117キロでガードレールに衝突した合コン帰りの男 その時、偶然近くにいた新聞配達から帰宅する中国人留学生が……

写真はイメージです

カラオケ店での合コンを終えた荻野和真(仮名、裁判当時23歳)が女性を車で家まで送った時、すでに明け方の6時頃でした。これから家に帰ってすぐに運送のバイトに行かなければなりません。

「疲れてたので早く帰りたいと思いました。100キロは出していたと思います」

その後の警察の調べでは彼は当時117キロのスピードを出して運転していました。制限速度40キロの道路で、です。

彼は以前にも6件の速度違反の前歴がありました。彼にとってはこのくらいのスピード違反はいつものことだったのかもしれません。しかしこの時は疲れていました。彼はハンドル操作を誤りガードレールに衝突してしました。幸い、彼にケガはありませんでしたがガードレールは大きく破損しました。車もタイヤが取れて動かなくなりました。

「ヤバい!!」

と思ったそうです。普通ならすぐさま通報するところですが、彼はまったく違う行動を取りました。

「車は友人から借りてたもので自分名義の物じゃないからバレないかなと…イケると思いました」

彼はすぐハンドルを拭きはじめました。指紋を消すためです。そして車を捨てて逃走しました。

さて、この事故には被害者が存在します。事故発生時に偶然近くに居合わせた中国人留学生の男性です。

「新聞配達を終えて戻る途中でした。すごい勢いで走ってる車が見えたので通りすぎるのを待とうと思ってたら車がガードレールに衝突しました。そのあとガードレールの破片が飛んできて…」

留学生の男性は足を骨折し、入院する羽目になりました。

「勉強するために日本に来たのに学校に行けないし買い物にも行けません。捕まった後も犯人からは何の連絡もありません。厳重な処分を求めます」

被害者が怒るのも当然です。

「イケる」

そう思った彼ですがやはり怖くなったのかその後友人に事故のことを打ち明け、友人とともに事故現場に戻りました。

友人は現場で大きく破損したガードレールを見て「自首しなよ」と勧めましたが彼はこれを拒みました。まだ「イケる」と思っていたのです。

しかし警察はそう甘くありません。しばらくして警察に任意同行を求められました。はじめは、

「事故はセンパイがやった。誰かは言えない。俺は運転してない」

などと犯行を否認していましたが、やがて逃げきれないことを悟ったのか犯行を自白しました。

破損したガードレールの修理費用は400万円以上だそうです。被害者の入院費と弁償金、車の持ち主へ払うお金も考えれば1000万円ほどが必要です。

フリーターの彼に支払い能力は当然ないので頼むところは両親ですが、今回の事件の顛末を知った父親は激怒して一切の金銭面の援助を拒否しました。

「働いて少しずつ…月に30,000円ぐらいずつ払っていこうと思います」

と法廷で話していた彼に対し、裁判官は、

「月に30,000円っていつまでかかるんですか? 本当に賠償するつもりはあるんですか? 被害者からしたら『はいそうですか』ってならないよ。考え方が甘すぎるんじゃないですか?」

とたしなめていました。

その後もどのようにお金を払うか具体性のある提案が彼の口から話されることはありませんでした。

検察官に被害者についてどう思ってるか聞かれた際には

「人生を少しだけ無駄にさせてしまって申し訳ない」

と話していましたが

「少しだけ、ていう認識ですか? かなり影響与えてるよ?」

とすぐさま言い返されて黙りこんでしまう場面もありました。

まだ年齢の若い被告人ということもありますが、どうも自分のしたことを甘く考えすぎているように思えました。

「なんとかなる」

と法定速度を70キロも上回るスピードで運転して事故を起こし、同じ考え方で現場から逃げ、法廷に被告人として立つことになってもどこか現実を直視できていないところが見受けられます。

彼がきちんと弁償するとは正直思えませんが、少なくとも二度と車の運転はしないでほしいものです。(取材・文◎鈴木孔明)

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