社団法人が「サーキュラーエコノミー」国内普及へ、プラットフォームが本格始動

循環型経済の確立を目指す一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン(CEJ、東京・港)はこのほど、設立記念カンファレンスを開催し、活動を本格化した。参加企業、団体の情報交換や国内におけるサーキュラーエコノミー(CE)の普及・研究、CEの原点とも言えるCradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)原理の認知拡大を目指す。カンファレンスではCEJの中石和良代表の基調講演のほか、地方の中小企業や、外食産業でグローバル展開する企業など、規模に関わらずさまざまなケースでのCEの実践事例を登壇者が紹介した。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

カンファレンスの参加者は企業や団体から100人を超え、関心の高さが窺えた。基調講演でCEJ共同代表の中石和良氏はCEの本質を解説し、世界の企業の取り組み事例を紹介した。従来型のリニアエコノミーから、今まではリサイクリングエコノミーを目指し取り組みが進んでいた。リサイクリングエコノミーでは日本は世界の中で先頭集団を走っている。しかし、世界的に推進が進むサーキュラーエコノミーはリサイクリングエコノミーの延長ではなく、ビジョン自体を完全に移行する必要がある。

サーキュラーエコノミーの考え方には、3つの原則がある。

**・無駄・廃棄と汚染のない世界をデザインする
・製品と原料を使い続ける
・自然のシステムを再生する**

さらに、サーキュラーエコノミーにおける5つのビジネスモデルをアクセンチュアが特定している。中石氏は「これら5つのビジネスモデルは単独で存在しているわけではない。製品のライフサイクルのそれぞれのステージなので、これらを網羅する製品が理想」と解説する。

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「CEは一方で、明確なビジネスチャンス。大きな経済価値が生まれる」と中石氏は話す。世界の企業は当然、先陣を切ってチャンスをものにしたいと考え、政府は経済政策としてCEに取り組み始めている。特に動きが活発なのはEU諸国だ。世界で初めてCEへの取り組みを明文化したのはフィンランド。2050年までの行動計画を発表した。オランダでは2050年までに100%CEを実現する政策を取る。EU諸国ではCEへのロードマップや戦略を具体化している。このほか、中石氏は国内外の企業の豊富な取り組み事例を示した。分野はアパレル、建築、フード、金融など多岐に渡り、枚挙に暇がない。

この日のカンファレンスのサブタイトルは「未来がサーキュラーエコノミーへの移行を求めている」。サステナビリティの先進企業、NIKEのサステナビリティ戦略の中の一文だ。

「最初に、ルートマップをつくることから始める必要があります。これから皆さまと取り組みを進めていきたい」(中石氏)

日本のCE移行が、まずはスタートラインに立った。

さまざまな地域や規模、業種の企業がCEへ移行

長野県を本拠地に建築やリノベーションを手がけるアトリエデフ(長野・上田)。大井明弘代表は自身の体験も交え、循環型の建築の必要性を訴えた。同社はCEの研究チームを設置し、素材や工程・技術などで建築業界の課題を抽出。天然素材を利用し、リユースやアップサイクルを進めるだけでなく、職人技術の保全や市民が主体となる森づくりなど多面的にCEに取り組む。CEに出合ったことで、新たな事業も始まったという。「めぐリス」は店舗への木製家具のリース事業。本来家具は、リノベーションごとに短期間で使い捨てられるが、アトリエデフが所有しリースする仕組み。「私たちの仕事は暮らしを変えること、意識を変えること。そうしてCEへ向かっていく」と大井代表は語った。

「皆さん一緒に、未来の子どもたちのために、美しい地球を残していこうではありませんか。ビジネスや個人の垣根を超えて、日本の、世界の人たちが責任をもってこの地球を残すことが、私たちに課せられた課題だと思います。私がCEに取り組む理由は、未来の子どもたちにこの地球残したいから、それだけです」(大井代表)

アトリエデフの大井明弘代表

長野県を本拠地に建築やリノベーションを手がけるアトリエデフ(長野・上田)。大井明弘代表は自身の体験も交え、循環型の建築の必要性を訴えた。同社はCEの研究チームを設置し、素材や工程・技術などで建築業界の課題を抽出。天然素材を利用し、リユースやアップサイクルを進めるだけでなく、職人技術の保全や市民が主体となる森づくりなど多面的にCEに取り組む。CEに出合ったことで、新たな事業も始まったという。「めぐリス」は店舗への木製家具のリース事業。本来家具は、リノベーションごとに短期間で使い捨てられるが、アトリエデフが所有しリースする仕組み。「私たちの仕事は暮らしを変えること、意識を変えること。そうしてCEへ向かっていく」と大井代表は語った。

「皆さん一緒に、未来の子どもたちのために、美しい地球を残していこうではありませんか。ビジネスや個人の垣根を超えて、日本の、世界の人たちが責任をもってこの地球を残すことが、私たちに課せられた課題だと思います。私がCEに取り組む理由は、未来の子どもたちにこの地球残したいから、それだけです」(大井代表)

イワタの岩田有史代表

創業から189年目を迎えた寝具メーカー、イワタ(京都・中京)。登壇した岩田有史代表は「日本人の睡眠時間はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最短。睡眠の状態は大変悪い」と指摘する。同社は良質の睡眠環境を整えることが循環型経済につながると捉える。製品には「定番を育てる・無用なモデルチェンジをしない・浪費なき成長」という3つのモットーがある。人と自然にやさしいものづくり、製品寿命の延長を意識したものづくり、職人による劣化製品の再生や、他社製品であってもアップサイクルするなど、ものづくりの考えや取り組みを紹介。老舗である同社の技術や文化が、サーキュラーエコノミーの文脈で生かされている事例だ。

zettonの鈴木伸典社長

一方、外食産業のzetton(東京・港)は「店づくりは、人づくり」「店づくりは、街づくり」を経営哲学とし、エリア開発に軸を置いて「Aloha Table」など約80の飲食店を国内外で展開する。「SUSTAINABILITY STRATEGY」を今年4月に策定し、積極的にサステナビリティに取り組んでいる。みんな電力やadidasといった企業間の連携、NPO法人Ocean‘s Loveとの連携による社会貢献活動や環境配慮型の運営を紹介。鈴木伸典社長は「ドメスティックな企業がグローバルの大企業と肩を並べることができる、その接着剤の役割となることもサステナビリティ戦略の大きなメリットだと実感している」と力を込め、紙ストローを導入するだけでなく、それを組み込んだ複合的なCEの仕組みを構築するエリア展開を紹介した。

このほか、みんな電力、野畑ファームが企業間連携によるCEの導入事例や、CEによる一次産業の役割の変化などを語った。業種や規模、事業形態に関わらず、さまざまな企業が国内でもアクションを起こし始めた。zettonの鈴木社長の次の言葉が、地球や社会を持続可能にする方法としてCEを選択することの、企業のメリットを身近に説明している。

「CEはただ私たちのオペレーションに乗せるだけではなく、CEによって商品自体をどう変えることができるのか、その商品がどうブランディングに生きるのか。飲食に限らず、企業活動の中で生かし始めている」

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