洋野でイノシシ生息拡大、食害急増 畜産農家は豚コレラ警戒

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電気柵の設置方法について学ぶ参加者。イノシシから農地を守る対策が急務となっている=9日、洋野町

 洋野町内で2018年度から、野生のイノシシの目撃情報や農作物への食害が急増している。群れを成し、繁殖しながら生息地を拡大しているとみられ、自治体や地元猟友会などが対応に苦心。関東以南で広がる豚コレラはイノシシにも感染するため、畜産農家も神経をとがらせる。既に個体数の増加が課題となっている岩手県南地方の取り組みを参考に、わなによる捕獲や電気柵などで農地を守る対策が急務となっている。

 同町によると、町内のイノシシの目撃件数は16年度2件、17年度7件と一ケタ台で推移していたが、18年度24件、19年度(9月末現在)は25件と急増。農地や作物への被害も18年度から確認され、18年度は2件、19年度は13件が報告された。被害は牛の飼料の食い荒らしや水田の掘り起こし、家庭菜園のジャガイモの食害などが目立つ。

 最近は親子連れや複数で群がる様子も目撃されている。「久慈平岳牧場」社長の田村憲史さん(36)によると、5月ごろから、牧場内で放牧中の牛の近くに5~6頭のイノシシを見掛けるようになった。柵をくぐって入ってきたとみられ、一度に十数頭を見た従業員もいるという。

 田村さんは「牛の飼料のトウモロコシを食べた跡があり、付近に住み着いて繁殖しているのでは」と危機感を募らせる。

 町内では昨年10月、地元猟友会のメンバーで構成する町鳥獣被害対策実施隊が野生のイノシシを初めて捕獲。岩手県や町によると、今年9月末までに、猟友会が町内で捕獲、駆除したイノシシは計7頭に上る。

 ただ、農地への被害は続いており、同隊関係者は「移動しながら増えていくため、なかなか思うように捕まらない」と苦悩する。

 一方、柵などで農地を守る取り組みも始まった。今月9日に県が同町の大野地区共同利用模範牧場で開いた鳥獣被害対策の研修会には、農家や猟友会関係者ら約40人が参加。野生動物の侵入を防ぐ電気柵の設置方法などを学んだ。

 町内ではウシの放牧などで電気柵が利用されているが、イノシシの侵入防止を想定した農地への設置例はほとんどない。町の担当者は「農地を守る意識を持ってもらい、町として電気柵を設置する際の補助も検討したい」としている。

 青森、岩手両県では野生のイノシシは絶滅したとされるが、岩手県内では07年に奥州市で目撃、11年に一関市で捕獲されて以降、農地への被害も年々増えている。県北では洋野町での目撃が多く、県自然保護課は「経路は不明だが、いったん定着すると爆発的に増えていく可能性がある」と指摘する。

 青森県内の目撃件数も17年度に8件、18年度に15件と増加傾向。19年度は平川市の1件にとどまっているものの、県は生息状況を注視している。

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