旅のプロ「TRAVELER'S FACTORY(トラベラーズファクトリー)」のプロデューサーが厳選!秋の夜長に読みたい旅ブック5選

TRAVELER'S FACTORY(トラベラーズファクトリー)は、「旅するように毎日を過ごすための道具」を扱うお店。革製のカバーにリフィルやカスタマイズパーツを組み合わせ、自分好みに育てていくトラベラーズノートには、国内外に熱烈なファンがいます。フラッグシップショップの中目黒で、プロデューサーの飯島淳彦さんに「秋の夜長に読みたい旅ブック」を5冊、ご紹介いただきました。

飯島淳彦さんのお仕事、旅と本

会社名:株式会社デザインフィル

役職:トラベラーズ事業部 事業部長

名前:飯島淳彦(いいじまあつひこ)さん

飯島さんは、TRAVELER'S FACTORY(トラベラーズファクトリー)の看板商品であるトラベラーズノートの産みの親です。デザイン文具メーカーのミドリで社内コンペに出したトラベラーズノートの企画が通り、商品化されたのが2006年のこと。その後関連商品が増え、2015年にブランド名が「トラベラーズカンパニー」に変わってからも引き続き、プロデュースを続け、さまざまな取り組みをしています。

現在はトラベラーズノートの取り扱いが国内外であり、仕事でもプライベートでも多くの旅を経験されてきた飯島さん。店内に展示されている、プロ顔負けのイラストも手掛けています。旅と本についてお話を伺いました。

飯島さんにとって、旅と本とは?

もともと本という存在は、自分にとって「暇つぶし」であり、「孤独を埋めてくれるもの」でした。一人でいる時間が長かった思春期には本を読むことで救われることもあったし、ひとり旅にふと寂しさを感じる時に本を読むことで、心の隙間を埋めてくれたりもします。なので、私にとって本は、子どもの頃からずっと寄り添ってくれた友人のような存在です。

本の内容が一番スーーッと入ってくるのは、電車に乗っているとき。今でも青春18きっぷで電車に乗ったりしているんですが、本がすごく進むんですよ。とにかく動いている、何かが進んでいるということに心地よさを感じることがあって、その感じが僕は好きなんですね。これに本の世界がマッチする感覚があります。

旅には2種類の本を持っていきます。1冊は読みやすい、読み進む本。もう1冊は読みたいけど難しい本。旅の間にどっちかがフィットするんですね。

飯島さんオススメの旅ブック

【飯島さんオススメの旅ブック(1):How to 大冒険】

21世紀ブックス/吉村作治/主婦と生活社

小学校か中学生くらいのときにすごく読んでいた本です。実はいつの間にか無くしていたのですが、大人になってなにかでみかけたとき、一気にフラッシュバックして手に入れました。後から吉村作治のものと知ったのですが、当時子供なので、自分ではまだ旅をできないときに、旅をわかりやすく想像させてくれました。いつかこんな旅をしてみたいなというのを掻き立ててくれる本です。

特に惹かれたのは、吉村作治が、なぜ旅するようになったのかというエピソード。飛行機の掃除のアルバイトで、残っていたちらしに想像を掻き立てられたと書いてあって。そういう感覚、今より昔の方があったのではないかと。

僕が中学生の頃の思い出なんですが、まわりに海外に行ったことがある人がいない時代に、友達のお父さんが海外に行ったといって、JALの機内誌をもらったんですよ。ぼろぼろになるまで読みました。トルコの特集をしていて、カッパドキアでスターウォーズの撮影があったとか、親日とか書いてあって。それで憧れて、大人になってからトルコに行った経験があります。

【飯島さんオススメの旅ブック(2):百年の孤独】

G・ガルシア=マルケス/新潮社

南米の架空の町の、世代をまたがるような長い話を書いた本です。冒頭のシーンでは、200年前の南米の、開拓されたばかりの村が舞台になっていて。笛や太鼓を鳴らしながら、ジブシーの一団がやってきて、誰も見たことのない磁石、望遠鏡、氷とかをもってくるという。これを読むことで、全然自分とかけ離れた世界に旅をしたような感覚が引き起こされます。

