあって力強い」「ストレートも変化球も、1つ1つにいいものがある。夏にどれだけできるかだね」と称賛の声が相次いだ。

「腕を上げてくる力感がいい」と言ったスカウトがいる。投げる時につい力が入ってしまうところで、力が入っていない。リリースの時だけ、しっかりと力をボールに伝えられるため、140キロ後半で表示されたボールが150キロ台に感じられる。クセのないフォームから放るストレートは威力があり、低めでグッと伸びる。いくらでも見ていられる、まるで「芸術品」のようなボール。「最速151キロ右腕」ではあるが、そう表現するのが軽々しく感じられる。

 大船渡・佐々木に注目が集まるが、堀田も同じ岩手県で花巻市の出身。マリナーズ・菊池雄星、エンゼルス・大谷翔平がプロへの階段を上っていった花巻東の近くで育った。花巻シニアから青森山田に進学。兜森崇朗監督の方針で、青森山田では年度始めに主に投手陣が体の成長具合をチェックすることになっている。「個人差があり、堀田は遅めの選手。入ってきた時、すでに筋力のある選手もいるが、堀田は成長期真っ最中」と兜森監督。1年生の5、6月から夏が終わるまで、練習試合での登板は1日1イニングのみ。9月下旬に投げた5イニングが1年時の最長だ。

「あと1年あったら150キロ台半ばまで一気に行ってしまうのではないか」

 2年夏までは100球が目処で、完投できるようになったのは2年秋。3年生になり、「週に1度、完投させられるようになった」と兜森監督。3年間、1日や1週間など、細かく球数を気にしながら練習や試合をしてきた。また、堀田自信もトレーニングに関心が高く、様々な方法を学び、試すことで2年から3年にかけて大きな変化を遂げた。

「ウエートトレーニングで筋肉を大きくするだけでなく、鍛えた筋肉をいかにうまく使えるかが大切だと思っているので、そういうトレーニングを入れ、体になじませていく感じでやっています。その成果が今、だんだんと出てきているので、夏までにもう少し、進化できるように日々、やっていきたいです」

 そう教えてくれたのが春の県大会。一冬で体重は70キロ前半から80キロ台に乗り、140キロに達していなかった球速は140キロを超えるようになった。その後、投げるたびにスピードは上がっていった。球速が落ちることなく、ゲームセットまで投げられるようにもなった。夏を前に兜森監督は堀田のストレートを「伸び盛り」と表現した。そして、「今もいいですよ」という声が明るく、「あと1年あったら150キロ台半ばまで一気に行ってしまうのではないか」と期待する。

 中学時代から心にある座右の銘は「日々成長」。春から夏にかけて飛躍を見せた裏には、これまで重ねてきた堀田自身の努力がある。そして、選手の体の「個人差」を把握し、大切に育成する兜森監督のもとで3年間を過ごせたことも大きい。兜森監督はかつて青森山田シニアの監督を務めており、3年間で身長が20センチ伸びることもある中学生を指導した経験が「ベースかもしれませんね」。そんな環境もマッチしたのだろう。

 入学時、ストレートのスピードは120キロ台だった。高校の3年間で着実にステップアップし、東北担当スカウトがイチオシする投手へと成長。プロ志望届を提出することが決まると、「3位までに残っていないでしょ」「上位で消えると思うよ」「外れ1位でほしい。俺は絶対にほしい。3年後くらいが楽しみ」とスカウトたちは沸いた。目指してきた甲子園のマウンドに立つことはできなかったが、もう1つの目標の行方はいかに――。運命の時が刻一刻と迫っている。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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