実直な「慶応ボーイ」中日4位の郡司、鷹上林から学んだ“教え” 「成功する人は違う」

中日から4位指名された慶応大・郡司裕也【写真:小西亮】

座右の銘もホークス上林と同じ「運命を愛し、希望に生きる」

 華やかな「慶応ボーイ」のイメージより、実直さがにじみ出る。自身の性格を「冷静」だと言うあたりは捕手らしい。17日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、中日から4位指名を受けた慶大・郡司裕也捕手。仙台育英高時代に夏の甲子園準優勝を経験し、大学進学後も常に注目されてきた源流には、高校時代の先輩であるソフトバンク上林誠知外野手の「教え」があるという。

「突出した能力がないと思っているので」。指名された直後の会見で、郡司はそう謙遜した。だが、裏を返せば穴の少ない万能型。中日が近年、捕手を固定できていない台所事情も把握しているようで「今はいろんなキャッチャーが出ていますが、その競争に勝っていきたい」と負けん気がのぞく。慶大では1年秋からレギュラーを担い、今年7月の日米大学野球では2打席連続本塁打で持ち前の打力も披露。実力に疑いはない。

 主将としてチームを引っ張り、今秋の東京六大学リーグでは開幕6連勝で首位を走る。捕手出身でプロも経験した大久保秀昭監督は「リーダーとして、ゆくゆくはやっていける選手になる」と太鼓判を押す。実力だけでなく、人間性あっての信頼。そんな郡司は、尊敬する人物を問われると、仙台育英高で2学年上だった上林の名前を真っ先に挙げた。

高校1年の時に同部屋だった先輩は「一匹狼というか、群れない感じでした」

 高校1年の時に同部屋で、特別な雰囲気を持った先輩だった。「一匹狼というか、群れない感じでした」。近寄りがたくもあったが、後輩から挨拶されると、どんな時でも一言、二言は返していた。そのわけを教えてくれた上林の言葉を、郡司は今でも鮮明に覚えている。

「自分が1年生のころ、先輩に挨拶を無視されたことがあった。自分がされて嫌なことは、絶対に人にはしたくない」

 高卒でプロ入りした憧れの先輩はその後、常勝軍団ソフトバンクには欠かせない存在に。「やっぱり成功する人というのは違うんだなと思いました」。郡司自身も高校、大学とその姿勢を貫き、プロまでたどり着いた。座右の銘も、上林と同じ「運命を愛し、希望に生きる」。仙台育英高の佐々木順一朗前監督から授かった言葉を胸に刻む。

「これからいろんな困難が待ち受けていると思いますが、自分が成長する糧だと受け入れての乗り越えていきたい」。新たな舞台でも愚直に、誠実に――。7年連続Bクラスに低迷する中日の扇の要は、貪欲に狙っていく。(小西亮 / Ryo Konishi)

© 株式会社Creative2