青木拓磨がレプソルカラーのホンダRC213V-Sを駆る。26年ぶりに3兄弟揃って走行/MotoGP日本GP

 10月18~20日に開催されるMotoGP第16戦日本GPの前日となる17日、青木宣篤、拓磨、治親の3兄弟によるデモランがツインリンクもてぎで行われた。3兄弟が揃っての走行は26年ぶりの出来事だ。

 長男の宣篤は、元ロードレース世界選手権のGP500クラスライダーで、現在はスズキのMotoGPテストライダー。次男の拓磨もGP500クラスに参戦し、三男の治親はオートレーサーであり、過去にはGP125ccタイトルを獲得した経歴を持ち、3人とも世界的な活躍をみせ“青木3兄弟”として知られている。

 1998年2月には、前年にレプソル・ホンダからGP500クラスに参戦していた拓磨がテスト中に転倒してしまい、それ以降は下半身不随という障がいを負いバイクには乗れずにいた。しかし、レーサーとしての人生を諦めてわけではなく四輪レースに出場し、来年はWECル・マン24時間に出場する予定だ。

 そこから時が経ち治親は、障がいがあっても『バイクに乗る』という夢を追い続けるすべての人々を後押しするために、一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)を発足した。

 世界的にみると、フランスでは障がい者を対象としたバイクレースが開催されているが、国内ではまだそういった機会はないという背景があるのだという。

 プロジェクトの一環、そして3兄弟の思いもあり、2019年の鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、ホンダCBR1000RRで拓磨がデモランを行うことに成功。今回においては「次は3兄弟でもう一度サーキットを走りたい」という思いから、MotoGP日本GP前のツインリンクもてぎで、3人が揃いサーキットを走行することにしたようだ。

 3兄弟が揃ってサーキットを走るのは1993年以来であり、実に26年ぶりだという。拓磨は鈴鹿8耐ではCBR1000RRを駆ったが、今回はMotoGPマシンのレプリカであるRC213V-Sに乗り、グランプリ開催地での走行だ。

青木治親、拓磨、宣篤
ステップにはビンディングが取り付けられている

 そして、MotoGPをプロモートするドルナスポーツ、ツインリンクもてぎをはじめ、様々な機関に協力を求め実現。拓磨のマシンも用意が必要で、ステップにビンディングをつけ、ブーツを固定。シフトチェンジは四輪のパドルシフトのようなシステムで左手で行えるように改造された。

 17日の午後ツインリンクもてぎのピットレーン出口に、拓磨が駆るレプソルカラーのホンダRC213V-S、宣篤のスズキGSX-RR、治親のホンダCBR1000RRが並ぶ。そこから拓磨がスタートし、ふたりが後についていった。

26年ぶりに3兄弟が揃っての走行が実現
ホンダRC213V-Sでスタートを切った青木拓磨

 1周した3兄弟は横並びでホームストレートを立ち上がり、加速して1コーナーへ。合計3ラップの走行を行ってピットに戻り、走行後にはMotoGP関係者や取材陣から拍手が贈られた。

ツインリンクもてぎのホームストレートを駆け抜ける青木3兄弟

 走行を終えた拓磨は「22年ぶりにMotoGPの場で走れたことは本当に夢のようです。車椅子になって怪我してでも少しの工夫でバイクに乗れることを皆さんに伝えられたらいいなと考え、このプロジェクトをはじめました。治親、宣篤にも感謝したいです」と語った。

「僕はツインリンクもてぎをバイクで走るのは初めてなんですよ。クルマのレースでは走ったことはあるけど、バイクでは初めてだから感無量です」

「この場を提供してくれた、ドルナスポーツ、ホンダ、ツインリンクもてぎ、そして協力してくれたみなさんに感謝しかありません」

走行後ピットに戻ってきた青木拓磨
WGP参戦当時のゼッケン24をつけた青木拓磨
26年ぶりに3兄弟が揃って走行した
走行後にはルーチョ・チェッキネロ、上田昇、長島哲太、佐々木歩夢と撮影

© 株式会社三栄