僕は、はじめての海外旅行がインドだったんですよ。ゲストハウスが、ごちゃごちゃしたマーケットにあって。そこを歩いたのが衝撃的でした。インド音楽がガンガン流れて、スパイスやお香の匂いがして、牛がいて。急に停電になると一斉に火をくべて。うしろをみると子供の乞食が手を出していて・・・。なんじゃこりゃ、という衝撃。自分がいた世界とまるで違う世界に足を踏み込んだ、高揚感と不安感がありました。情報が入る今と違って事前情報がほとんどないのがよかったですよね。

旅って意外と簡単だ、なんとかなると思わせてくれた旅でもあったのですが、その時のことを思い出させてくれる本です。

【飯島さんオススメの旅ブック(3):語るに足る、ささやかな人生】

駒沢敏器/NHK出版

アメリカの人口何千人といったスモールタウンを作者が車で巡って、そこにある人生模様を紹介しているノンフィクションです。夜のダイナーにポツンと座っているような旅の孤独を象徴的に切り取る画家、エドワード・ホッパーの世界のようなイメージです。

一生町から出ないで暮らす人、町を出ていこうとする人、町に戻ってくる人が登場します。アメリカのロードムービーでよくある、高速道路を一人で運転して、ガソリンスタンドがあって、モーテルがある、といった憧れの風景を想像させてくれるんですね。

僕も昔、営業で東北を周っていたときがあって。ずっと車に乗っていて、山の中を走っていると、ポツンポツンと家があったりする。ここで暮らすってどういうことなのかなと考えたり。旅って孤独であるがゆえに、色々なことを想像させてくれますよね。

【飯島さんオススメの旅ブック(4):北極海へ】

野口知佑/文藝春秋

野口知佑はカヌーイストで、僕が憧れた人です。カヌーに乗って暮らしをしているという反骨の人で。カヌーで色々なところを旅していて、アラスカの川を下っていく話なんですけども。

一人で、誰もいない壮大な川を下って行って、釣りをして、釣った魚を食べて。夜はテントを張って、クマがくるからライフルを持っていないと危ないとか・・・。いわゆる男が憧れる旅のスタイルを明確に示してくれた本で、憧れました。

【飯島さんオススメの旅ブック(5):東京日記】

リチャード・ブローティガン/思潮社

アメリカの作家による、東京の風景を切り取った詩が綴られている本です。

これを読むことで、何がいいかというと、東京が旅先になるんですね。僕は東京出身なんですが、旅人の視点で東京を見ることができる。

「ロスト・イン・トランスレーション」もまさにそういった映画で、東京ってこんなに素敵なところなんだと思わせてくれる。新しい発見があって、より東京を好きになります。

旅に行くと普段手紙を書かない人が手紙を書いたり、日記を書かない人が日記を書いたりしますよね。看板や花に目がいったり。そういった、旅がもたらす高揚感が、毎日の生活に入ってくると、もっと日常が変わるんじゃないでしょうか。トラベラーズノートも、普段持ち歩くことで、旅するような気持ちで毎日を過ごして欲しいという願いが込められています。

インタビューを終えて

今回ご紹介いただいた本は、どれも自分の知らない世界を垣間見るワクワクを感じさせてくれそうなものばかり。トラベラーズファクトリー中目黒店2階の図書コーナーに置いてあり、オリジナルのコーヒーを飲みながら自由に楽しむこともできます。

飯島さんご自身も、トラベラーズノートに画用紙のリフィルが欲しいという要望がユーザーからあって、作ったら使ってみないとと久々に絵を描いてみたそうです。そうしたら子供の頃の一心不乱に描いていた時の気持ちが蘇ってきて、あまりの楽しさに絵を再開したのだとか。

こんな風に、旅する目線や気分で日常を過ごしたり、本を読んで想像の世界で旅をすることで、旅をしないとしても、日々の生活に彩りを添えていきたいですね。

トラベラーズファクトリー 中目黒

所在地:東京都目黒区上目黒3-13-10

電話番号:03-6412-7830

営業時間:12:00-20:00

定休日:火曜日

URL:https://www.travelers-factory.com/

[All photos by Shio Narumi]

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